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男装令嬢、婚約破棄したってよ  作者: こんぺいとう
第二章 男装令嬢と学園生活
8/9

男装令嬢と入学式と初友達(仮) 〈2〉

学校編、第二話です。

新キャラオンパレードですが、楽しんでいただけますよう。


うわぁ、これは詰みですね……!

わたくしは目の前に並んだ、これからルームメイトになる三人を見回し、らしくもなく頭の中にそんな言葉を思い浮かべました。

だって、だって!


同じ部屋に振り分けられた皆さん、見るからに陽な方々なんですもの!


陽な方って、なんだか苦手なんですよね……。

基本的に、陽な方イコール、コミュニケーションお化けなので、距離の詰め方が少し怖いんですよっ。

人見知りで引きこもりのコミュ障なわたくし(自分で言ってて虚しくなってきました)が、そんな方々と仲良くできましょうか!?

答えは否です、できるわけがありません!


しかもわたくし以外の三人は、(当然ながら)皆男子!

それに加え皆さん、揃いも揃ってイケメンたち!

イケメンって謎のオーラが出ていると言いますか、何だか近寄りがたいんですよぉ!

そんな方々と寝食を共にするなど、わたくしの心が耐えられませんっ!

幸い、三人とも不良っぽくは……ありませんけれど。

わたくしはソロリソロリとお三方に視線を向けました。

黒髪ハーフアップの中性的な方に、赤茶短髪の純粋な笑顔を浮かべた方、そして全体的に色素の薄い表情の読めない方。

あぁ、今日からわたくしは、ここで彼らと共に暮らすんですか……。

もう、今から不安しかありませんよっ!

寮の部屋に関しては、外見に見合う広さで内装も美しく、全く文句はないのですけど。


わたくしがバクバクドキドキで部屋の隅にカチコチと正座していると、黒髪の方が口を開きました。

「えーっと……親睦を深めるって言ってたけど……とりあえず、自己紹介でもする?」

「たしかになぁ」

「……ん」

「は、はいぃ……」

異論がないことを確認してから、黒髪の方は首を傾げほんの少し微笑みました。

肩につくくらいのハーフアップが、サラリと揺れます。

中性的な容姿でありつつも手などはゴツゴツしていて、やっぱり男の子、って感じがしますね。


邪魔だったのかハーフアップのおくれ毛を手で後ろに払い、黒髪の方は再度言葉を発しました。

「じゃあ、言い出しっぺの俺からいこうかな。えーと、名前はユリイ・カリエス。趣味とかは……ガーデニングとか、自然が好きかな。じゃあ、次の人」

黒髪の方、改めユリイさんはサクサクと自己紹介を済ませ、最後に水色の瞳を少し細めました。

ひぇっ、イケメンオーラで目が焼けます……!

郷里ではさぞかしおモテになっていたのでしょうねぇ。

わたくしだって、少しぐらりときましたもの。


ユリイさんは、「次だよ」と言わんばかりにふっと赤茶の方を手で差し示しました。

「時計回りでどう?あの子、すっごい緊張してるみたいだし……最後にする?」

そう言いながら、ユリイさんの視線はこちらに向きました。

わたくしは内心縮み上がりつつ、できる限り低い声で「あ、ありがとうございます……」と答えます。

苦笑したユリイさんは(こちらは必死ですのに!)、赤茶の方に自己紹介を促しました。


赤茶の方は元気いっぱい、偏見かもしれませんが、スポーツ男子といった感じです。

大きな猫目で、毛もふわふわぴょんぴょん猫っ毛といった感じ。

見た目では猫らしいですが、印象は犬っぽいですね。


その印象の通り、彼はハキハキとした明るい声で自己紹介を始めました。

「俺は、ケイ・ローレル!えーと、趣味はー……運動!見るのもやるのも!」

「よろしくな!!」と輝かんばかりの笑みを浮かべる、赤茶の方もといケイさん。

あぁ、この人が一番明るいですね……今の所。

悪い方ではなさそうですけれど……それでも、陽のオーラがすごいですよ!

ヴッ、眩しいっ!

焼け溶けてしまいますっ!!

わたくしは思わず目を細めました。


そんなわたくしの心中などいざ知らず、ケイさんはさらにニパッと笑みを深め、ミステリアスな方の方に目をやります。

「次、よろしくなー!」

軽く手を振ったケイさんに応え、ミステリアスな方はふっと前を向きました。


今までこの方、窓の外を見てばかりでしたが……ちゃんと目を見て気が付きました、瞳の色がとても綺麗です。

髪も肌も全体的に色が薄いのですけど、特に抜けたように白い肌に青紫の目が、なんとも映えますね……!

皆さんイケメンでいらっしゃいますけど、この方はイケメンというよりも美人、と言うほうが正しいかもしれません。

その方を穴が空きそうなほどに見つめていたのがバレたのか、その方はわたくしからスルリと目を逸らしました。

白に近い、薄いグレーの髪をふわりと翻し、ミステリアスな方は言葉を発しました。

「……レイン。レイン・ベリー。趣味……特に、ない。えーと、よろしく」

レインさんは訥々と言葉を紡ぎ、最後に首だけでぺこりと会釈しました。


わたくしは思わず会釈を返しつつ、自分の番が回ってきたことに心の中で大騒ぎです!

ああぁぁ、まだ心の準備がぁっ!

皆さん悪い方ではなさそうですけど、それと話せるかどうかは別なんですよ!


ですが、いつまでも彼らを持たせるわけにはいきません。

わたくしは深呼吸を一回、意を決して自己紹介を始めました。

「……へっ、ヘルドッ、エクリアナ、ですっ!えーと、あの、しゅっ、趣味は……読書とか、好きですっ!よろしくお願いしますっ」

あぁよくやりましたわたくし、本っ当に偉いです!

もうこれで帰りたい気分ですよ!


心の中で自分を褒め称えていると、ふは、と吹き出す音がしました。

何事かとそちらを見ると、なんと苦笑するユリイさんとケイさんの姿が!

ケイさんに至っては、腹まで抱えて笑い転げているではないですかっ!

ちょっとお二方、わたくしは必死でしたのにっ!


「ちょっとお二人とも、なんで笑ってるんですかっ」

「んや、ちょっと……おっかしくってなっ……」

肩を震わせるケイさんに代わって、こちらも笑い涙を浮かべているユリイさんが応じました。

「いや、さ。これから男同士、一緒に暮らすのに、やたら硬いなって……!もっとリラックスしていいんだからね?」

くつくつと笑いつつ告げられた言葉に、わたくしはなんだか釈然としない気分です。

はて、そんな事言われましても。


「敬語、癖なんですよねぇ……」

「どっかの良家の、ご令息なのか?」

わたくしがぽつりと呟いた言葉を拾い、ケイさんが興味津々で言いました。

エクリアナ、と自己紹介で言った気はするので、ご出身が遠いのでしょうね。

今更ながら、ここが我が家でなくキャロル公国であることを思い知らされますよ……!


どこかしみじみとしていると、レインさんがぽつりと言いました。

「あの、天下のエクリアナ、でしょ?……出身、多分隣国だから、知ってる」

あら、レインさんはわりと出身が近いんですね。

……というか、隣国にまでエクリアナ家って知られてるんですか?

いやいやそんなはずはないでしょう……でも、アネッサさんも隣国の方ですが、エクリアナ家のこと知ってらしましたし……。

流石に隣国ともなると一般の方は知らないでしょうし、恐らく、レインさんも相当いい家のご出身なんでしょう。


全く表情の読めないその顔をじっと見つめながら、わたくしは口を開きました。

「あ、は、はい、そのとおりです。今レインさんが仰っていたとおり、一応、エクリアナという貴族の次期当主でして……け、敬語は多分抜けないと思います。ですが、崩す努力は致します!慣れていないと、緊張してしますし、堅苦しいですもんね」

「あは、無理に抜かなくてもいいよ」

やっとこさ笑いを収めたユリイさんが、涙を拭いつつ応じます。

なんだか、結構話しやすいですね。

気をつかってくださっているのもあるとは思うんですけど、それでも根がいい人たちなんでしょうねぇ。

レインさんに関しては、まだ全く分かりませんが。


和やかな雰囲気のまま、突如ケイさんが話題を切り出しました。

「てか皆、この学校のこと何か知ってるか?俺、急に手紙来てさー。正直俺、魔法とかあんま信じてないし、キャロル公国って出身から結構遠いんだよな。だからなんか怪しーなーってちょっと思ったけど、行けるものは行っとこうかなって思って!皆は?」

「まぁ、大体同じかな。でも俺、出身がわりとキャロル公国の近くだから、魔法は信じてるほうかも。あり得ないもの目の当たりにすること、多かったからね」

「……あり得ないもの、って何?」

「そうだね……例えば、手紙で作った紙飛行機が自分で羽ばたいて飛んでいくのとか、指の一突きで、カボチャがものすごい大きさに急成長したりとか、かな?」

「そんなことあんのか!?じゃあやっぱ、魔法って本物なのか……?」

「いや流石に、単純すぎ……」

そんな三人のやりとりを微笑ましく見守っていると、「ヘルドさんは?」と自分にお鉢が回ってきました。

きゅ、急ですね……。

気を遣ってくださったのでしょうが、わたくしは皆さんのやりとりをみているだけでも満足ですよー!


そんな内心の叫びも相手には届くわけがないので、わたくしはすくみ上がりつつ答えました。

「み、皆さんと、大体一緒ですかね……本当は来たくなかったんですけど、魔法って憧れるじゃないですか。ですから来ましたっ!」

「それは同感。魔法って、なんだか少年心が刺激されるよね」

「そうですよね!」

わたくし、少年ではなく少女ですけど。

心の中のみで呟きつつ、わたくしはユリイさんに笑みを返しました。 


そんな調子でゆるゆると話し、気がつけば数十分が経っていました。

い、意外と悪くなかった、ですね!?

わたくしは少し驚きつつ、自分の人間関係の進展に内心小躍りです。

すっかり普通に話せるようになりましたし、皆さん本当にいい方です。

初めましての際はどうなることかとヒヤヒヤでしたけれど、この方々が同室で、今は嬉しいくらいです。

ラッキーでしたね、かなり!

彼らとこれから数年、一緒に暮らすんですもの。


と、部屋に備え付けられたスピーカーが、ありきたりなチャイムと共に放送を流し始めました。

『えー、寮長から連絡でーす。皆さん初日でお疲れだと思いますが、オリエンテーリングを行いますので、部屋ごとにまとまって、玄関ホールまでお越しくださーい。繰り返します___』

寮長のものらしい間延びした放送が何度か繰り返されたので、わたくしたちはダラダラと立ち上がりました。


「じゃ、どうぞ」

真っ先に立ったユリイさんが、スッと扉を開けてくれます。

さっきも思ったのですけど、この方、ところどころ王子様のような部分がありますよね。

容姿と相まって、本当に王族のようです。

スタスタと先に出たケイさんは校内地図とにらめっこしていますし、レインさんは部屋のカーテンを閉めてくださっています。

皆さん顔面偏差値はおかしいですが、いい方々ですね、本当に。


ていうかこれ、何もしていないのわたくしだけじゃないですか!?

決めました、わたくしは次何かあったら、率先して動きます!

そう心に決めていると、ユリイさんとレインさんが部屋から出てきました。

「ほら、行くぞー!」

地図をやっと解読したらしいケイさんに続き、皆さんがわたくしを追い越し歩いていきます。

それでもゆっくりと、わたくしが追いつけるくらいです。

こういう方々となら、もしかしたら。

本当に嫌な学園生活も、少しは楽しめるかもしれません。

淡い期待を抱きつつ、わたくしは三人の輪に加わるべく一歩踏み出しました。

閲覧ありがとうございました。

せっかくなので、新キャラたちの裏設定集をご紹介します。 


・ユリイは花屋の息子なので、その影響で植物などの自然が好き。趣味として他にピアノを弾くが、スペースと金銭的に自宅にピアノを買えないので、知り合いの家のピアノを借りて弾いている。 


・ケイの実家は農家で、七人兄弟。ケイ自身は次男。猫三匹と犬二匹を飼っている。カロライナ学園に入学する前は、全校生徒五十人くらいの小さな田舎の学舎に通っていた。 


・レインの実家自体は貴族ではない。ただ、親族にかなり権力を持った貴族がいるので、割と裕福な暮らしをしている。貴族にとても仲良しのいとこがおり、しょっちゅう手紙を交換している。容姿もかなり似ている。 


ちなみに口調の見分け方ですが、「〜だね」「〜かな」のような優しい口調だったらユリイ、「〜だな!」「〜!」のような元気な口調だったらケイ、「〜だ」「〜。」のような言い切り口調だったら(それと、セリフのいたるところに「……」があったら)レインです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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