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角だけ魔族の太郎さん〜人材育成から始める魔王軍マネジメント〜  作者: 山田太郎
第一章 「柔角族現る」
2/74

1-1 連行

「歩けるか、太郎。」


腕をつかまれたまま歩かされながら、俺は現実感のない景色をぼんやりと眺めていた。


さっきまで、普通にハロウィンの帰り道だったはずだ。

今は見知らぬ石畳に、古い塔の影。

街灯も車もない。


(……夢じゃないよな?)


「えっと……どこに連れていくんでしょうか?」


思わず丁寧に聞いてしまう。

会社でも目上の人間にこういう話し方をする癖が抜けない。


「本部だ。」


「本部……?」


聞いたところで意味は分からないが、

どうにも“よくないところ”な気がする。


隣を歩く落ち着いた声の女性らしき魔族が口を開いた。


「太郎さん。

 あなたは柔角族として保護されます。安心してください。」


「柔角族……?」


「はい。角がその証拠です。」


(いやこれ、ハロウィンのカチューシャなんだけど……

 なんで外れないんだ……)


頭の“悪魔角カチューシャ”は、

気味が悪いくらいしっかり張り付いていて、先ほどから何度触っても外れなかった。


(汗でくっつくとか……絶対そんな構造じゃないだろ……)


触るのすら怖くなってきた。





歩きながら女性の魔族が続ける。


「柔角族は誠実で、争いを好まない種族と伝わっています。

 太郎さんからは、嘘をつくような気配がありません。」


「は、はぁ……」


(いや……普通に会社で生きてただけなんだけど……)


そのとき、カチューシャが“ぴょん”と揺れた。


歩いた反動なのだが、魔族たちは敏感に反応する。


「……今の揺れ、確認できたか。」

「誠実さの証だ。」


(いやただ揺れただけ……頼むから過剰解釈しないでくれ……)


太郎は困惑しているだけで、

余計なことを言わず、丁寧で、礼儀正しい。

その“会社員的な性格”が魔族には“誠実”に映っている。





やがて女性の魔族が言う。


「太郎さん、角に触れないように注意してください。

 魔族にとって角は大切な部位です。粗末に扱うのは禁忌です。」


「は、はい……気をつけます……」


(こんな安物なのに……扱いが重すぎる……)


本当はズレてきているのを直したいが、

怒られたのが怖くて触れない。




後ろから屈強そうな男の魔族が笑った。


「太郎、落ち着いてんな。

 状況わかんなくても声荒げねぇし。」


「いや……ただ混乱してるだけで……」


控えめに答えた瞬間、また揺れた。


「ほら見ろ。」

「素直なやつだ。」


(……会話のタイミングで揺れるの、ほんとやめて……!)


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