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男装令嬢、婚約破棄したってよ  作者: こんぺいとう
第二章 男装令嬢と学園生活
10/10

男装令嬢と適性審査 〈2〉

お久しぶりです。

次回から授業編に突入します。

楽しんでいただければ幸いです。

適性審査は、一人ずつ個室に呼ばれ、そこで調べるという形でした。

呼ぼれる順番は完全にランダムで、いつ呼ばれるかが全く分からないのがドキドキしますね……!

今はもう半分程度の人が呼ばれたところですが、わたくしの番はまだ来ていません。緊張が長く続いて、なんだか疲れてきました……!


することも無くてヒマですし。

仕方ないので、脳内で会話シュミレーションをやることで、ヒマをつぶしていますが。

脳内のイマジナリーケイさんやイマジナリーユリイさん、イマジナリーレインさんが一通りしゃべっている途中で、リアルのケイさんの名前が呼ばれました。

彼は元気良く立ちあがり、背筋を伸ばしてスタスタ歩いて行きます。

わたくしはその背をぼんやりと見送りました。


果たして、ケイさんはどの属性になるのでしょうか。

確か属性は、炎、水、雷、花、風、氷の六つでしたかね?

印象だけなら、ケイさんは炎らしい気がします。

雷でも合いそうですね。

ユリイさんは、植物がお好きなようですので、花でしょうか?

優しげな雰囲気ですので、風も似合う気がいたします。

レインさんはなんとなくですが、イメージは水か氷ですね。

わたくしは……何になるのでしょう。

正直、なにになっても嬉しい気はいたしますけれど。


そんなことを考えていると、先生が手元のバインダーに目を落とし、新しく名を読み上げました。

「ヘルド・エクリアナ」

わっ、わたくしですか!?

油断していたので、ふいうちに心臓がバクバクしておりますよっ!

「ひゃ、ひゃいっ!」

慌てまくり噛みまくりでどうにか返事をし、わたくしは勢いよく立ち上がりました。 



個室の中は、全体的に焦げ茶色の、上品な空間でした。

絨毯が敷き詰められた部屋の中心には木のテーブルが置いてあり、さらにその上にはクッションにのせられた水晶玉が鎮座しております。

水晶玉の中では、様々な色や光が揺らめき、次々に変化していました。

うわぁ、神秘的ですね……!

まるでオーロラみたいですよ!


部屋の隅に立っていた男性(先生でしょうか)が事務的な口調でわたくしに質問いたしました。

「はい、ヘルド・エクリアナさんでお間違いないでしょうかー」

「は、はい!」

「はーい、それでは手順を説明いたしますねー。えー、ご覧の通り、机の上に水晶が置いてありますんで、そこに両手を当てていただいて、そうしますと水晶の中に文字と数字が浮かび上がります。文字のほうが属性、数字の方が魔力量となっておりますので、そちらの方こちらに報告してください。それでは、好きなときにどうぞー」

え、合図とかないんですか……!?

す、好きなタイミングって……。

ずいぶん自由なんですね!?

わたくしは恐る恐るテーブルに近づき、水晶玉に手を伸ばしました。

ぴとり、少しひんやりした、かといってじんわりとエネルギーが伝わってくるようなその表面が指先に触れた、次の瞬間。


パリン!


高い音がして、水晶玉が砕け散りました。

「……へっ?」

一拍置いて、床にパラパラと破片が散らばります。

わ、割れました?

水晶玉、今、割れましたよね……?

思わず間の抜けた声が漏れます。

どっ、どうしましょう!?

なんで割れたのかはさっぱりですが、この水晶高そうですよね!?

大した手持ちは持っていませんよ、今!


……というか、触れただけで弾け飛ぶって、どういうことなのでしょう?

いくら魔法ファンタジーなこの国とはいえ、わたくしは何もしてませんよ!?

困惑して先生を勢いよく振り返ると、彼の方もまた、ぽかん、と立ち尽くしていました。

「……ど、どういうことだ……?あれには守護を何重にも……触れただけに見えたけど……うーん……」

先生は顎に手を当て、何やらブツブツと言っていました。

「……やりなおすか……」

や、やり直し、ですか。

一旦罪には問われなかったようで、良かったですが……!

先生はふらりと部屋を出ていき、数分後フラリと新しく水晶玉を持ってきました。

割れた破片はクッションからはらい落とされ、新しい水晶玉がそこに鎮座しています。


「……えぇーと、では、本来あまりないんですけれども……やり直しということで、手順は先ほど説明した通りですので、どうぞ」

よし、気を取り直して、いきますよ!

わたくしは水晶玉に手を伸ばしました。

手の先が水晶玉についた、その瞬間。


パリン!


えっ。

えっ。

えええええっ!!??

またも、音高く水晶玉が砕け散りましたよっ!?

これは、やはりわたくしが何かやらかしているのですか?

いえでも指先で触れただけで水晶玉を割るほどの筋力がわたくしにあるとは、とうてい思えませんが!?


「ええぇ〜……」

困惑しつつ先生の方を見ると、彼は虚無に陥ったかのような顔!

どこか遠い空を見上げ、口は半開きになっております。

わかりますよ先生、人間って限界を超えた衝撃を受けるとそうなりますよね!

わたくしは心の中のみでうんうんと頷き、恐る恐る声をかけました。

「……あ、あの、先生……?」

先生はハッとこちらの方を向き、またも新たな水晶玉を持ってきました。

「………えーでは、どうぞ」

「は、はい……!」

よし、今度こそ!

わたくしはそっと手を伸ばしました。


パリン!


「えぇぇぇぇぇぇ!?」

先生はもう無言になり、虚無顔でスッと新たな水晶玉を差し出しました。

「……どうぞ」

パリン!

「………どうぞ」

パリン!

「……ど、どうぞ……」

パリン!


もはや砕け散った水晶玉が数え切れないほどになり、先生はついに声を上げました。

「……あぁぁぁ、もう意味がわかりません!指先だけで割れるなんてありえない!何の魔法も習っていないのに!………エクリアナさん、魔力量は不明で申請を出しておきます、そういう人もたまにいらっしゃるので。適性は一旦わりと誰でも合いやすい水で登録しておきますので、今日のところはお帰りくださって結構です!では!」 

先生はやけに疲れた顔でピッと扉のほうを指し示しました。 


あれは、本当に何だったのでしょう……!?

わたくしは廊下を早足に歩きながら考えます。

指先が触れただけで水晶玉が割れるなんてこと、普通ありえませんよね?

それも一度のみならず、何度も……。

結局適性も分からなかったですし……。

うーん、先生の様子を見るに、滅多にないことなのでしょうが。

「はあぁぁぁぁ……」

わたくしは、深く溜息をつきました。 


◇ 


部屋に戻ると、わたくし以外の全員はすでに揃っていて、適性について話しているところでした。

わたくしはなるべく気配を消して入り込み、盛り上がる皆さんをお邪魔しないよう、隅っこで気配を消すよう努めます。


……が、そんなことできるわけもなく、すぐにケイさんが目を輝かせてわたくしを振り向きました。

「あ、ヘルド!おかえりー!」

うわぁ、眩しい……!

何でしょう、陽光を至近距離から浴びたかのような気がします!

わたくしは少し目を細め、恐る恐る返答しました。

「た、ただいまです……」

「カッタイなー、これから一緒に暮らす男同士なんだし、もっとフランクでいいのに!貴族の人なら、癖なんだろうけどさ。てかそれより、ヘルドもこっちこいよ!」

「あ、ではお言葉に甘えて……」

わたくしはスススッと膝を擦り、ユリイさんがさりげなく空けてくださった(とてもいいお方ですね!大抵の乙女はキュンとしますよ!)隙間に入り込みました。


「それで?ヘルドは何の適性になったの?」

ユリイさんが、柔らかく微笑みながら言いました。

てっ、適性……。

結局本当のところは分からなかったのですけれど……。

あの先生によると、便宜上は水で登録されるそうですし、水でいいですかね?


わたくしはできる限り低い声で答えました。

「水、ですよ。みっ、皆さんは?」

よし、待ち時間の間に、あらゆる会話における脳内シュミレーションを繰り返していたおかげで、自然に会話をつなぐ事ができましたっ!

大きな進展ですよ、これは!

わたくしは心の中で万歳三唱です。


脳内お祭り状態のわたくしの横で、まず一番最初に答えたのはユリイさんでした。

「風、だよ」

「おおぉっ、イメージぴったりですね」

「そう?」

予想が当たり、わたくしは内心鼻高々です。

ユリイさんは照れくさそうに笑っています。

「えぇ、優しげな雰囲気がとっても合っていると思います!」

「あは、ありがとう」

おお、これは良いコミュニケーションがとれているのではないでしょうか!

わたくしはユリイさんの言葉にうなずきながら、小さくガッツポーズをしました。


次に口を開いたのは、ケイさんでした。

「俺はなー、雷!」

「へぇ、らしいね」

ユリイさんが顎に手をあて頷きます。

そんなユリイさんを横目に、わたくしは心の中であっと声を上げました。

もちろん、二回連続で予想が当たったからです!

別に得があるわけではないのですが、なんだか嬉しいですよ!

そんなわたくしの脳内などいざ知らず、ユリイさんは微笑みながら続けました。

「さっき待ち時間に先生が仰っていたんだけど、属性というのは多少人間の性格、本質に影響されるものらしいよ。にしても、ケイのは本当にしっくりくるね」

「へぇー、そうなのかぁ……」

なんだかちょっと恥ずいな、とケイさんは照れくさそうに頭をかきました。


さぁ、後はレインさんですね。

わたくしは、水か氷、と予想しましたが……でも正直、彼が一番自信がありません!

レインさん、ずっと淡々となさってて、内に秘めた性格やら気性やらがまったくわかりません!

うー、でもここまできたら当てたいですよねぇ。


わたくしは声には出さずにひとしきり祈ってから、覚悟を決め、レインさんに問いかけました。

「……れっ、レインさんは?」

「……花」

うぅー、残念ながら外れてしまいました。

それにしても、花とは意外ですね。

園芸や自然がお好きと仰っていたユリイさんならともかく、特にその話に反応を示すでもなかったレインさんが。

じゃあ本当は、すごくすごくお優しい方なんでしょうか。

それかもしくは、華やかな方。

魅惑的、とかもありでしょうかね。

花から連想される性格はそのくらいでしょうか。

うーん、レインさんと会話する機会が少なくて、わかりませんよ!

わたくしが言えたことではないですが、レインさんもとても消極的ですよね……。

ま、まぁ、これから数年ともに過ごす中でわかるでしょうし。

そのためにはまず、わたくしが人見知りをなおすことからですよ!


「なー、しりとりしようぜ!」

「いいですね、やりましょう!」

わたくしはニコリと笑って、そう声を上げたケイさんに応えました。

閲覧ありがとうございました。

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