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角だけ魔族の太郎さん〜人材育成から始める魔王軍マネジメント〜  作者: 山田太郎
第一章 「柔角族現る」
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1-4 柔角族の精査

 静まり返った《精査の間》に、魔族たちの視線が集まる。

 石台の上で、俺は妙に背筋を伸ばしてしまっていた。


(なんだろう……会社の健康診断より緊張する……)


 ミラが手に持った石板を軽く叩いた。


「では、まず簡単な質問からいきますね。

 太郎さん、体調に問題はありませんか?」


「い、いえ……特には……」


「ふむ。声の揺れなし、言葉の選択も慎重。記録します。」


(ただ緊張してるだけなんだけど……)





 ゾルダが穏やかに前へ出る。


「次に、柔角族特有の反応を見るため、いくつか感情について伺います。

 難しいものではありません。安心してください。」


「はぁ……」


「最近、怒ったのはいつですか?」


(怒った? なんでそんな質問……?)


「えっと……同僚が、資料を渡し忘れたとき……ですかね……」


 正直に答えると、ゾルダが目を細めた。


「怒りではなく“困惑の表現”……柔角族らしい反応ですね。」


「いや、普通に困っただけで……」


「困るというのは、感情を制御している証。

 怒るよりも、状況を整理しようとする傾向が強い。」


(そんな深い意味ないよ!?)


 背後でラグナが感心したように腕を組む。


「落ち着きあるな。

 普通の魔族なら“渡し忘れ”が続けば殴ってでも持ってこさせるぞ。」


「よくありませんよ、それは……!」


 つい反射的に声が上ずった。

 案の定、角が“ぴょん”と揺れた。


「……見たか?」

「誠実な反応だ。」


(頼むから揺れるな!!)





 ミラが続ける。


「では次に、“嘘をつく際の反応”を確認します。

 太郎さん、何でもいいので……嘘をついてみてください。」


「えっ……」


(嘘……?)


 急に言われても、何をどうつけばいいのか分からない。


「た、例えば……そうですね……

 今日、雨が降っていました……とか……」


 控えめに言うと、

 ミラは一度沈黙し――


「……嘘が下手ですね。」


「えっ!?」


「声の間、語尾の甘さ、目の泳ぎ。

 柔角族が嘘を苦手とするという文献そのままです。」


(いや俺、昔から嘘つくの苦手なだけ……!)


 ラグナが笑う。


「太郎は嘘がつけねぇタイプだな。気に入った。」


「そ、そういうのじゃなくて……」


「角の揺れを見ろ。ごまかそうとした瞬間に反応した。」


(揺れてないときも揺れてるぞ俺の角……!)





 ゾルダがさらに質問を重ねる。


「では最後に……

 “自分が間違っていたときの対応”をお聞きします。」


(面接かな?これは面接なのかな?)


「えっと……間違いを指摘されたら、

 まず謝って……原因を確認して……ですね……」


「即時の謝罪、原因の把握。

 柔角族の典型的な特徴です。」


「え……?」


「柔角族は“争わず、まず事実を整える”と伝わっています。

 今の答えは非常に理にかなっています。」


(いや会社で普通にやってただけなんだけど!?)





 ミラが静かに石板を閉じた。


「では、精査は以上です。」


「え、終わり……?」


「はい。結果として……」


 ミラがこちらを見直す。


「太郎さんは、柔角族として

 非常に穏当で、誠実性が高く、協調的 だと判断されます。」


(いや本当に……普通の会社員の返答なんだけど……)


 ラグナが満足げに頷き、


「これから魔族本部での生活について説明する。

 太郎、お前は“保護対象”だ。変に怯えなくていい。」


 ゾルダも穏やかに微笑む。


「何かあれば、すぐ私に相談してください。

 柔角族の健康管理についての記録もしたいので。」


(相談って言われても……俺どうなるの……?)


 三人が思いのほか好意的で、

むしろ太郎の混乱だけが増していく。





「では、太郎さん。」


ミラが扉の方へ手を差し向けた。


「次は“居住区の案内”です。」


(いきなり生活の話!?

 俺……戻れないのか……?)


 太郎は、角がまた“ぴょん”と動いたのを感じながら、

静かに歩き出した。

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