ゲーム小説【ゲームの世界で生きたい】
仕事場から帰宅して、夕飯を食べ俺はお皿を洗って、ダイスキなRPGゲームをはじめた。
あー世界を救いに行くか。
黙々とレベルを上げていると空気の震えで察した。今日の妻は「毒属性」だ。
「ちょっと。帰ってきてからずっとゲームばっかり。あんたの人生、一時停止ボタンでもついてるわけ?」
放たれた猛毒のしぶき。
(お前だって、さっきから韓国ドラマのイケメンに『尊い…』とか言って貢いでるじゃないか。ゲームのレベル上げとドラマの全話制覇、一体何が違うっていうんだ。どちらも『現実逃避』という名のログインだろう?)
だが、俺は「心の声」をセーブデータの奥深くに封印した。
「……そうだね。俺、本当にどうしようもないね」
俺は初期装備(白シャツ トランクスパンツ)のまま、次の戦場(お風呂場)へ向かった。
戦場(お風呂場)に持ち込む武器は二つ。
「軟質のスポンジ」: 滑らかな浴槽の曲面を、魔力を込めるように優しく、かつ迅速に磨き上げる。
「剛鉄のタワシ」: 頑固なタイルの隙間に潜む汚れを、一掃する。
シュッ、シュッ。ゴシ、ゴシ。
リズムよく響く音は、まるで自分を鼓舞する戦闘BGMだ。
「……ふぅ。これで本日に我が家クエスト完了だ」
「あー……。いっそ、この世界がゲームになればいいのに」
お風呂を洗った俺は、またゲームをしながら
コントローラを握りしめ寝落ちした。
■■■
目が覚めると、そこは石造りの豪華な寝室だった。
「……夢か?」
右の頬を、タワシで擦られたかと思うほど思い切りつねる。
「痛てぇ!!」
ゲームの世界だ。俺は城の王様になっていた。だが、このゲーム、仕様が絶望的にバグっていた。
勇者が「クレーマー」
城にやってくる勇者たちは、全員が「効率厨」のスピードランナー。
「おい王様、早く『伝説の剣』よこせよ。スキップ不可の会話長すぎ。不評レビュー書くぞ」と脅される。
将棋型バトル
モンスターが城に攻めてきたが、なぜかターン制。しかも俺自身が「王(玉)」として盤面に立たされる。一歩も動けず、歩兵(兵士)たちが死なない事を祈って震えて待つだけ。
王の公務は「武器の配布」
やることは、並んでいる勇者もどきに「はい、ひのきのぼう。はい、布の服」と、まるで会社の事務作業のように淡々と配り続けるだけ。
「飽きた。こんなのクソゲーだ! 現実に戻らせろ!」
玉座から転げ落ちるようにして寝室へ駆け込み、泥のように眠った。
……。
「……、起きて。会社遅れるわよ」
目を開けると、そこには韓国ドラマの最終回を見終えて顔がパンパンに腫れた妻が立っていた。
お風呂場を覗くと、昨日俺がスポンジとタワシで磨き上げた成果が、朝日に反射して眩しく輝いている。
「そうか。ゲームはたまにログインするから面白いんだ。毎日ログインしてたら、それはもう『仕事』なんだよな」
俺はネクタイという名の「呪いの装備」を首に巻き、社畜(最強職)として、豊島区の街に冒険へ出かけて行った。
ゲーム小説【ゲームの世界で生きたい】
【End】




