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男装令嬢、婚約破棄したってよ  作者: こんぺいとう
第二章 男装令嬢と学園生活
9/9

男装令嬢と適性審査 〈1〉

お久しぶりです。

また二人新キャラが出ます。

楽しんでいただければ幸いです。

放送に呼ばれたわたくしたち新一年生は、広間にずらりと並んでおりました。

わたくしはまたもや、四方八方男子状態です。

緊張しますが……たぶんこれからもこの状況になることはあるでしょうし、流石に慣れないとですよね……。

できる気がしませんよっ。


わたくしがこれからのことに思いを馳せていると、誰かが広間に入ってきました。

ピンクのカーディガンを制服のワンピースの上に羽織った女性と、きっちりかっちり制服を着こなした男性です。

ざわざわとしていた広間が、一気に静まり返ります。


前に立ったお二人は目配せしあっていましたが、先に口を開いたのは女性の方でした。

「やっほー。一応総寮長の、ライカ・サーレントでーす。新一年生たち、よろしくねー」

「副寮長の、イース・ローランドだ。あ、総寮長に連絡があるときは、まずこちらによろしく」

あらまぁ、なんと対照的なお二人で。

わたくしは前に立つ二人を見比べ、そう思いました。


ライカさんは、なんだかゆるい方、というのが第一印象です。

話し方もさることながら、見た目もゆるふわな感じがいたします。

ふんわりとしたカールのベージュの髪の毛を耳のしたで一本結びにし、結び目には白く細いリボンを結んでおります。

垂れ目な顔つきや猫のような口元も、優しげな感じです。


副寮長のイースさんは逆にきっちりとした方、といった印象です。

男子寮の寮長でもあるので、わたくしたちにとっては寮長でもありますね(この学園は毎回男女一人ずつそれぞれの寮長を選び、どちらかが総寮長も務めるのだそうです)。

黒縁のメガネに、ストレートの黒髪。

シャツは第一ボタンまで留め、ネクタイは緩みも隙もなく締められています。

と同時に、疲れた顔をしていらっしゃるのがかなり気になりますね。

いやちょっと……大丈夫でしょうか?

ここは男子寮に住むわたくしたちが、迷惑をかけないようにしなければ!

胸のうちでひそかに決意を固め、わたくしはウンウンと頷きました(となりのレインさんに若干ながら引かれました、辛いです)。


ライカさんはパン、と手を叩いて注目を集め、再び口を開きました。

「じゃ、校内案内、行ってみよー」 



結論から言いますと、カロライナ学園の敷地はとても広く、覚えきれないほどでした。

「ここが音楽室ー」

「ここは実験室ー」

「あ、ここは温室ねー」

などといった調子のライカさんのゆるっゆるな紹介に合わせ、イースさんがため息をつきつつ説明を加えてくださるのですが、到底覚えられません!

前を歩いていたケイさんも何度も首をひねり、隣を行くユリイさんに質問していました(ユリイさんは逐一イースさんの説明を丁寧に繰り返してあげていました)。


教室や施設が沢山あり、それぞれも大きく広いのですから、敷地はそれはもう驚くほどの広さです。

ライカさんによると、敷地内に森まであるのだとか。

驚きですね!

迷ってしまいそうです……!

敷地に比べ生徒数はさほど多くなく、一学年四十から六十程度だそうですが。

私たちの学年はイレギュラーで、百を超えているそうです。

なんでよりによってわたくしが入学する年が人数が多いのでしょうか……!?

どうせなら少ない方が人見知りには嬉しいですよ!


……あ、話を戻しますね。

敷地が広い他にも、施設がやたらとファンタジックなことも印象的でした。

「ユニコーン小屋」や「魔術実験室」、「闘技場」なんてものまで!

今から授業が楽しみで楽しみで仕方ありません!

わたくしは目の前の教室を窓から興味しんしんでのぞき込みました。


「あ、ちょっと急ぐよー」

ライカさんのゆるい掛け声がした直後、集団が小走りになりました。

あ、まずいです!

このままでは置いていかれてしまいます!

わたくしは慌てて窓から離れ、置いていかれまいと走り出しました。 


◇ 


一通り見学を終え広間に戻ってきたわたくしたちは、再び整列しておりました。

さっき見たものの興奮と、明日からの授業への期待で、広間はにわかにざわめいています。


しばらくした頃、ライカさんは「新一年生諸君ー」と声を上げ、注目を集めました。

広間いっぱいの話し声が、一気になくなります。

ライカさんはゆるーい笑みを浮かべ、言いました。


「じゃあ、『適性審査』いくよー」


はて。

適性審査とは。

わたくしは頭のうえにはてなマークを浮かべ、首を傾げました。

わたくしがわかっていないだけかと思いきや、ユリイさんも不思議そうな顔でしたので、多少魔法に馴染みのある方でも聞き覚えのない言葉なようです。


わたくしたちの困惑を感じ取ったのか、イースさんがライカさんの脇腹を肘でつつきました。

「おいっ、説明しないと……」

イースさんの非難の視線とわたくしたちの疑問を一身に受け、ライカさんは「しょーがないなー」といった調子で再度口を開きました。


「んーとね、まず魔法は皆知ってるよね?その魔法は大きく分けて、『基礎』と『特化』があるんだよねぇ。『基礎』はその名の通りだよ〜。浮くだとか、ものを飛ばすだとか、召喚とかねぇ。『特化』は……」

ライカさんは一度言葉をきり、パチン、と指を鳴らしました。

瞬間。

ライカさんの指のあたりから白い電流が迸り、空気を震わせました。

今の、ライカさんがやったのでしょうか……!?

これが所謂、魔法ですよね!?

わたくしは興奮と驚きで口を半端な形に開いたまま、しばらく動けませんでした。

あっけにとられるわたくしたちを見回して、ライカさんはニコリと笑います。

「……ま、簡単に言うと、こういうやつだねぇ。今の魔法は、私の魔力と、雷の精霊神の魔力を同期させて、ちょっと力を借りた魔法。ほら、魔力が一番流れてるのは自然界でしょ〜?その自然界の魔力と、自分の魔力をリンクさせて行うのが特化魔法。……で、自然界の魔力にも何種類かあって、それぞれにそれを司る精霊神がいるんだよねぇ。その中で自分が一番同期しやすい精霊神の魔力を調べるのが、『適性審査』ってわけ」

「わかったぁ?」とゆるーく微笑むライカさん。


……えーとつまりは、複数ある精霊神の中で、自分が一番相性の良い種類を調べる、ということですかね?

いやぁ、いよいよファンタジー感が増してまいりました。

四方八方男子状態の緊張をはるかに超えるワクワクに、気分はプラマイプラスに振り切っております!

わたくしの周りの方々もどうやらそうなようで、集団はにわかにソワソワとし始めました。


イースさんはまた小さくため息をつき、ぴっと親指で廊下の奥を指し示した。

「適性審査には、俺たちはついていけない。廊下をまっすぐ進んだ突き当たりの階段を登って、三階の左に先生方がいらっしゃるから、そこまで行って指示に従うように。じゃ」

イースさんはそれだけ言って、スタスタと広間を出ていきました。

ライカさんも、ゆるーい笑みを浮かべ、ひらひらと手を振ります。

「じゃ、新一年生諸君、幸運を祈ってるよ〜。じゃあねぇ」


お二人の姿が完全に見えなくなり、集団はぱらぱらとバラけて廊下を進み始めました。

適性審査、ですかぁ……。

わたくしは何になるんでしょう。

何になっても嬉しい気はいたしますけれど。

わたくしは先ほどイースさんが仰った道順を頭の中で唱えながら、廊下へ一歩踏み出しました。

閲覧ありがとうございました。

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