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ヒロイン矯正!  作者: アールエー
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その14 凱旋


嵐の様な襲撃から更に数日経った。

前線でも負傷者が多数発生し、初めて来た時に匹敵する、てんてこ舞いな日々が続き、漸く落ち着いたところだ。

その間、なんと隣国との停戦交渉が成立、5年という期間限定ではあるものの、一時的な平和が訪れた。

これでやっと帰れる。


私の方はその間、自分自身の武術の見直しを迫られていた。無手の武術は兎も角、槍や刀剣の扱いは実戦経験が少な過ぎた。

六合大槍などの拳法の槍の形は学ばせて頂いた。そもそも拳法の形が槍や剣の形だったりする。本来、拳法は武器を持って戦う武術なのだ(だから無手の形だと、合理的でない形もある)。

しかし、結局槍同士の試合等は前世ではなかったからなぁ。ましてや死合とかしなかった。

剣道、しておけば良かったか…。多少は違ったかな。借りた面が臭かったんだよな…。後、一式揃えるの金額が高すぎた。吹奏楽部に比べたら安かったかも。


とりあえず、思わず鹵獲してしまった大槍を片時も離さずにいたら、私に言い寄る男が居なくなった。

兵士達から悪魔将軍(とか言われていたらしい)と互角に渡り合った豪傑女と思われているそうだ。…互角とは言えなかったけど…。




「ねえレイナ、やっと王都に帰れるのね」


「はい。帰る、と言う程王都に滞在していませんでしたが」


「本当にそうよ!でも5年とはいえ、平和になって良かった!もう重傷者を見るのはうんざり」


お嬢様はそう軽く言っているが、かなり精神的にダメージを食らっている。夜、一緒にベッドで手を握っておかないと寝れないくらいには。


「今回の侵攻で、国境周辺の村々は根こそぎ略奪されたそうです。隣国は我が国を倉庫か何かと思っているらしいので、略奪から回復するのに5年かかると見ている、のかも知れません」


「何よそれ、無茶苦茶じゃない…。何とかならないの?」


「この5年の間に国境に新たに砦を作り、又は既存の砦を強化して、兵を鍛えるしかないですね。その内、国境に長城ができたりして…」


「うげ〜。なんで乙女ゲームの世界なのに、そんな事になってるのよ…」


「後は、今回の停戦で向こうの貴族の子息を、一部学園に受け入れる話が出ております。少しでも友好関係を進めて手加減して欲しい、という事でしょうか」


「蛮族っぽいのに貴族とかいるんだ」


「こちらの様にキッチリ制度化された貴族じゃないみたいですけど。まあ、名乗ってるだけかも」


あの将軍もマイヤー伯、とか言っていたしね。とても伯爵って顔じゃなかったけど。いや、もしかしたら辺境伯?


「そういや、あの将軍のプロポーズ受けるの?」


「ゑ?あ、まさか!なんて言うか、その、吊り橋効果って言うか、突然の事で混乱していたと言うか!と言うかあの将軍、絶対歳は30歳以上、40歳近くでしょう」


「ぷーっくすくす…。レイナの慌てる姿は珍しいわ。ま、元男って言ってたよね〜!…やっぱり、私の様な女の子が良いのかな?」


そう言ってポッと赤く頬を染める。女の子が良いって、ほとんど毎晩一緒に寝てるからなぁ。


「残念ながら、女性に性欲が向く事はありません。肉体的なせいか精神的な原因か、ホルモンバランスの変化かは分かりませんが。それにお嬢様は、只でさえ身内枠に入っていますので。幼い頃の娘を思い出します」


「あー子供扱いか…。仕方ないのかな。少〜し詰まらないわ」


「かと言って男に抱かれたい気持ちも全く微塵もありませんが」


なんて話している内に、馬車は王都に帰還。

和平を勝ち取った凱旋と宣伝され、オープンタイプの馬車にお嬢様は1人乗せられ、手を振り振り民衆に笑顔を振りまいておられました。


それから王城での謁見、報奨に勲章授与、夜の祝勝記念パーティとお嬢様は振り回され、ついでに私も準備や着付けに翻弄され、深夜過ぎに王城で用意された部屋に通った時は、流石に二人ともぐったりしてました。


「待ってたのかも知れないけど、普通帰宅したら1〜2日休ませてくれても良いじゃん…」


「お気持ちは分かります…。湯浴みは明日しましょう。このナイトウェアに着替えて下さいませ。着ているドレスは直ぐに片付けましょう」


「うう〜お願いレイナ〜。もう、何にもしたくない〜」


「とりあえず着替えたら就寝下さい。明日はフレデリカ様と公爵家へ向かう予定です」


「忙し過ぎてフレディとろくに話も出来なかったからね…」


私は手早くドレスを片付ける。もう、慣れたもんだ。しかし、王城の侍女達やメイド達の所作の洗礼された事。所詮私は村娘だと思い知らされて、ちょっとヘコむわ。


そして今夜も、同じベッドで手を取り合って寝るのであった。




「お疲れ様キャシー、レイナさん。とんでもない目に遭ったらしいわね」


王城から出発して、公爵家のタウンハウスに向かう馬車の中。フレデリカ様の同情する目が優し過ぎた。


「そうなのよ、フレディ!次々に手足のない重傷者がくるし、襲撃はされるし、他に女がいないからって嫌らしい目でジロジロ見られるし!溜まったもんじゃないわ!」


「そうなのね…。でも、大規模な戦闘だった割には死者が少なかったのは、間違いなくキャシーのお陰よ。レイナさんも大変でしたわね」


「いいえ、お嬢様の苦労に比べたら…」


「レイナは敵の将軍からプロポーズされたしね」


「ちょっと待って、そこんとこ詳しく!」


女三人寄れば姦しく、まあ私は半分女だけど。


公爵家に到着した私達は、漸く平穏な生活を手に入れた。その後がかなり大変だったが、それは後日に。

ここでお嬢様は学園入学の準備と、教会での聖女としての作法を学び、私も公爵家の先輩侍女に手解きを受け、無理言って騎士達から武器戦闘の訓練をして頂いた。


月日が流れ、いよいよ学園入学、ゲームの本編が始まる…。

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