9.ホラー映画に感謝。
「お待たせ。」
「5分遅刻〜。」
声のする方に振り向きながら、雅は憎たらしく言う。
「クソガキね。」
「はぁー!
・・・池下って話すと面白いな。」
「はいはい。で?」
「ん?」
「女の子の私服を初めて見たら、褒めるの!」
「あぁ、可愛い。」
「適当すぎ。」
「いや、可愛い。それしか無い。
強いて言うなら、メガネ取れば?
池下、顔綺麗だと思うんだけどな。」
「ば、バカ!」
「何だよ。褒めろって言ったの池下だろ?」
「知らない!いこっ。」
花蓮は、嬉しそうに雅の腕にしがみついた。
「お、おぃ!」
「何?」
「そ、その。あれだ。」
「だから何?」
「柔らかい。」
「キャッ。とか言いつつ、わざとですが。」
「はぁ?ぶっ壊れたのか?」
「はい。それより、早く映画選ぼ?」
「うん・・・このまま?」
「嫌なの?」
「いや、そんな事は無い。」
「じゃあ行こっ。」
雅は、混乱の中にいた。
池下は一体何を考えてんだー!
ドキドキが止まらない!
こんなの心臓が持たんぞ。
「あっ、これは?」
「恋愛ものか。」
「嫌?」
「これは?」
雅が差し出したのはホラー映画だった。
「初めて女の子と見るのに、ホラーは無いでしょ?
あー!まさか!」
「何?」
「キャー!とか言ってくっついてくるの狙いでしょ?」
「別に。これ前から見たかったからさ。」
「そう。私、非科学的な存在は信じてないから、期待には答えられないけど?」
「もう、そう言う事でいいよ。」
雅は、諦めた様に言う。
「じゃあ、両方見よう。」
「まぁ、それなら。」
花蓮は、妥協した様に呟いた。
二人は、ランチを済ませ、コンビニでお菓子とジュースを買い、雅の家に向かい、歩いていた。
「ここ。」
雅は、マンションを指さした。
「家賃高そうですね。」
・・・ここ?知らなかった。
私の家は、向かいのスーパーの上です。
「高いそうです。」
「ご両親、すごい人?」
「う〜ん。一応社長?」
「あら、素敵。」
「お金目当てとか勘弁して下さいね。」
「お金は大事ですよ?」
「確かに。」
「私の親もなかなかなので、その点はご心配なく。」
「ははっ。」
「ふふっ。」
「じゃあ、どうぞ。」
「おじゃまします。」
花蓮は嬉しそうに雅の家に上がった。
「キャーー!!!!無理!無理!」
二人は雅の家のソファーに座り、
ホラー映画鑑賞をしている。
「いや、いや!池下が無理だから!
くっつきすぎだ!」
花蓮は、余りの恐怖に雅に全力でくっついている。
「怖い!怖い!」
花蓮の体が少し震えている事に雅は気付いた。
「とめるか?」
「だ、大丈夫。」
シーン。
「えっ?とめたの?」
「だって池下、震えてるから。」
「ご、ごめん。
食わず嫌いみたいなものだったみたい。」
「良く分からんが、見たこと無いけど、怖くないと思い込んでいたが、実際見ると怖かったって事か?」
「・・・はい。」
分厚いメガネのレンズで定かではないが、雅を見つめる花蓮の瞳は、潤んでいる様に見えた。
「これはもうやめよう。
というか、もう6時だな。
外も日が落ちだしてるし、送るわ。」
「・・・何もしないで。」
花蓮は、俯いて小さい声で言う。
「ん?おっしゃる意味が分かりませんが?」
雅は不思議そうに花蓮を見つめている。
「何もしないで!約束してくれたら、今日、泊まってあげるから!」
「はぁー?!」
花蓮の唐突な発言に、思わず雅は叫ぶ。
「ちょっと意味が分からんぞ!落ち着け!」
「落ち着いてる!」
「落ち着いてない!」
「落ち着いてるの!」
「・・・泊まるって何?」
「泊まる。」
「いや、いや、親が許さんだろ!」
「大丈夫。」
「いや、大丈夫じゃないわ!」
「だって・・・私も・・・一人暮らしなの。」
「えっ?もしかして・・・あはははっ!」
「何で笑うのよ〜。」
雅は、ニヤニヤしながら花蓮を見つめる。
「もしかして、一人で寝るの怖いとか?」
「・・・正直に言います。はい。」
「あはははっ!」
「笑わないでよ。」
花蓮は不満そうに膨れている。
「仕方ない。じゃあ泊めてやるよ。
池下はベッドで寝ろ。
俺はソファーで寝るから。」
「あ、ありがとう。
お礼と言っては何ですが、晩御飯作るよ。」
「あぁ、それは楽しみだ。」
花蓮は、立ち上がると、キッチンに向かい、冷蔵庫を開け、固まっている。
「池下?」
「あの〜。冷蔵庫、スポーツドリンクしか入ってないですが。」
「あぁ!プロテイン入りだ!」
「いや、聞いてませんし。」
「・・・そうか。食材が無ければ料理できないよな。」
「はい。いつも何食べてるの?」
「コンビニ弁当又は出前。」
「一年間それでしょ?良く体壊さないわね。」
「まぁ、そのプロテイン入りスポドリが俺を健康にしているからな。」
「バカなの?もぅ。今からスーパー行こ?」
「えっ?うん。」
「道挟んだ向かいにスーパーあるんだから、ちょっとは栄養考えないと。
ちゃんとしたご飯食べた方が、体力付くんだよ?」
「はい。」
・・・?何でスーパーあるの知ってんだろ?まぁいいか。
・・・それより、池下とずっといれる。
嬉しいー!!
ホラー映画、ありがとう!!!
「早く行こうよ?」
ボーっとしている雅に花蓮は呼びかけ、手を掴んで引っ張った。
「あ、うん。」
雅は、花蓮に手を引かれてスーパーに向かった。




