22.誕生日プレゼント。
ある日の部活の休憩時間。
「妃鞠!今日の練習の最後の試合、俺出るぞ!」
「わぁ!すごい!」
「まぁ、Bチームだけどな。」
「頑張れ!」
「おぅ!」
妃鞠のプレッシャーなのか、涼は最近、明らかに上達している。
「やったな!涼と戦えるなんてワクワクするぜ〜。」
雅は嬉しそうにする。
「ワクワクで何故か思い出したわ。
雅、あんた花蓮の誕生日どうするの?」
「・・・えっ?」
「いや、誕生日。」
「いつ?」
「知らないのー!?バカ!」
「いや、そんな話にならなかったから。」
「6月21日!」
「マジ?あと1週間ちょっとじゃねーか!もっと早く教えてくれよ!」
雅はあたふたしている。
「どうしよう、どうしよう?あっ、まずはプレゼントだ!プレゼント!
って、何あげたらいい?」
「そんなの自分で考えなさいよ!」
「分からねーよ!
・・・あっ、そうだ!」
雅は、妃鞠と涼を必死な眼差しで見つめる。
「嫌よ。私達、今週デートなんだから。」
「ちょっとだ!ちょっとだけ。
そうだ!ランチおごる!デパートで好きなの食べていい!」
「どうする〜?」
妃鞠は意地悪な顔をしながら、涼と見つめ合う。
「まぁ、デートがデパートになるだけだし、ちょっと助けてやれば?」
涼は、雅に優しい。
「まぁ、涼がそう言うなら。」
妃鞠は、両手の人差し指をツンツンしている。
「何可愛くなってんだよ。」
雅は、目を細めて妃鞠を見る。
「あーそんな事言うんだー!」
「いゃ、すまん!いや、申し訳ございません。」
雅は頭を下げる。
「あはははっ!」
妃鞠と涼は楽しそうに笑っている。
「じゃあ、日曜日、頼むぞ?」
「分かったわよ〜。」
そして、日曜日。
「お、俺、ちょっと用事があって、行ってくるわ〜。夕方には帰る。」
「ん?怪しい。どこ行くの?」
「い、いや、その、あれだ・・・そう!バスケのイメトレをしに一人で歩きたいんだ!」
「そっ。いってらっしゃい。」
「うん。」
ガチャ。
雅が玄関のドアを閉めると、花蓮は隠し持っていたコンタクトを取り出し、目にはめた。
「まさか!もう浮気?怪しすぎでしょ!」
花蓮は、尾行することにした。
ガチャ。
「まだ見える。」
ドアを開け、雅を探すと、尾行には調度いい距離感だ。
「よし、名探偵花蓮、この事件を解決してみせます!」
雅は、何を買えばいいか、必死に考えながら歩いている。
ブーブー。
「何だ?」
ブーブー。
雅のスマホが震えている。
「涼、どうした?」
すまん、風邪ひいた。
「えっマジ?仕方ないな、じゃあ一人でなんとかするわ〜。」
いや、妃鞠は行くからさ、助けてもらえ。
「はぁ?二人はマズイだろ?」
いや、俺、妃鞠の事も、雅の事も信頼してるから、大丈夫。プレゼント決まったらお見舞い来てくれるんだよ。
だから早く決めてくれよ〜。
グホッ、ゲホッ。
「恩に着る!」
雅は、足速にデパートに向かう。
花蓮は、必死に尾行する。
「ハァ、ハァ、ハァ。
は、早いよ。いつもは私にペース合わせてくれてんのかな?」
デパートの前に着くと、雅はキョロキョロとしだした。
「誰かを探してる?」
花蓮は胸騒ぎを覚える。
「あっ、いたいたー!」
雅に呼びかけながら近づいてくる女の声に、花蓮は気づく。
「えっ?妃鞠?禁断の恋?なの?」
花蓮は、その場に膝をつく。
「おぉ、悪いな。」
「まぁ、気にすんな!早く行こ!」
妃鞠は、雅の近くまで来ると、デパートに向いて歩き出す。
「・・・ゔ〜。なんでよ〜。」
花蓮は、沈む心をこらえつつ、尾行を継続する。
「う〜ん。なんか違う?」
「いや、なら自分で選べや」
「す、すまん!でも、これは。」
二人は楽しそうにショッピングデートをしている様に見える。
花蓮は絶望を振りはらい、堪える。
「もぅ!お腹空いた〜。早く涼のところ行きたいのに〜。」
「す、すまん。約束だし、何か食べるか?」
「そうね〜、じゃあ、あれ。」
フードコートを妃鞠は指さした。
「・・・いきなり過ぎるステーキだと?
お前、遠慮と言う言葉をしらんのか?」
「なんでもっていったよね?
涼がいなくてラッキーだったね〜。
半額で済む。」
「いや、あいつがいたら、ラーメンくらいで許してくれただろ?二人分でもステーキの半分だ。」
「あら、男に二言はなくってよ〜。」
「はいはい。分かったよ。」
「あ〜美味しい〜!」
雅は、妃鞠が食べているのを見ている。
「何も食べないの?」
「プレゼントのお金が足りなくなるかもしれん。」
「あらら、愛だね〜。」
「はぁ。うるせっ。」
ため息交じりに雅は頭を抱えた。
ブルッ。
妃鞠は、何か寒気を感じて隣りの席を見た。
「えっ?なんで?」
怯えた表情の妃鞠を見て、雅も隣りの席を見た。
雅は、隣りの席に一人で座る女に見覚えがあった。
「あれ?奇遇だね、花蓮さんも買い物?」
「えぇ、こんな所で会うなんて。」
花蓮は、雅と話しながら、チラチラと妃鞠を睨んでいる。
「あはっ。」
よく分からない誤魔化し笑いで妃鞠は乗り切ろうとする。
「お二人はデートかしら?
雅くんは、花蓮ちゃんとお付き合いしてると聞いてましたけど?」
「あぁ、デートじゃないぞ?花蓮の」
「あー!!そう、私の彼氏が風邪ひいたから、荷物持ち、荷物持ちなの!」
妃鞠は、雅に気を使って誤魔化そうとする。
こいつマジで気づいてないの?
バカでしょ!自分の彼女よ?
上手く誤魔化せずに、怪しまれて尾行されたんでしょうね。
バカだ〜!
妃鞠は、心の中で笑う。
「いや、荷物持ちとか、お前の印象が悪くなるだろ?花蓮の誕生日が近くて、何買ったらいいかわからなくてさ。本当はこいつの彼氏も来る予定だったんだけど、風邪ひいたみたいで、
もう一人でなんとかするって言ったのに、やっぱり持つべきは友達だよな〜。
あっ!そうだ!花蓮さんは何がいいと思う?」
「そうね〜。」
花蓮は安心していつもの柔らかい表情に戻った。
バカだ!
こいつマジバカ!
本人に聞いてまーす!
妃鞠は、笑いを堪えるのに必死だ。
「そうよ、こいつ、優柔不断でなかなか決めてくれないから、私、彼氏のとこいけないのよ〜。花蓮さん?でいいのかな?一緒に見てあげてよ!」
「えっ?」
花蓮は、妃鞠を再び睨む。
「おぃ、妃鞠!お前、5000円のステーキ食べながらそれは無くないか?」
雅は不満そうだ。
「ふふっ。雅くん、花蓮ちゃんは、雅くんの一生懸命選んだプレゼントをいらないとか、文句言ったりすると思う?」
「しないな。」
雅は即答する。
「なら、妃鞠ちゃんは、解放してあげて、昼からは一人で探すのがいいかもね。雅くんが妃鞠ちゃんと二人でいるのを花蓮ちゃんが見たら、嫌な気持ちになるかもよ?」
雅は、ハッとした表情で立ち上がる。
「妃鞠、すまん。俺、プレゼント探してくる!」
「はぃはぃ、私もステーキ食べたら、帰る〜。」
「おぅ、ありがとな!」
雅は満面の笑みで、人混みに消えて言った。
「あは、あはははっ!!!
ヤバい!笑い越えるの必死!
何で分からないの?
うけるー!」
妃鞠は、耐えていた笑いを全て吐き出すと、真面目な顔をした。
「花蓮、ごめんね。雅の言った通りだから。」
「うん。ごめん、私の誕生日なんかに巻き込んで。」
「え〜?花蓮の誕生日だから、涼に会いたいの我慢したんだよ?
あいつマジ決めてくれないし、ウザかった!」
「あはははっ。まぁ、でもそんなに悩んでくれたのは嬉しい。」
「まぁ、そうなるよね。さっ、お腹もいっぱいになったし、お見舞い買って涼のとこ行くね!せっかくなら偶然を装ってデートしたら?」
「うん。したいけど、雅くんの気持ちが嬉しいから、プレゼント楽しみにしながら今日は帰る。」
「じゃあ、一緒に帰ろうよ?」
「そうだね。あっ、待って。」
花蓮は、コンタクトを外し、髪を束ねるとメガネをかけた。
「何で?」
「前も言ったけど、メガネ外すの恐いんだ。」
「そっか。それだけ追い込んじゃったんだね。ごめん。」
「大丈夫。ありがとう。
じゃあ、帰ろっ。」
花蓮と妃鞠は仲良く帰路についた。
カァカァカァカァ〜。
カラスが鳴く夕暮れ。
「あ〜、おっそ!」
花蓮は、流石に待ちくたびれていた。
「せっかくの休みなのに、どんなけおそいねん!関西弁になってもーたわ!」
「・・・寂しいな。」
花蓮は、晩御飯の支度を終え、ソファーに座った。
ガチャ。
「た、だ、いま〜。」
「おかえりなさい。大丈夫?」
「うん。疲れた。」
「イメトレは成功した?」
花蓮はとぼけて聞く。
「まぁ、まぁ、だな。」
疲れ果てた雅は、花蓮の隣りに座った。
「ちょっとだけ甘えていいですか?」
「え〜?何をご所望?」
「膝枕。」
「仕方ないな〜。どうぞ。」
花蓮は、太ももの辺りをポンッと叩く。
雅は、花蓮の太ももに顔を埋める。
「花蓮の匂い。」
「その辺りはあまり嗅がないでほしいのだけど。」
「いいじゃん〜。」
「まぁ、今日は許そう。」
花蓮は、雅の頭を優しくなでた。
グ〜。
「あっ、俺、昼ごはん食べてなかった。」
「あら、晩御飯はできてすよ?
膝枕にする?
晩御飯にする?
それとも?」
ガサッ。
雅は突然起き上がる。
「花蓮にする〜!」
雅は花蓮を抱きしめた。
「どうしたの?今日は。」
「疲れた。とても疲れたから、花蓮がいい。」
「そう。」
花蓮も雅を抱きしめ返して、ドキドキしながらも、心地よい気持ちで目を閉じた。
今日の寂しいは帳消しね。
許してあげよう。
花蓮は、幸せな気分になった。
グ〜。
グ、グ〜。
「ふふっ、あはははっ。」
しばらく抱きしめ合っていたが、雅のお腹の音があまりにも鳴るので、花蓮は笑い出した。
「せっかくいい雰囲気だったのに〜。
ご飯準備するね。」
「うん。ごめん、ありがとう。」




