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消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


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23/28

23.知らないフリと、サプライズ計画。

「今日さ、部活終わったら行きたいとこがある。」


「う、うん。」

まだ窓の外は薄暗い。

雅の朝練に合わせて、テーブルに並べられた朝ご飯を食べながら、雅と花蓮は見つめ合う。


「じゃぁ、部活終わりに体育館前に行くね。」


「うん・・・今日はどこに行くとか聞かないんだな。」


「えっ!?あ、うん、買い物とかかと思ったけど?」


「あ、あぁ。そんなとこ。」


「う、うん。」


サプライズを目論む雅と、大体全てを把握している花蓮は、ぎこちなく会話する。


「ごちそうさまでした。

じゃぁ、朝練行くわ!」


「うん。いってらっしゃい。」


「いってきます!」

雅は笑顔で学校に向かった。



「あっぶね〜!いらん事言って口を滑らすとこだったー!」

雅は、日課のランニングをしながら学校へ走った。



「はぁ。雅くん、私がサプライズに気づいてると知ったらがっかりするだろうな。記憶を操作できればな〜。」

花蓮は、食器を洗いながら独り言を呟いていた。



そして、夕暮れ時。

体育館の前で、いつもと違い花蓮は少し緊張して待っていた。

「お待たせ、行こうか。」


「う、うん?なんでジャージ?カバンは?」

いつもは制服に着替えるジャージ姿の雅を、花蓮は不思議そうに見つめる。


「ちょっとな。」


「まぁ、いいけど。」

花蓮は、不器用な雅になるべく深く聞かない様に気を使う。


「こっちだ。」

雅は、学校の裏山の方へ花蓮の手を引く。

「うん。」


「えっ?ここ?」


「うん。」


花蓮は、雅に手を引かれ、一番上が見えない石で仕切られているものの、土むき出しの階段の前に立っている。


「私、登山できるカッコしてないのですが。」


「問題無い!さっ!」

雅は、花蓮の前に背中を向けてかがむ。


「さっ?何?」


「乗れ!」

雅は顔だけ振り返り、笑顔で言う。


「う、うん。」

花蓮は恐る恐る雅の背中に乗った。


「うっ、これは、色々マズイ。」


「雅くんが乗れといいましたが?」


「よっ。」

雅は、掛け声と共に、花蓮を背負って立ち上がった。

「煩悩よ静まれ〜。」


「頑張れ・・・ねぇ、まさか、私を背負って、この階段登るつもり?」


「あぁ。そうだ。いくぞ?」


「う、うん。」



ハァハァハァ。

雅は、階段を一段一段、必死に登る。


「ねぇ。」


「何だ〜?」


「歩くよ?」


「ダメだ!この階段を、花蓮を背負って登るって決めたんだ!」


「そ、そう。」


「そう。」


ハァハァハァ。


「あっ!あれ!頂上じゃない?」


「本当だ!ハァハァハァ。」


「あと一段!」


「あー!!」

雅は、頂上に着くと、叫びながら花蓮をおろした。


「ハァハァハァ。」


「大丈夫?」


「うん。なんとか。アレ、アレを見せたかった。」

雅は、木が生えていない、開けた方を指さした。


「わぁ!綺麗!」

花蓮の目には、チカチカと輝く夜景と、星空が写る。

「こんな所があったんだ!雅くん、あっち行こ?」


「あぁ。」


二人は、手を繋いで、展望台に登る。

「綺麗〜。」

花蓮は、酔いしれる様に、景色を回す。

「明日も学校だから、遠くにいくのは無理だったから、いつも見てる街だけどな。」


「うん、ありがとう。素敵な誕生日だ。」

花蓮は、嬉しそうに微笑む。


「やっぱり意識してたんだ。言ってくれよ〜。妃鞠が教えてくれなかったら、俺知らなかったんだぞ?」


「ごめん。雅くんの誕生日は?」


「俺は、8月。」


「何日?」


「21日だ。」


「一緒だね。21日。」


「そうだな・・・花蓮!」


「はい。」


「誕生日おめでとう。」


「ありがとう!」

花蓮は、嬉しそうに微笑む。


「でも、何で私を背負って登ったの?」


「それはだな・・・この山を花蓮を背負って登りたいと思ったのは。」


「思ったのは?」


「この景色を見せたいと思った時に、花蓮に登らせるのは申し訳ないと思ったんだ、だから、背負うか。って思ったんだけど、背負って登りきったら、自信が付くと思った。

だから、言う!

俺は、花蓮に色々助けてもらってる。

だから、花蓮が大変な時は、花蓮の事、俺が背負ってやる!

だから、ずっと一緒に歩いていこう。」

雅は、ポケットから箱を取り出し、花蓮の前に開けながら差し出した。


「指輪?」


「うん。婚約の証。

今は高い指輪は買えないけど、いつか、ちゃんとしたの渡すから。」


「うん。ありがとう。ずっとの指輪でもいい。うれしい!」

花蓮は雅を見つめ、微笑む。


「付けていい?」


「はい。」

花蓮は、左手を差し出した。


「え?左手?」


「だって婚約の証なんでしょ?」


「う、うん。」


「覚悟しなさい。」

雅は、躊躇無く花蓮の左手の薬指に指輪をつけた。

「覚悟なんてとっくにしてる。

花蓮こそ、覚悟できてるのか?」


「もちろん!」

花蓮は、雅の顔に近づき、キスをした。


「旅行以来だな。」

雅は照れくさそうにする。

「モミモミもしますか?」


「そ、それはまたの機会に。」


「分かった。」

雅は、少し俯く花蓮の顔に手を当て、もう一度、キスする。


二人は微笑みあった。


「花蓮。」


「な〜に?」


「いい雰囲気の、しかも誕生日の所、大変申し訳ないんだが。」


「何?」

花蓮は、何を言い出すのかと、不安そうにする。


「実は。」


「実は?」


「涼と妃鞠が、俺の荷物を持って、俺の家の前で待っている。」


「はい!?急いで帰らないと!」


「うん。」


「・・・もう1回だけ。」

花蓮は、照れた顔で雅を見つめる。


「うん。」

雅は、花蓮を抱きしめて、キスをした。


少し見つめ合うと、花蓮はパチンと手を叩く。

「夢の時間はおしまい!急ごう!」


「そうだな。涼は大丈夫だろうけど、妃鞠はカンカンに怒ってるだろうな。言ってないし。」


「えー!涼くんだけにしか頼んでないの?」


「う、うん。」


「それはマズイわ〜。帰りは歩くね。

自分の足で歩く事もできますから。

でも、この先、疲れた時は背負ってね。」


「任せろ!」


二人は、手を繋ぎ、階段を一段一段おりて行った。



「あ〜!帰ってきた!雅!ふざけんなよお前ー!」

案の定、妃鞠はカンカンに怒っている。

「花蓮、お誕生日おめでとう!」

妃鞠は、切り替えて、花蓮に笑いかける。

「ありがとう。妃鞠、涼くんも、ごめんなさい。」


「いいのよ〜。花蓮のためだし。それにしても、雅はもう少し頭使いなさいよ〜。なんで私達がカバン持って、オードブルとケーキ買いに行かないとダメなのよ!」


「悪い。ステーキ食ったんだから、許してくれよ。」


「まぁ、花蓮のためだし多めに見てやる。あっ、でも涼には今度、何かおごるのよ?」


「もちろんです。

涼様と、妃鞠様には感謝しております。」


「調子いいわね〜。」


あはははっ!


「さっ!時間無い!パーティーしましょ?」


「えっ?」

花蓮は驚いている。

「花蓮の誕生日パーティーよ。

早くいこっ!」

妃鞠は、花蓮の手を引いて雅のマンションに入って行く。

「涼、ありがとう。」

雅は、改めて涼にお礼を言う。


「全然。花蓮ちゃん喜んだか?」


「あぁ、サプライズ大成功だ!」


「良かったな。俺達も早く入ろうぜ!」


「そうだな。」


こうして、花蓮の気付かないフリの努力もあり、サプライズは大成功した。


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