21.親友の恋。
「おっはよ〜!」
朝の誰もいない教室。
花蓮が一人座って本を読んでいると、教室に妃鞠が入っていた。
「あら、早いのね。おはよ。」
花蓮は、本から目を移し、妃鞠に挨拶する。
「花蓮ー!」
妃鞠は、カバンを置くと、突然花蓮に抱きついた。
「どうした、どうした?」
花蓮は冷静に、妃鞠の背中をトントンとする。
改まった様に妃鞠は体を起こし、雅の席に座った。
「こないだね、涼の事話したじゃない?」
「うん。何かあったの?」
「いや〜、私ともあろう者が、中々言い出せなくて、ようやく日曜日、呼び出した。」
「あら、頑張ったわね。」
花蓮は嬉しそうに微笑む。
「うん。でね、でね!」
「うん。」
「私、友達からって言うのは、断った訳じゃないって言ったよ!」
「よくできました。」
花蓮は、妃鞠の頭に手を伸ばし、ナデナデする。
「うん。そしたら、涼、喜んでくれたよ!」
「良かったね〜!で、その後は?」
「あのさ〜、花蓮じゃないんだから。
それで終わり。」
「えー!なんで?付き合ってって言えば良かったのに!」
花蓮は残念そうに嘆いている。
「ダメ!涼から言わせる。
じゃないと、私の方が立場弱くなるじゃん!」
「立場とかどうでも良くない?
まぁ、私も告白されるように誘導はしたから、言えないか。」
「そうだよ〜。」
「でも、妃鞠は一度ふった様な物だから、妃鞠から言うべきだと思うけどな〜?」
「た、確かに。でも、私も付き合ったことないから恐いんだよね。」
「そんなの誰でも一緒だよ。
でも、好きが勝っちゃうんだよ。」
「そうね。私も、好きに負けそうです。」
「ふふっ。まぁ、頑張って!」
花蓮は小さく拳を握った。
「うん。頑張る!」
「おっ!お二人さん仲良いいな〜。」
二人の会話がキリのいいタイミングで、雅と涼が教室に入ってきた。
「よっ!」
妃鞠は、少し照れながら、涼に挨拶する。
「お、おぅ。」
涼も恥ずかしそうだ。
「何だ、何だ?」
雅はニヤニヤしながら二人を交互に見る。
「二人は、友達以上、恋人未満になったそうよ。」
花蓮は小さく笑う。
「おー!良かったなー!」
雅も嬉しそうにする。
「ねぇ、涼。」
「な、何?」
「今日、一緒に帰ろ?」
「お、おぅ。」
妃鞠の急な誘いに、涼は嬉しそうにしている。
「あっ、でも、俺部活だぞ?何時間も待ってもらわないといけなくなるし。」
「い、嫌なのかよ?」
不満気に妃鞠は膨れる。
「いや、嬉しい。」
「じゃあ、決まりね!暇になったらあんたが頑張ってる姿でも見に行ってあげるから、早くスタメン取りなさい。」
「見に来るのか?・・・頑張るよ。」
「こっちがバズい。」
「えぇ、人前でイチャイチャするのやめてもらいたいわ。」
雅と花蓮は、顔を見合わせる。
「あんた達にだけは、言われたくない!」
妃鞠は、抵抗する様に叫ぶ。
「あはははっ!」
4人は、楽しくて笑った。
「花蓮〜!」
そして部活終わり。
保健委員の仕事を終えた花蓮が、体育館に来ると、妃鞠が座っていた。
「妃鞠、ずっと見てたの?」
「ずっとじゃないけど、結構長いこと見てた。」
「いいな〜。」
「私、バスケ分からないから、これ読みながらね。まぁ、涼は試合出てなかったけど。」
「そっか。その本、読み終わったら貸して欲しいな。」
「うん、いいよ〜。
花蓮もバスケの勉強?」
「うん。一度雅くんの試合、見に行ったんだけど、ルール分からなくてさ。
感動はしたんだけど。」
「いいな〜。私も次の試合は見に行こっと。花蓮、一緒に行こうよ?」
「うん、行こ、行こ!」
「あ〜楽しみ。あっ!でも、それまでに涼にスタメンになってもらわないとな!」
「ふふっ、妃鞠か応援したら、本当にスタメンになりそう。」
「そうよ!この私が応援するんだから!」
二人は楽しそうに笑った。
「お待たせ。」
練習を終えた涼と雅が体育館から出てきた。
「着替えてくるわ〜。」
二人は早足で部室に向かった。
「あぁ。ドキドキしてきた。」
妃鞠は、急に緊張した様子で俯く。
「あら、可愛い。」
「茶化すなよ〜。」
妃鞠は膨れている。
「ドキドキも、楽しいと私は思ったよ?」
「花蓮はもうドキドキしない?」
「するよ。居心地が良くて落ち着く時もあれば、ドキドキする事もある。」
「そっか。まぁ、頑張りますよ。」
「うん。頑張って下さい。」
二人はまた笑い合った。
「お二人さん、帰ろうか。」
雅と涼は、着替えを済ませた様だ。
「うん!」
花蓮と妃鞠は嬉しそうに答えた。
「じゃぁ、妃鞠、また明日〜。」
「えっ?4人で帰らないの?」
「えっ?邪魔しないでよ〜。」
花蓮は、雅の腕にしがみつくと、引っ張る様に、早足で帰って行った。
「花蓮のやつ。」
妃鞠は小さく呟く。
「妃鞠、帰ろうか。」
「う、うん。」
二人きりになると、二人は照れながら、少し離れて歩いた。
「ねぇ、涼。」
「何だ?」
「せっかく二人で帰ってるのに、距離遠い。」
「す、すまん。手。」
「ん?」
「手でもつなぐ?」
「はぁーー!!!」
涼が照れくさそうに言うと、妃鞠は驚いて叫んだ。
「ごめん。調子にのった。」
涼は少し落ち込んでいる。
「つなぐ。」
妃鞠は小さな声で呟いた。
「えっ?なんて?」
「だから!つなぐの!」
「な、なんで怒るんだよ?」
「べ、別に怒ってない。その、恥ずかしかったから・・・キャッ。」
妃鞠が照れて俯くと、涼は妃鞠の手を握った。
「驚かせた?ごめん。」
「大丈夫。」
二人はしばらく黙って歩いた。
「ねぇ。」
妃鞠は、涼の顔を見て立ち止まった。
「ん?」
「私達、なんで手を繋いでるの?」
「嫌か?」
「違うくて。」
「何でって。」
「あー!!!無理!私にはできないわ!」
「な、何?情緒不安定かよ?」
「そうよ!頭がおかしくなるくらい、涼の事好きになったの!」
「・・・俺も、好きだ。妃鞠の事、初めて本当の好きを知ったんだ。
もう一度、言ってもいいか?」
「・・・結果オーライ。」
ニヤリと妃鞠は笑う。
「何?」
「何でもないよ。言ってよ早く。」
「妃鞠、俺の彼女になってくれ!」
「うん!」
妃鞠は、嬉しそうに涼に飛びついた。
「ひ、妃鞠!」
「いいじゃ〜ん!付き合ったんだし〜。」
「う、嬉しいけと、人が見てるって。」
「あっ。」
妃鞠はふと我に帰り、涼から離れた。
「妃鞠、俺さ、妃鞠が雅に一生懸命なのを見て、最初は応援してたんだけど、雅に見せる笑顔とか、一生懸命さとか、俺に向けてくれたらって思う様になってさ、気づいたら妃鞠の事ばっか考える様になってた。」
「そうなんだ。私は、雅にふられてから、涼が優しくしてくれて、嬉しかった。
気づいたら、雅に絡むフリして、涼と話したいって思う様になってたの。
ふられた女に優しくするなんて、ズルぞ?」
「そうだな。そんなつもりは無かったんだけど、結果そうなったからな。」
「まぁ、四天王と呼ばれるこの私を惚れさせたんだ、責任をとりたまえよ?」
楽しそうに笑う妃鞠を、涼は嬉しそうに見つめた。
「そうだな。ひんしゅくをかいそうだが、がんばるよ。」
「自信もて〜!」
「えっ?」
妃鞠は、涼の頬にキスをした。
「だ、だから、人がいるから!」
涼は焦っている。
「しないほうが良かった?」
「いや、してくれて良かった。」
「でしょ〜!これからよろしくね!」
「うん、こちらこそ!」
二人は仲良く手を繋ぎ、夕暮れの道を帰った。




