18.恋バナと修羅場。
「お疲れ様。」
雅が練習を終え、体育館から出ると、花蓮が待っていた。
「おぅ。花蓮も保健委員お疲れ。
保健室行ったのにいなかったな。」
「え?うん、今日は色々するとこがあったのよ。」
「そっか、花蓮さんと話した。
相談してたんだってな〜?偶然にも俺も花蓮さんに少し相談してたんだよ?」
「そ、そうなんだ。ハハッ。」
これは、気付いてない?
それとも、気づいていての当てつけの様なもの?
雅くんの場合は・・・気づいてないか。
「着替えてきて。一緒に帰ろ?」
「うん。急ぐわ!」
「おーぃ、雅、俺と帰るんじゃなかったのかよ。」
不満気に涼は呟く。
「あっ。」
「冗談だよ。早く着替えてやれ。」
「す、すまん。」
雅と涼は、部室へと歩いて行った。
「やぁ、花蓮!」
「ひ、妃鞠?どうしたの?」
「今日、私、花蓮の家に泊まる。」
花蓮が妃鞠の手元に目を移すと、大きな荷物を抱えている。
「えっ?急すぎよ?」
「だって、明日休みだし。
いいでしょ?」
「いや、その。」
「あ〜、雅とデート?」
「そ、そう言う訳では無いけど。」
「じゃあ、いいよね?お母さんにももう晩御飯いらないって言ってきたし、私を見捨てるつもり?」
「はぁ。わかりました。雅くんに言わないとだし、ちょっと待ってね。」
花蓮は、雅に詫びのメッセージを送り、妃鞠と歩き出す。
「今日は取り調べよ?」
「え〜?色々言えない様な事があるのでお手柔らかに。」
花蓮は、妃鞠の事は何故か信頼できる様な気がして、嫌な気分ではなかった。
「・・・突然すぎる。
ひどいじゃないか!コンビニの弁当じゃもう満たされない。」
雅は、花蓮からの突然の連絡に、とりあえず家に帰ってきたものの、一人項垂れていた。
「よしっ、晩御飯だけでも。」
雅は、立ち上がると、花蓮の家に押しかける事にした様だ。
「と、言う感じかしら。」
花蓮の家では、妃鞠の取り調べが続いていた。
「すごっ。花蓮って結構積極的なのね。」
自分にはできそうもないと、妃鞠はあっけにとられている。
「だって、入学前から良いなって思いながら、一年間、口もきかずにきたところで、突然の急接近だったんだもん。
自分でも少し驚きながらだったけど、ホラー映画の後のところ辺りから、止まらなくなっちゃった。」
「勝てない訳だ。でも、何で話してくれたの?今の、ほぼ全部だよね?まさかお泊まりデート済みだとは思わなかったわ〜。」
花蓮は、半同棲の事だけは伏せて話した。
「何でだろ?同じ人を好きになったから、ちゃんと言わないととは思ったけど、妃鞠の事は何故か信頼できると言うか〜。まぁ、話したのは、全部じゃないけどね。」
「まだ爆弾抱えてんの?十分驚いたけど。でも、嬉しいよ!まぁぶっちゃけ、雅の事はもう諦めてたし、ちょっと良いなって思ってる人がいるから、私の事は気にしないで、ラブラブして。」
「そう。良かったわ。ちょっと引っかかってたし。」
「あら?全く気にしてないと言うか、戦闘態勢かと思ってたわ〜。」
「教室の時はね〜。」
「で、何で雅の前でもメガネ外さないの?」
「・・・その話は、また今度。」
「あー、そっか。雅に一番に話すべきよね。」
「う、うん。でも、こうして妃鞠とも友達になれそうだし、雅くんの周りは、前とは違うって感じるの。
だから、このメガネ外す日も近い気がするよ。」
「何だか、少し重たい話そうね。
私にできる事があれば言ってね。」
「うん、ありがとう。」
花蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「でもあれよね〜、みんな、花蓮がメガネ外したらびっくりするわよきっと。
前に更衣室で花蓮の素顔見た私としては、外してはならない禁断の封印って感じなのよね。」
「そうかな?別に、もう何も変わらないと思う。今は雅くんの彼女だから。」
「まぁ、相手が雅なら、誰も文句無いか〜。まったく、憎いくらいにお似合いよ。」
ちょっと不服そうに妃鞠は言った。
「で?妃鞠が気になる人とは誰だ〜?」
「ちっ、口を滑らせたのをちゃんと聞いてたか。」
「そりゃー、一番気になる一言だったしね〜。」
「涼。」
「あら?割と近い人ね。」
「う、うん。なんかさ、雅に絡むと大体ついてくるじゃない?」
「またオマケみたいな言い方を。」
「まぁ、このオマケ邪魔ー!って思ってたんだけど、雅に振られてから、色々気を使ってくれてんのが分かってさ、心配してくれてんのかな?と思ってたんだけど、まさかの・・・休みの間に、呼び出されて、告られた。」
「えっ?そうなの?!妃鞠だったんだ。」
「えっ?何が?」
「毎回、雅くんには誰が好きだとか、告白するだとかの報告を怠らなかったらしいんだけど、今日の朝、杉下君が一年間で3回振られたって言ってたのよ。
雅くんは、2回しか知らないって言って、少し落ち込んでたみたい。
まぁ、自分も隠してたし、杉下君の事はいえないと言ってたけど。」
「私の事は雅に内緒にしてたって事?
と、と言うか、私ふったつもりない!
友達からとは言ったけど。」
「あらら、今日泊まりに来て良かったね。杉下君、切り替え早そうだし、明日にでもちゃんと気持ち伝えないとね。
友達からってのは、中身ちゃんと伝えないと、フリ文句になると私は思うよ?」
「そ、そうかな。
・・・明日話してみるね。
なんか、癪に障るけど。」
「あははっ。惚れさせたつもりが、気づけば追う側だね〜。」
「全く。難しいね、恋愛は。」
二人は微笑み合った。
「さっ、そろそろ晩御飯つくろうかな。」
「私も手伝うよ。」
二人はキッチンに立つ。
「あ〜、そう言えば。」
花蓮は、小さく呟く。
色々と雅の家に持って行っている事を忘れていた。
鍋無い。フライパンも。小さいのでできるかな?
どうしようか。
花蓮は、何でどう調理するか悩んで、停止している。
「ねぇ。まさかと思うけど。」
「な、何?」
「花蓮、雅のうちに住んでる?」
「・・・はぁ。もうバレたか。」
残された小さな鍋を握り、花蓮は俯いた。
「ま、マジ?そ、その?一緒に寝てんの?」
「う、うん。」
「わぁ〜。大人だ〜。」
「し、してないよ?!」
「いや、一緒に寝ててしない男は居ないでしょ?それか、雅が究極のヘタレなの?」
「いや、お泊まりの時の事話したでしょ?それが原因です。毎日苦しみながらも、疲れて眠ってる様です。」
「いやー、無理でしょ?普通無理!一晩ならともかく。」
「それが、現実に起きています。」
「ふ〜ん・・・半分信じないけど、本当だとしたら、私の目にくるいわなかったって事ね。
雅を好きになって良かったよ。」
「う、うん。私の事も、顔とか体じゃないんだって思わせてくれるよ。」
「いや〜、見せつけてくれますなー。」
「茶化さないで。」
花蓮は少し照れた様に俯いた。
ピンポーン。
「誰だろ?」
花蓮は、インターホンを見る。
「あっ、晩御飯難民が助けを求めに来たかも。」
「何、何?もう、胃袋つかんじゃった?」
「その様で。」
花蓮が、少し呆れながら玄関のドアを開けると、項垂れた様子で雅が立っていた。
「花蓮、お腹空いた。」
「はいはい。今から作る所だけど、上がって。」
「よっ!」
妃鞠は陽気に挨拶する。
「よっ!じゃねーよ。俺の花蓮を取りやがって。」
無愛想に雅は文句を言う。
「まぁそう言うなよ!花蓮とはもぅ、恋バナする中だし。」
「それは、それは。
ご飯を恵んでもらったら、邪魔者は退散しますよ〜。」
雅は力無く答えながら、床に座った。
「雅くん、来たとこで悪いんだけど、フライパンと鍋を取ってきてもらえない?調度調理器具がない事に気づいた所だったのよ。」
「うん、分かった〜。」
雅は空腹でフラフラとしながら、家に戻り、鍋とフライパンを持って来た。
「ただいま戻りましたよ〜。
早く、早く何かを!」
「はぃはぃ。ありがとう。
座ってて〜。」
花蓮はご機嫌で料理を始める。
「えっ!花蓮?」
「何?」
雅は、ふと気づいた様にキッチンの花蓮を見た。
「今、普通に鍋取りに行ったけど、妃鞠は全部知ってんのか?」
「うん。バレた。」
「そう。」
「そうだよ〜!雅のちょっと恥ずかしい話もしっかり問いただして、調査済みよ〜。」
「まぁ、いいよ。花蓮が話してもいいと思える友達ができたって事だろ〜?」
「う、うん。」
花蓮は以外だと思いながらも、嬉しそうだ。
「・・・怒られると思ったよ。」
「怒らね〜よ。
まぁ、照れくさいけど。」
「ありがとう。」
「あの〜、私もいるんですけど〜。」
「知ってるけど?」
「何?私を気にもしないで、いちゃつくのやめてもらえます〜?」
少し不機嫌そうに妃鞠は言う。
「別に普通に話してただけだろ?」
雅は少し照れた様に言う。
「普通に話しててイチャイチャなのね?あ〜羨ましぃ〜。」
妃鞠は、照れた雅を茶化す。
「で?お前はどうなんだ?」
「な、何が?」
雅からの、意味深な質問に、妃鞠は身構える。
「いや、今日もそうだけどさ、お前、涼の事好きなのに、俺にデートがどうとか言うなよ。」
「な、何故それを?!」
妃鞠は、焦っている。
「いや、見てたら分かるわ。
前まで俺にしつこかったのに、俺を餌に、涼に近づいてるのバレバレ。」
「ゔっ。あんた鈍感バカだと思ってたら中々やるわね。」
「・・・気持ちに答えられなかった分さ、涼との事は応援してる。
あいつ、面白おかしく誰が可愛いとか、今日告白してくるわ!とか前まで言ってたのに、今回は本気なんだと思う。
お前の事、何も言ってくれないからさ。
多分、本当にダメだった時に、落ち込むと思って、気を遣わせない様に言わないんだと思う。
まぁ、どっちに転んだって、俺は涼の親友なんだから、言って欲しいんだけどな。」
「そ、そう。ありがとう。」
「まぁ、協力できる事があれば協力する。」
「うん・・・頼む!」
妃鞠は照れるのを隠す様に、陽気に答えた。
「作戦会議は終わったみたいね。
さっ、できたよ〜。」
「おぉ!今日はカレーか!」
待ちわびた晩御飯に雅はがっつく。
「うまい!花蓮のご飯はうまいな〜。」
幸せそうに雅はカレーをたいらげた。
「あ〜。満足だ〜。」
雅は幸せそうに、だらける。
「はい、食べたなら帰った!」
妃鞠は、雅を邪魔者の様に扱う。
「ひどいな〜。
まぁ、女同士、話したい事もあるんだよな〜?分かったよ〜。」
「ごめんね。」
花蓮が申し訳無さそうにする。
ピンポーン。
「えっ?誰だろ?もう来客の可能性のある人なんて・・・まさか!?」
花蓮は、焦った様に立ち上がりインターホンを見る。
「お母さん!」
「えっ?」
「わぉ!」
焦る雅を見て、妃鞠は嬉しそうな顔をしている。
「ど、どうしよ雅くん?」
「・・・覚悟を決めた。謝罪する。」
「あはははっ!なんで謝罪?やましい事はしてないんでしょ?」
「い、いや。少しだけ。」
「真面目か!」
突っ込みを入れる花蓮を見て、妃鞠は興奮している。
「何?それ聞いてない!雅!言え!」
「今じゃないから〜!」
花蓮は必死になっている。
「いや、胸を少々。」
「バカなの?」
3人が騒いでいると、気づけば花蓮の母が立っていた。
「もぅ、早く開けてくれないから、入って来ちゃった。」
花蓮の母の手には合鍵が握られている。
「お母さん!」
「はぃ、お母さんよ。じゃぁ、まずはそこの男の子の名前と謝罪から聞かせてもらいましょうか?」
シーン。
花蓮の母が、そう言いながら座ると、場の空気は張りつめた。




