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消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


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22/28

22.誕生日プレゼント。

ある日の部活の休憩時間。

「妃鞠!今日の練習の最後の試合、俺出るぞ!」


「わぁ!すごい!」


「まぁ、Bチームだけどな。」


「頑張れ!」


「おぅ!」

妃鞠のプレッシャーなのか、涼は最近、明らかに上達している。

「やったな!涼と戦えるなんてワクワクするぜ〜。」

雅は嬉しそうにする。

「ワクワクで何故か思い出したわ。

雅、あんた花蓮の誕生日どうするの?」


「・・・えっ?」


「いや、誕生日。」


「いつ?」


「知らないのー!?バカ!」


「いや、そんな話にならなかったから。」


「6月21日!」


「マジ?あと1週間ちょっとじゃねーか!もっと早く教えてくれよ!」

雅はあたふたしている。

「どうしよう、どうしよう?あっ、まずはプレゼントだ!プレゼント!

って、何あげたらいい?」


「そんなの自分で考えなさいよ!」


「分からねーよ!

・・・あっ、そうだ!」

雅は、妃鞠と涼を必死な眼差しで見つめる。

「嫌よ。私達、今週デートなんだから。」


「ちょっとだ!ちょっとだけ。

そうだ!ランチおごる!デパートで好きなの食べていい!」


「どうする〜?」

妃鞠は意地悪な顔をしながら、涼と見つめ合う。

「まぁ、デートがデパートになるだけだし、ちょっと助けてやれば?」

涼は、雅に優しい。


「まぁ、涼がそう言うなら。」

妃鞠は、両手の人差し指をツンツンしている。

「何可愛くなってんだよ。」

雅は、目を細めて妃鞠を見る。


「あーそんな事言うんだー!」


「いゃ、すまん!いや、申し訳ございません。」

雅は頭を下げる。

「あはははっ!」

妃鞠と涼は楽しそうに笑っている。


「じゃあ、日曜日、頼むぞ?」


「分かったわよ〜。」



そして、日曜日。

「お、俺、ちょっと用事があって、行ってくるわ〜。夕方には帰る。」


「ん?怪しい。どこ行くの?」


「い、いや、その、あれだ・・・そう!バスケのイメトレをしに一人で歩きたいんだ!」


「そっ。いってらっしゃい。」


「うん。」

ガチャ。

雅が玄関のドアを閉めると、花蓮は隠し持っていたコンタクトを取り出し、目にはめた。

「まさか!もう浮気?怪しすぎでしょ!」

花蓮は、尾行することにした。

ガチャ。

「まだ見える。」

ドアを開け、雅を探すと、尾行には調度いい距離感だ。

「よし、名探偵花蓮、この事件を解決してみせます!」



雅は、何を買えばいいか、必死に考えながら歩いている。


ブーブー。

「何だ?」

ブーブー。

雅のスマホが震えている。

「涼、どうした?」


すまん、風邪ひいた。

「えっマジ?仕方ないな、じゃあ一人でなんとかするわ〜。」


いや、妃鞠は行くからさ、助けてもらえ。


「はぁ?二人はマズイだろ?」


いや、俺、妃鞠の事も、雅の事も信頼してるから、大丈夫。プレゼント決まったらお見舞い来てくれるんだよ。

だから早く決めてくれよ〜。

グホッ、ゲホッ。


「恩に着る!」


雅は、足速にデパートに向かう。



花蓮は、必死に尾行する。

「ハァ、ハァ、ハァ。

は、早いよ。いつもは私にペース合わせてくれてんのかな?」


デパートの前に着くと、雅はキョロキョロとしだした。

「誰かを探してる?」

花蓮は胸騒ぎを覚える。


「あっ、いたいたー!」

雅に呼びかけながら近づいてくる女の声に、花蓮は気づく。

「えっ?妃鞠?禁断の恋?なの?」

花蓮は、その場に膝をつく。



「おぉ、悪いな。」


「まぁ、気にすんな!早く行こ!」

妃鞠は、雅の近くまで来ると、デパートに向いて歩き出す。


「・・・ゔ〜。なんでよ〜。」

花蓮は、沈む心をこらえつつ、尾行を継続する。



「う〜ん。なんか違う?」

「いや、なら自分で選べや」

「す、すまん!でも、これは。」


二人は楽しそうにショッピングデートをしている様に見える。

花蓮は絶望を振りはらい、堪える。



「もぅ!お腹空いた〜。早く涼のところ行きたいのに〜。」


「す、すまん。約束だし、何か食べるか?」


「そうね〜、じゃあ、あれ。」

フードコートを妃鞠は指さした。

「・・・いきなり過ぎるステーキだと?

お前、遠慮と言う言葉をしらんのか?」


「なんでもっていったよね?

涼がいなくてラッキーだったね〜。

半額で済む。」


「いや、あいつがいたら、ラーメンくらいで許してくれただろ?二人分でもステーキの半分だ。」


「あら、男に二言はなくってよ〜。」


「はいはい。分かったよ。」




「あ〜美味しい〜!」

雅は、妃鞠が食べているのを見ている。

「何も食べないの?」


「プレゼントのお金が足りなくなるかもしれん。」


「あらら、愛だね〜。」


「はぁ。うるせっ。」

ため息交じりに雅は頭を抱えた。


ブルッ。

妃鞠は、何か寒気を感じて隣りの席を見た。

「えっ?なんで?」

怯えた表情の妃鞠を見て、雅も隣りの席を見た。


雅は、隣りの席に一人で座る女に見覚えがあった。

「あれ?奇遇だね、花蓮さんも買い物?」


「えぇ、こんな所で会うなんて。」

花蓮は、雅と話しながら、チラチラと妃鞠を睨んでいる。


「あはっ。」

よく分からない誤魔化し笑いで妃鞠は乗り切ろうとする。


「お二人はデートかしら?

雅くんは、花蓮ちゃんとお付き合いしてると聞いてましたけど?」


「あぁ、デートじゃないぞ?花蓮の」

「あー!!そう、私の彼氏が風邪ひいたから、荷物持ち、荷物持ちなの!」

妃鞠は、雅に気を使って誤魔化そうとする。


こいつマジで気づいてないの?

バカでしょ!自分の彼女よ?

上手く誤魔化せずに、怪しまれて尾行されたんでしょうね。

バカだ〜!


妃鞠は、心の中で笑う。


「いや、荷物持ちとか、お前の印象が悪くなるだろ?花蓮の誕生日が近くて、何買ったらいいかわからなくてさ。本当はこいつの彼氏も来る予定だったんだけど、風邪ひいたみたいで、

もう一人でなんとかするって言ったのに、やっぱり持つべきは友達だよな〜。

あっ!そうだ!花蓮さんは何がいいと思う?」


「そうね〜。」

花蓮は安心していつもの柔らかい表情に戻った。


バカだ!

こいつマジバカ!

本人に聞いてまーす!


妃鞠は、笑いを堪えるのに必死だ。


「そうよ、こいつ、優柔不断でなかなか決めてくれないから、私、彼氏のとこいけないのよ〜。花蓮さん?でいいのかな?一緒に見てあげてよ!」


「えっ?」

花蓮は、妃鞠を再び睨む。


「おぃ、妃鞠!お前、5000円のステーキ食べながらそれは無くないか?」

雅は不満そうだ。


「ふふっ。雅くん、花蓮ちゃんは、雅くんの一生懸命選んだプレゼントをいらないとか、文句言ったりすると思う?」


「しないな。」

雅は即答する。


「なら、妃鞠ちゃんは、解放してあげて、昼からは一人で探すのがいいかもね。雅くんが妃鞠ちゃんと二人でいるのを花蓮ちゃんが見たら、嫌な気持ちになるかもよ?」


雅は、ハッとした表情で立ち上がる。

「妃鞠、すまん。俺、プレゼント探してくる!」


「はぃはぃ、私もステーキ食べたら、帰る〜。」


「おぅ、ありがとな!」

雅は満面の笑みで、人混みに消えて言った。


「あは、あはははっ!!!

ヤバい!笑い越えるの必死!

何で分からないの?

うけるー!」

妃鞠は、耐えていた笑いを全て吐き出すと、真面目な顔をした。

「花蓮、ごめんね。雅の言った通りだから。」


「うん。ごめん、私の誕生日なんかに巻き込んで。」


「え〜?花蓮の誕生日だから、涼に会いたいの我慢したんだよ?

あいつマジ決めてくれないし、ウザかった!」


「あはははっ。まぁ、でもそんなに悩んでくれたのは嬉しい。」


「まぁ、そうなるよね。さっ、お腹もいっぱいになったし、お見舞い買って涼のとこ行くね!せっかくなら偶然を装ってデートしたら?」


「うん。したいけど、雅くんの気持ちが嬉しいから、プレゼント楽しみにしながら今日は帰る。」


「じゃあ、一緒に帰ろうよ?」


「そうだね。あっ、待って。」

花蓮は、コンタクトを外し、髪を束ねるとメガネをかけた。


「何で?」


「前も言ったけど、メガネ外すの恐いんだ。」


「そっか。それだけ追い込んじゃったんだね。ごめん。」


「大丈夫。ありがとう。

じゃあ、帰ろっ。」

花蓮と妃鞠は仲良く帰路についた。



カァカァカァカァ〜。

カラスが鳴く夕暮れ。

「あ〜、おっそ!」

花蓮は、流石に待ちくたびれていた。

「せっかくの休みなのに、どんなけおそいねん!関西弁になってもーたわ!」


「・・・寂しいな。」


花蓮は、晩御飯の支度を終え、ソファーに座った。


ガチャ。

「た、だ、いま〜。」


「おかえりなさい。大丈夫?」


「うん。疲れた。」


「イメトレは成功した?」

花蓮はとぼけて聞く。

「まぁ、まぁ、だな。」

疲れ果てた雅は、花蓮の隣りに座った。

「ちょっとだけ甘えていいですか?」


「え〜?何をご所望?」


「膝枕。」


「仕方ないな〜。どうぞ。」

花蓮は、太ももの辺りをポンッと叩く。

雅は、花蓮の太ももに顔を埋める。

「花蓮の匂い。」


「その辺りはあまり嗅がないでほしいのだけど。」


「いいじゃん〜。」


「まぁ、今日は許そう。」

花蓮は、雅の頭を優しくなでた。


グ〜。

「あっ、俺、昼ごはん食べてなかった。」


「あら、晩御飯はできてすよ?

膝枕にする?

晩御飯にする?

それとも?」

ガサッ。

雅は突然起き上がる。

「花蓮にする〜!」

雅は花蓮を抱きしめた。

「どうしたの?今日は。」


「疲れた。とても疲れたから、花蓮がいい。」


「そう。」

花蓮も雅を抱きしめ返して、ドキドキしながらも、心地よい気持ちで目を閉じた。


今日の寂しいは帳消しね。

許してあげよう。


花蓮は、幸せな気分になった。



グ〜。

グ、グ〜。


「ふふっ、あはははっ。」

しばらく抱きしめ合っていたが、雅のお腹の音があまりにも鳴るので、花蓮は笑い出した。

「せっかくいい雰囲気だったのに〜。

ご飯準備するね。」


「うん。ごめん、ありがとう。」


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