16.すぐにバレました。
部活のリフレッシュ期間の終了と共に新学期が始まった。
雅は、朝練を終え、階段を走っていた。
「ハァハァハァ。」
ガラガラ。
「どうしたの?そんなに息を切らして。」
「相変わらず早いな。」
「うん。事情があってね。
さっきまで一緒にいたのに、もう会いたくなったの?」
「悪いかよ。」
「嬉しいよ。毎日、いつでも、ずっと、一緒にいたい。」
「俺も。バスケは楽しいけど、ふとした時に花蓮の事考えてしまう。」
「バスケの時は集中しないと、また怪我しますよ?」
「そうだな。気をつける。」
二人は、お互いの席に座り、見つめ合って話している。
「やっぱり、そう言う事かよ〜。」
涼が教室の外から覗いている。
「入ってよろしいでしょうか?」
涼は、敬礼ポーズを決める。
「・・・好きにすれば?」
少し照れた様に、雅は言う。
涼は、雅の前の自分の席にカバンを置いた。
「特進は、クラス替えないのは寂しいと思ってたが、お二人さんは楽しそうで。」
ブツブツいいながら、涼は席に座る。
「なぁ。」
涼は、黒板を見たまま呟く。
「何だよ?」
「余計な詮索はしないでおこうと、こうして俺は黒板と睨みあってる訳だか。」
「・・・で?」
「俺達って何でも話す仲の、いわば親友だよな?」
涼は、雅に背を向けているが、不満オーラをまとっている。
「分かったよ。」
了解を取るように、雅が花蓮を見ると、少し笑いながら、花蓮は頷いた。
「休みの間に付き合う事になった。」
「・・・羨ましい。」
「ま、まぁ。幸せだ。」
「ふざけんな。ふざけんなー!」
涼は、叫びながら振り向いた。
「俺は去年、3度告白して3度振られた!なんで、恋なんて分かりませ〜ん、って言ってたお前に彼女ができてんだよー!」
涼は、涙交じりに訴える。
「色々あったんだよ。」
雅は、一緒に住んでいる事や、泊まり旅行の事は伏せて、経緯を説明する。
「そう。そうかよ。消しゴムって・・・恋愛小説かよ!
池下はこいつのどこがいいんだよ?」
「う〜ん。一生懸命な所?
後は、以外と真面目とか?」
「俺だって同じ様なものだ。
なのに、なのに。
結局、顔だろ?」
涼は不満気に問いただしてくる。
「まぁ、顔は確かにいいね〜。
でもそこは変態と言う部分がかき消してしまうな〜。」
ガラッ。
「なっ!まさかお前ら、もうそんな事を?」
涼は、驚きの余り、椅子ごと一歩下がる。
「違う、違う。
なんか、枕の匂い嗅がれたりとか?」
「う、羨ましい!」
「あぁ、同じ種族の方でしたか。」
花蓮は、呆れた様に涼を見る。
「あんまり変な事言うなよ。」
雅は、頭を抱える。
「まぁ、それはそうとだ、池下って普通に話せたんだな。」
「わざと話してなかっただけなので。」
「なんで?」
不思議そうに涼は顎に手を当てる。
「色々あるのよ。」
「・・・色々ねー。
まあ、それはいいや。
なんでじゃあ、俺と話してくれてんの?」
「雅くんの親友だから?」
「み!雅くん!・・・雅くん・・・。」
涼は、二人が名前で呼びあっている事に気づき、さらに落ち込んだ。
「なぁー、池下、俺にも彼女作ってくれよ〜。」
「残念ながら、ご存知の通り、私にはお友達がいませんので。」
「だよな〜。」
涼は、椅子から尻を浮かし、花蓮に近づくと、まじまじと花蓮の顔をみる。
「な、何?」
「これは・・・掘り出し物だったのか!」
「おぃ、近すぎだ。」
雅は、少し不機嫌そうに涼の首根っこを掴み、席に戻した。
「雅!お前はこの美貌にいち早く気づき、求愛したのだな!」
涼は興奮した様子で雅の両肩に手を当てている。
「何がだよ。」
「池下、そのメガネ取ってくれよ!」
「無理。」
「涼、花蓮は、メガネを取りたくない理由があって、俺も花蓮の顔をちゃんと見た事ないんだよ。」
「な、なんだそれ。じゃぁ無理強いはできんな・・・だが、メガネと、地味な髪型で気づかなくなったが、肌は透き通る様に白く、メガネで隠れた部分以外は、整った顔立ち、そして、長く美しい黒髪・・・間違いない!池下は美人だ!
良かったな〜雅!
俺も美人な彼女欲しいな〜。」
「分かった、分かった。」
「ふふっ。ごめんね。二人の前では、いつかこのメガネ取れるといいな。」
少し嬉しそうに、花蓮は俯いた。
「おはよ〜!」
「よっ!」
しばらくすると、他のクラスメイト達も続々と登校してくる。
雅の周りは、休み前と同じ様に、クラスメイト達で賑わう。
花蓮は、知らぬフリで読書をしている。
「ね〜雅、そろそろデートしてよ。」
雅にデートの誘いをしているのは、植村妃鞠。
雅には、去年告白してふられている。
気にしないフリをして、隣りで読書をしていた花蓮は、ビクッと反応した。
「妃鞠、悪いけど、俺、彼女できたから。」
「・・・またまた〜。」
妃鞠は、自分を交わすのに、嘘を言っているのだろうと、疑いの目を向ける。
「・・・。」
「はぁー!ふざけんな!俺っ、好きとか分からん、とか言って振ったのつい2ヶ月前よね?」
妃鞠は怒り狂っている。
妃鞠の容姿は美しい。
学年四天王とか、密かに言われている。
が、雅は、興味がなかった。
「そうだな、つい1ヶ月程前から、俺の恋は始まったからな。」
・・・なんだかこっちが恥ずかしい。
私、隣りにいるのですが〜?
まぁ、でも、ちゃんと言うんだ。
ちょっとうれしい。
花蓮は、本に顔を近づけて、顔を隠す。
「知らんわー!あームカつく!
もういい!」
妃鞠は、雅を睨むと、そっぽを向いた。
「で?」
「何?」
「その、雅を射止めた彼女さんは誰?」
花蓮は焦って雅の方を見た。
「・・・。」
雅が、言って良いものかと、花蓮に視線を送ると、花蓮は小刻みに首を横に振る。
「それは言えません!」
雅は、笑顔で誤魔化そうとする。
「はは〜ん。あんた達、バレバレなんですけど?池下さんね〜。」
妃鞠は、花蓮に顔を近づけて、凝視している。
「い、いや。」
雅は焦って誤魔化そうとするが、妃鞠は無視して、花蓮の方を優しく叩く。
「さぁ、何があったかのか教えてもらいましょうか〜?」
妃鞠は、花蓮を問い詰める様に、顔を見つめる。
「ば、バレたなら仕方ないね。
私が、雅くんの彼女です。」
妃鞠の真っ直ぐな視線に、花蓮は対抗する様に見つめ返す。
「はぁーー!!!」
そんな訳ない、何を言ってる妃鞠。
とばかりに、笑っていた周りのクラスメイトたちは、花蓮の発言で、発狂する。
クラスメイト達は、雅と、花蓮の周りを囲む様に集まる。
「はぁ、流石は雅ね。
池下さんなら仕方ないわ〜。
私、池下さんがメガネ外してるの見た事あるのよ。間違いなく学校一美人だわ。」
「えっ?いや、そんな事は。」
宣戦布告でもされるのかと思っていた花蓮は、あっけにとられながら、焦っている。
「池下さん。」
「何?」
「心配しないで。私、流石に人の幸せを潰そうと思う様な、女じゃないから。」
「・・・ごめん。以外だった。」
「あはははっ!池下さんって以外と素直なのね?話すと面白ろそう!」
「わ、私は・・・。」
花蓮は、雅に助けを求める様に視線を送る。
「だー、めー。私の興味は、もう雅から池下さんに移ったの。とりあえず、花蓮って呼ぶね〜。あと、私は妃鞠。
妃鞠でお願い。」
「う、うん。」
花蓮は仕方なさそうに頷いた。
側付く周りを気にせず、妃鞠は花蓮にグイグイ迫る。
ガラガラ。
「おーぃ!何してる!早く座れー!」
先生が入ってきたのを見て、花蓮は安堵の表情を浮かべる。
「ちっ。花蓮、助かった〜とか思ったでしょ?甘いからね〜。」
仕方無さそうに、妃鞠は自分の席へと、向かった。
この日、一瞬にして、二人の関係は学年中を飛び回った。




