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消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


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24/28

24.決戦。

花蓮の誕生日からしばらく、ドキドキしたり、癒されたり、二人の幸せな日々は特に変わりなく過ぎていった。


そして、夏休み目前。

雅達バスケ部は、コートの中で円陣を組んでいる。


夏の大会、一回戦。

相手チームは、まさかの前回敗北をきしたあのチーム。

春の大会は、全国大会までは行かなかったものの、予選3位と言う好成績で話題になった。

そして、春の大会と違うのは、涼が、メキメキと実力を上げ、ベンチ入りしている事。


「さぁ!前回敗北した相手にリベンジだ!予選3位のチームだ。

ここで勝ったら全国だって夢じゃない!行くぞ、全国!!」

キャプテンが叫ぶ。


「おーーー!!!!」

部員達は、大会に響き渡る程に叫ぶ。



「おーーー!!!!」

相手チームも、気合い十分だ。


「やっばっ!鳥肌〜。見て見て。」

観客席に座る妃鞠は、花蓮に腕を見せる。

「私も〜。」

二人は腕を並べて笑った。


「涼、試合に出れるかな?」


「出れるといいね!涼くんは、ポイントガード?だよね?」


「そう、そう。指令塔ってやつ。」


「雅くん、涼くんが出てる時、楽しいって言ってた。ゲーム展開によっては、3年生のポイントガードと交代もあるかもね!」


「あー!楽しみ!花蓮はいいな〜、最初から雅くんでてるんだもん。」


「まぁ、それは否定できないわね。」


「あっ、始まるよ!」



コートの真ん中でボールが投げられた。

パスッ。

ジャンプボールは、キャプテンが力づくで押し返した。

雅にボールが渡る。

「久しぶり。」


「今回も勝たせてもらうぞ。」

雅は一瞬、睨みあった。

次の瞬間、一瞬で相手選手を抜き去った。

「くっそ!前より速い!」

相手選手は必死に追いかける。

守りに戻った選手達に、雅は囲まれる寸前で、高く飛び上がった。

「させるかよ!」

身長2メートルはありそうなセンターが雅の前で飛び上がった。

雅は、シュート態勢から、センターの選手の足元をバウンドさせ、パスをだした。

ゴール下、キャプテンがボールでネットを揺らした。

「よっしゃー!」

雅は叫ぶ。

「雅!早く戻れ!相手が速いの忘れたか!」


「はい!」


雅達は、それぞれ配置についた。


「あれは、ゾーンディフェンスだねー。」

「何それ?」

花蓮に妃鞠は問いかけた。

「ディフェンスには二種類あるみたいよ?決めた相手をディフェンスするマンツーマンディフェンスと、決めた範囲をディフェンスする、ゾーンディフェンス。」


「成る程・・・花蓮、めっちゃ勉強したね〜。私なんか本読んでてもあんまり分からなかったよ。」


「私、本好きだから。」

花蓮と妃鞠は、視線はコートに釘付けにしながら、話している。


ダムダムダム。


「今回は、ゆっくり攻めてくるんですね。」

雅は、構えながら、キャプテンに呟く。

「と、言うかあんなポイントガードいました?」


「雅、お前、相手チームの事興味なさすぎだ。前回の大会のポイントガードは、普段はベンチだったそうだ。

あいつが伝説の中学生最強のポイントガードだ。」


「えっ?気合い、入れます。」


「あぁ。」


相手チーム5人は、ゆっくりと歩きながら、センターラインを越えた。

ポイントガードは、手を上げ、人差し指を天井を指すようにあげる。

「ゾーンでいいのか?」

ポイントガードは、センターラインを越えた所で、シュート態勢に入った。

「はぁ!ふざけんな!」

雅は叫びながら、シュートを防ぎに向かうが、放たれたシュートは、綺麗な弧を描き、ネットを揺らした。

相手チームは、ディフェンスにゆっくりと戻ると、ゾーンディフェンスで待ち構える。



「くっそ!」

雅は苛立っている。

ゴール下でボールを持ったキャプテンは、ポイントガードではなく、雅にパスをだした。

「雅。」

キャプテンは、呼びかけると、笑う。

雅は、小さく頷いた。


「さぁ、切り替えて一本いきますか!」

雅は、相手のポイントガードを真似て、天井に人差し指を向ける。


「こい!」

相手チームは気迫がすごい。


雅は、ゆっくりとドリブルでセンターラインを越えた。

そして、シュート態勢に入る。

「はぁ?」

相手チームのポイントガードは、血相をかいて雅に迫る。


パシュッ。

雅のシュートは、ゴールのネットを揺らした。


「やられたらやり返さないとな!」

雅は叫んだ。

「お前、気に入らねー!ぶっ潰す!」

プライドを潰された気分の相手チームのポイントガードは、不機嫌そうだ。


オーーー!!!!

試合開始早々、展開が面白すぎて、観に来ていた観客達は大興奮だ。


「か、カッコいぃ。」

花蓮は、雅に見惚れている。

「雅、すごいね。」

「うん、ほんとすごい。」



ダムダムダム。

ゆっくりとドリブルでセンターラインを越えたポイントガードに、雅は迫る。

「ちっ、マンツーに切り替えやがったか。あのまま打ち合いってのも面白いと思ったのによ〜。」


「バーカ、もう打たせねーよ。」


相手チームは、雅達を崩そうとパスを回すが、半年前とは比べ物にならない守りで一向に崩れない。


「あ〜!ムカつく!」


「あと5秒で時間切れだぞ?」

雅がさらに挑発すると、

相手チームのポイントガードは、ドリブルしたまま、雅に背を向け、ゴールと反対に走る。

「はぁ?」

雅は、何をしようとしているのか分からず、戸惑ったが、追いかけようとした。


相手選手は、背中に目でもついているかの様に、ゴール付近にボールを高く投げた。

見えにくい動作で、離れた選手からはボールが投げられたのが見えていない様だ。



「秘策だよ。」

振り向くと、ニヤニヤと勝ち誇っている。

投げられたボールが落下し始めるが、キャプテンは気づいていない。

「キャプテン!上!」

キャプテンが頭上のボールに気づいた時には、相手のセンター選手が高く飛び、ボールを掴んでいた。

ガタン!

そしてそのまま、ゴールにぶち込んだ。


「おぃ、おぃ、高すぎだろ。

ダンクってNBAかよ。」

雅は、あっけにとられている。


「見たか!」

ポイントガードの選手は、雅に叫んだ。


「あぁ、見た、見た。すごいな。

でも、負けねぇ!」

雅は叫び返す。


「雅、行くぞ!」


「はい!」


キャプテンは切り替えて、ボールを掴んだ。

3年生のポイントガードにボールが渡り、攻めに転じる。

相手の守りも、半年前より格段に硬くなっている。


「くそっ!」

雅達は、突破口を見出せず、苦戦する。


ブー。

攻撃時間の時間切れをブザーが知らせる。


「くっそ!」

雅は悔しそうに、床を踏む。


「雅、切り替えろ!」


ゆっくりと攻めて来ていた相手チームは、突然、素早く動き出した。

パシュッ。

的確なパス回しで、一瞬の内に、ボールはゴールのネットを揺らした。


「ダメだ。タイムアウト!」

キャプテンが叫ぶと、ブザーが鳴る。



「ねぇ。分からなかった。なんでこっちが攻めてるのに、相手チームのボールになったの?」

妃鞠は細かいルールについていけていない様だ。


「攻撃には時間が決められてて、それを過ぎてもシュートしてないと、相手チームのボールになるの。

あと、タイムアウトは、流れを変えたい時とか、どうしても話したい時とかに取る休憩みたいな感じかな?」


「成る程。」



キャプテンは、何やらタイマーの所へ駆け寄り話している。


すぐにベンチに座り、何かを話している様だ。


妃鞠がベンチを、見つめていると、涼がジャージを脱いでいる。


「ねぇ!花蓮、見て!涼でるかも!」


「うん、出そうだね!」


二人はうれしそうに微笑む。


雅達の高校には、監督がいない。

ベンチの端で、急出勤の教師が、いい感じで負けるのを機嫌悪そうに期待している。

雅は、だからこの高校に決めた。

自分達で切り開く勝利、未来、そして全国。

それが雅の憧れた未来。


「よし!いくぞ!」

キャプテンが吠える。


「おーーー!!!!」



「見て!涼がコートに!」


「良かったね!雅、嬉しそう!反撃開始だね!」


「うん!」

花蓮と妃鞠は、嬉しそうに見つめ合った。


ダムダムダム。

「さぁ!一本いきますか!」

涼はご機嫌に叫ぶ。


「補欠が、何を吠えてる?さぁ、こい!」

ポイントガードと見た涼につく相手チームの選手は、さっきまで雅についていた、相手チームのポイントガードだ。


「雅につかなくていいのか?俺の見た所、雅を止められるのはお前くらいだが?」


「俺がお前からボールを奪えば済む。」

ニヤリと相手選手は笑う。

ダムダムダム。

「やってみろよ。」

涼は、相手選手を抜きにかかった。

「低っ、しかも速い!」

涼は、一瞬で相手チームのポイントガードを抜き去ると、センター達に囲まれる。

涼は、回転しながら飛ぶと、ゴールに背を向けたまま、ボールを投げた。

涼の投げたボールでは、回転を帯びたまま、体育館の天井近くまで飛んだ。

回転の止まったボールは、そのまま落下し、ゴールのネットを揺らす。

「よしっ。」

涼は、小さく呟く。


「な、何だあれ!」

相手チームのポイントガードが叫ぶと、会場は盛り上がる。

おーーー!!!


「見た?花蓮!涼!すごい!カッコいぃー!」

妃鞠は感動の余り、涙ぐんでいる。

「すごいね!反撃開始だ!」

花蓮も嬉しそうにする。



「よっしゃー!俺の時代きたー!」

涼は、ディフェンスに戻らずわざとらしく喜んでいる。

「涼!戻れ!」

キャプテンは叫ぶ。


相手チームは、不機嫌そうに、ゴール下からパスを出した。

横目で様子を見ていた涼は、瞬時に反応して、パスを奪った。

そのままドリブルで走ると、涼は、ゴールのネットを揺らした。


「これで逆転だ。」

涼は、冷静に戻り、相手チームを挑発する。


「何やってんだよ!」

「す、すまん、バカだと思って油断した。」

相手チームは言い合いをしている。


涼は、ディフェンスの配置に走って戻った。

「涼!」

雅が呼びかけると、涼は手を高くあげる。

雅は、涼の手にパチンと、ハイタッチした。  

「よっしゃー!勝つぞー!」

「おぅよ!」

雅と、涼は笑い合う。


ここから、涼に揺さぶられた相手チームはぐずれ出す。


ブー。

第一クウォーターが終わり、雅達のチームが10点差を付けつつ、休憩に入った。


「勝った、勝ったでしょこれ!」

妃鞠は嬉しそうだ。

「妃鞠、涼くんにご褒美あげないとね。」

花蓮は茶化す様に言う。

「あー!もぅ、何でもしてあげるー!」

妃鞠は、興奮状態だ。

「花蓮も雅にご褒美あげなよ〜!」


「そうだね。」

花蓮は、何か決意をしたような、少し険しい顔をして言った。


二人はこの時、勝負の厳しさを理解できていなかった。

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