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消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


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3/14

3.特に用は無いんだけど。

「お疲れ!」

雅は朝練を終えると、急いで教室に向かった。

まだ時間の早い校内。

生徒達はほとんどいない。


ハァハァハァ。

「確か、あいつ朝早かったよな。

いるかな?」


ガラガラ。

雅が、教室を見回すと一人机に座り本を読んでいる花蓮がいた。


「お、おはよう!」


「おはよう。」

花蓮は、本から視線を動かさないまま、挨拶をする。


「・・・おい!挨拶は目を見てするんだ!」

雅は、顔を近づける。


「キャッ!」

本から視線を写した花蓮は、雅の顔が突然至近距離に現れて驚いた。


「す、すまん。」


花蓮は、顔をそらして俯いている。

耳が少し赤い。

「べ、別に。少し驚いただけ。」


「なぁ、池下、昨日ありがとうな!

助かった!」

雅は、満面の笑みを浮かべて花蓮を見つめる。


花蓮は、ようやく雅の方を向いた。

「うん。大丈夫だった?」

・・・あっ、しまった。


「・・・何が?」

額の傷の事だと思った花蓮に大丈夫だったかと聞かれ、雅は、不思議そうにしている。

「あー!赤点の事?

まぁ、回避できた自信はあるけど、分からないよな。」


「そ、そう。」

花蓮は、バレてないと思い、安堵の表情を浮かべる。

すぐに本に視線を戻した花蓮を、雅は不満気に見つめる。


「池下ってよく見ると、綺麗な顔してるし、髪も綺麗だな。」

雅は、自分の席に座り、頬杖をつきながらボーっと花蓮を見つめながら言う。


「な、何?まさか口説いてんの?」

不意を突かれた花蓮は、驚いて雅を見る。


「やっとこっち見たな。」

雅はニコッと笑った。


花蓮は、目を再び反らした。

「何よ。」

かっ、可愛い!

何今の笑顔!

やめてー!


「どうしたらこっち見てもらえるか考えたんだ。それで、褒めてみた。」


「何それ?お世辞だったって事?」

冷静に戻った花蓮は、不満気に本に視線を戻す。


「お世辞・・・ではないかな。」

雅は、花蓮をずっと見つめている。


「も、もう!見ないで!」

花蓮は、本で顔を隠した。


「照れたのか?ちょっと可愛いぞ。」


「バカ!何なの?!」

花蓮は、本を少し下にずらし、盗み見る様に雅を見る。

牛乳瓶の底が本の上から覗いている。


「何、と言われてもな〜特に無いんだけど、池下と話してみたいと思ってさ。


「・・・わ、私をもて遊ぶつもりね!

それとも、何かの罰ゲーム?佐藤君が私と話したいなんてあり得ないでしょ?」

花蓮は、不信感に満ちた視線を雅に送る。


「はぁー!俺、絶対そんな事しないぞ!」

雅は少し怒っている。


「ご、ごめん。

その、佐藤君モテるし、私なんかと話す理由無くない?」


「理由と言われると困るな。」


「モテるってのは否定しないのね。」


「あぁ。俺モテるしな。

まぁ、彼女とかいた事ないし、好きとか分からんけど。」


「あっそ。羨ましい限りで。」

・・・彼女いた事ないんだ。

ちょっと嬉しい。

花蓮はまた本に視線を戻した。


「また本かよ。なぁー。」


「何?」


「別に何もない。」


「そっ。」


「・・・なぁー。」


「わ、私トイレ。」

花蓮は、立ち上がると、足早に教室を後にした。

トイレの鏡の前に立つと、大きなため息をつく。

「な、何なの?いきなり距離詰めすぎじゃない?ドキドキしてる。」

花蓮は胸に手を当てた。

鏡を見ると、赤くなった自分の顔が写っている。

「話せたのは嬉しいけど・・・急すぎだよ。」

しばらく鏡の前で項垂れ、花蓮は教室に戻った。


良かった。

杉下君来てる。

花蓮は安堵の表情を浮かべ、席に座った。


雅は、横目でチラチラと花蓮を気にしている。

「おぃ!雅!聞いてんのか?」


「す、すまん。何だった?」


「お前昨日から変だぞ?大丈夫か?」


「あ、あぁ。大丈夫。」

俺、池下に嫌われてんのかな?

明日また話しかけてみよう。


雅は、花蓮が人前で話しかけられるのを嫌がる気がして、気をつかった。


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