1-3 精査の間
重厚な扉が開くと、静かな部屋が広がっていた。
中央に丸い石台、その周囲には古い文様が刻まれている。
拷問室というより“儀式の診察室”といった雰囲気だ。
(……もっと怖い場所を想像してたんだけどな)
隣の女性の魔族が一歩前に出て、改まった仕草で頭を下げた。
「ここから少し正式な手順になりますので、改めて名乗っておきますね。
私は ミラ・エルノート。魔族本部の記録官です。」
「き、記録官……」
「はい。事実の収集と整理が仕事です。
柔角族であるあなたの情報も、丁寧に扱います。」
(扱われるって言われると緊張するな……)
すると、部屋の奥で腕を組んでいた屈強な魔族が歩み出た。
「俺は ラグナ・バルド、魔族軍の警備隊長だ。
お前をここまで連れてきたのは俺の部隊だ。」
「あ、どうも……」
「怖がらなくていい。変な真似をしない限り、害はねぇ。」
(“変な真似”の基準が分からないのが怖いんだけど……)
さらに、静かに杖をついた魔族が前へ進む。
「私は ゾルダ・クレスト。魔族軍医です。
柔角族の方を見るのは久しぶりでしてね。」
「ぐ、軍医さん……」
「太郎さんの身体には触れませんよ。
角の反応、言葉の様子、魔力の流れ……
その程度を確認するだけです。」
(魔力の流れ? 俺にあるのか……?)
「それでは、太郎さん。」
ミラが石台を示した。
「こちらに立ってください。
いくつか質問しますが、気楽に答えていただければ大丈夫です。」
「えっと……はい、こうですか……?」
石台に乗った瞬間、例のカチューシャが“ぴょん”と揺れた。
ミラが淡々と記録する。
「……落ち着いた状態でも、微細な反応が出るんですね。」
(揺れただけなのに……!)
ラグナが腕を組む。
「よし、精査を始めよう。
太郎、怖がらなくてもいい。すぐ終わる。」
「そ、そうですか……」
ゾルダも静かにうなずく。
「えぇ、心配はいりません。
あなたの誠実さを確認するだけです。」
(誠実さって……会社で普通にしてただけなんだけど……)
三人の視線が集まり、
太郎は喉を鳴らして息を整えた。
「……わ、分かりました。お願いします。」
こうして、
柔角族“とされている”太郎の精査が静かに始まった。




