第59.5話 届かぬ過去の絆
私、倫道伽耶の足はルミナリエ化粧品本社へと向かっていた。
地下鉄から駅を出て、バスに乗り継いだ。
まだ間に合う……はずだという思いを持って。
髪を振り乱し、脇目もふらずにまっすぐと。
目指す先は、あの子――未春。
会ってから、何を言うかはもう全て決めている。
本社ビルが見えてきた。
もうすぐだ。
信号が青に変わり、バスが発車する。
しばらく進むと、バスは減速して停留所に止まった。
バスから降りると、すぐそこに本社ビルが見える。
はやる心を抑えながら、ようやく門の前に立った。
ここで未春が働いているのか。
今までの記憶が蘇る。
意を決して、玄関ドアをくぐった。
正面にフロント受付が見えた。
私は息を整え、未春に会いに来た旨を伝えた。
「申し訳ございません。有動はあいにく出張のため不在にしております」
「えっ?」
まさかの不在。
再会は空振りに終わる。
「いつなら、会えますか?」
「申し訳ございません。それはお答えしかねます。訪問いただいたことを伝えますので、こちらの情報シートに記入願います」
よくある会社へ訪問時の記入物のようだ。
「わかりました」
私はペンを取り、自分の情報を書き留めていった。
必要事項をすべて書き終え、受付に提出する。
「ありがとうございます。有動から連絡した方がよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「かしこまりました。伝えておきます」
受付嬢の言葉に、私は一分程度で、正確に意図を伝えた。
「かしこまりました。本日承った事、有動へお伝えします。本日はお越しいただき、ありがとうございます」
「よろしくお願いいたします」
私は一礼し、本社ビルのエントランスを出た。
会えなかったのは残念だったが、きっと会える時は来る。
私は本社ビルの方を振り返った。
「その時を楽しみにしているわ、未春。また話ししましょう」
そう言い残し、私は未春の職場を後にした。
今はまだ、先に自分のことをしっかりやらなきゃならない。
でも、私はその時、未春に起きていることを全く知らなかった。
――それを知ることになるのは、もう少し後だった……。




