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消しゴムを貸しただけで。  作者: 蓮太郎


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1/12

1.動き出した歯車。


キーンコーンカーンコーン。

ガラガラ。


「おはよう!席につけー!教科書しまえー!」


チャイムと共に教室に入ってきた、担任の先生が手にもつのは、期末試験の問題と回答用紙だ。


俺は祈る様に目を閉じると、教科書をしまう。

机の上には筆箱だけがおかれている。


あぁ、吐きそう。



この男、高校1年の佐藤さとう みやび

高身長で、イケメン。

性格も良く、クラスの中心であるのに加え、1年生にしてバスケ部のエースではあるが、唯一の欠点が。


俺は勉強が大嫌いだー!

こ、この試験で赤点を取れば、進級のための補習が待っている。

大好きなバスケができないばかりか、冬休みにある試合にも出られない。

そう、補習と試合が重なるからだ。


だから・・・そう。

俺は今、吐きそうな程のストレスを感じている。


雅は、頭を抱える。


「おぃ、お〜ぃ、雅!プリント、後ろに回せ〜。」


「おぉ、すまん。絶望に襲われていて気付かなかった。」


「大丈夫かよ。。。」


はぁ。


雅はため息混じりにプリントを1枚取り、後ろに回す。


「よーし!全員回ったな?

では、試験を始める。」


ガサ。


裏返されていた問題用紙が一斉に表に返される音が、教室に響いた。


「やるしかない。」

雅は小さく呟くと、シャーペンを手に取り、回答を進める。


「あっ、間違えた。」

書き間違えを消そうと、筆箱をあさる雅の顔は青白く変化していく。

血の気が引くとはこの事だ。


け!消しゴムがねーーー!!!

筆箱をガサガサとあさり、もう、絶対に無いと分かっている消しゴムを探す。


こ、この問題は、解けた。

しかも自信がある。

何としても消しゴムが!消しゴムが必要なんだ!

あー!神様!消しゴム天井から落ちてくるとか、奇跡を下さい!


「はい。」


「?」

雅は、小さい声のした方に視線を写した。


「忘れたんでしょ?私、2つあるから。」


そこには、天使?では無く、牛乳瓶の底を両目に付けた様なメガネをかけた女子が、こちらを見ないで消しゴムを差し出している。


「あ、ありがとう。」

雅は、素直に消しゴムを受け取った。

「あ、あのさ。」


「試験中。」

女は、無愛想に雅に黙る様に促す。


なんだよ。

確か、池下いけした 花蓮かれん、だったよな?

一年間席隣りだったけど、話した事もない俺になんで貸してくれたんだろ?

いかん!いかん!

今は集中!!


雅は、念願の消しゴムで、書き間違えた回答を消し、書き換えた。



キーンコーンカーンコーン。

「試験終了だー!答案用紙を後ろから回してくれー。」


「やっと終わったー!恐らく赤点は免れた自信がある!」


「ほんとかよ。頼むぜエース!」


「グハッ。」


雅が一人叫ぶと、前の席の杉下すぎした りょうが、雅の背中を叩く。

涼は同じバスケ部。

普段から仲がいい。


「涼!力加減!いつもいってんだろ〜。」


「あ〜、すまん、すまん。

雅、部活行こうぜ!」


「あ、先に行っててくれ。」


「ん?」

涼は不思議そうにする。


「いいから!」

雅は、カバンを持った涼の背中を押す。


「はい、はい、分かったよ。」


試験の解放感からか、生徒達は教室を足早に出ていき、教室はあっと言う間に雅と花蓮だけになった。


「池下、消しゴムありがとう。助かったわ。」

雅は、花蓮に消しゴムを差し出す。


「えぇ。」

花蓮は、雅の顔も見ずに短く答えて消しゴムを受け取る。


「なぁ。池下。」


「な、何?」

花蓮は変わらず目を合わせない。


「何で消しゴム貸してくれたんだ?

俺達、話した事も無いよな?」


「あ、あるし!」

花蓮は、顔を少し赤くして俯きながら立ち上がると、カバンを持って逃げるように走り出した。


「お、おぃ!池下!」


雅の呼びかけも虚しく、花蓮は走り去ってしまった。


「話した事・・・ある?って言った?

・・・無い、無くないか?」


と、言うかもう少し愛想良くできないもんかね。

い、いや!池下は俺を救ってくれた救世主様!女神様だ!

感謝せねばな。

でも、良く分からない所が気になる。

・・・もう少し話したかった。

明日、話しかけてみよう!

あっ!部活!部活ー!


雅は、胸のざわめきを気にしながらも、体育館へと向かった。


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