表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/17

12.逆に部屋が広いから仕方ない。

ソファーにぐったりと座る雅のとなりで、花蓮は温かいお茶を飲みながら、くつろいでいる。


「なぁ、そろそろ眠い。」


「あら、こんな薄着のレディーが隣りにいるのに、眠くなるものなのね。」


「そう言う事は言わないでくれよ。

考えない様にしてんだから。」


「触りたい?」


「・・・。」


「無視かよ。」


「寝るからベッドにいけ。」


「ちぇー。わかりました〜。」

不満気に、花蓮はベッドに寝転がった。

目を閉じると、ホラー映画の映像が鮮明に思い出される。

「・・・ダメだ。怖い。」


カチカチカチカチ。

無音の空間に鳴り響く時計の音が恐怖をあおる。


「あー!無理ー!」

ベッドで体を起こしながら花蓮は叫んだ。

驚いた雅は、ソファーの向こうから顔を出している。

「どうした?!」


「怖いんだよ〜。佐藤君が遠い。

なんでこんなに広いんだよ〜。」


「ここにいるから、大丈夫だ。

非科学的な存在はいないんじゃなかったのか?」


「・・・考えが変わりました。

奴らは多分、いる。」


「ははっ、あはははっ!

やっぱり池下面白いな。」


「笑い事じゃないんだよ〜。

・・・ここ、来て。」

花蓮は、ベッドの自分のとなり辺りをトントンと叩く。


「・・・やっぱりそうなるんだな。」


「やっぱり?」


「多少の覚悟と期待はしていた。」


「・・・何もしちゃだめだよ?」


「・・・。」


「おぃ。」


「善処する。」

雅は、不満気に言うとソファーから起き上がり、花蓮のとなりに寝ころんだ。

二人は、背中を向けて目をつむる。

「おやすみなさい。」


「うん、おやすみ。」


カチカチカチカチ。

「時計の音が怖い。」


「これ以上はどうしようも無いだろ?

頑張って寝ろ。」


ガサガサ。

「おっ、おい!池下!」

「お〜、これなら何とか寝られそうだ。」

花蓮は、何やらガサガサと動いた後、雅に背中から抱きついた。

「お、俺が寝れんわ!」


「メガネ取ったから、こっち見ないでよ?」


「人の話聞いてるか?」


「なんで?落ち着かない?」


「落ち着くか!当たってるんだよ。」


「うん。当ててるからね〜。」


「はぁ。早く寝ろ。」

雅は、諦めた様にため息をつく。


「私が寝たからってソファー言っちゃ嫌だからね。」


「分かった。」

ホラー映画見せるんじゃなかったー!

これは、嬉しいが、辛い。辛すぎる!

待て、これが数日続く場合、俺は・・・人間って何日寝ないと死ぬのかな?

まぁ、いいか。

明日のことは明日考えよう。


雅は、必死に目を閉じ、煩悩を断ち切ろうとした。


・・・眠れるわけない。

下半身さんがついに反応してしまった。

気づかれない様にしないと。

幻滅されるかも。


「佐藤君。」

雅が眠れずにいるのに気付いている花蓮は、話しかけた。


「はい!」 


「ふふっ。」


「な、何で笑うんだよ。」


「分かってるから、大丈夫。

私がわがまま言ってるんだから、別に幻滅したりしないよ。」


「・・・心を詠んだのか?」


「そんな能力はありません。

ちょっと話そう?」


「え?うん。」


「佐藤君は、なんでそんなにバスケが好きなの?」


「何でか・・・バスケが俺を救ってくれたから?かな。」


「どんなふうに?」


「小学生になった時からかな。

父さんは産まれた時からだけど、母さんも、仕事に本格的に復帰してさ、俺はずっとひとりぼっちだった。

だんだん卑屈になってさ、友達付き合いもしなくなった。」


「寂しかったんだね。」


「すごく。何でも欲しいものは買ってくれたし、家政婦さんが世話してくれたから、何の支障もなかったけど、俺は貧乏でも父さんと母さんと毎日笑って過ごしたかった。」


「うん。貧乏にならないと分からない事は沢山あると思うけど、その気持ち、分かるよ。」

雅を抱きしめている腕に、花蓮は少し力を込めた。

雅は、花蓮の手を握る。

「で、三年生の時に一人寂しく公園を散歩してたんだけど、そこで、少し年上の兄ちゃんが、バスケしてたんだ。

すごく楽しそうでさ、カッコ良く見えた。羨ましそうに見てたら、一緒にやるか?って言ってくれて、それから一年間一緒にバスケしたんだ。」


「楽しかったんだね。」


「うん。楽しかった。

でも、兄ちゃん達は、中学生になって部活が始まって、公園に来なくなった。

でも、一番良くしてくれた兄ちゃんがさ、最後に公園に来た日に、自分のボールをくれたんだ。

また一人になったのは寂しかったけど、バスケをしてる時は、寂しいのを忘れられた。

だから、毎日、毎日、ボールがボロボロになるまで一人でバスケしたんだ。

ボールがボロボロになったら、何個でも買ってくれたし、有難い話だけど、寂しかったよ。

でも、中学生になって、仲間ができて、一緒にバスケをする様になったら、毎日が楽しくて、寂しさなんて吹き飛んだ。

だからバスケが大好きになったんだ。」


「そっか。佐藤君がバスケに出会えて良かった。

あの棚の上のボール、もしかしてそのお兄さんにもらったボール?」


「そう。もう使えないけど、宝物なんだ。」


「素敵。」


「あぁ。」


「スー。スー。スー。」


「寝た?」

・・・寝たな。

あ〜、長い夜になりそうだ。


雅は、棚の上のバスケットボールを見て笑顔になった。

来週からまたがんばろう。

「池下、ありがとな。大事な気持ちを思い出したよ。」

雅は小さく呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ