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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第四章

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第59話 届かない距離、繋がる未来

 あれから二ヶ月。


 毎日が嵐のように過ぎていった。


 綾乃さんと話をしてから三日後のこと。


 現地の桐生さんの補佐員が機能しないとのことで、綾乃会長から連絡を受けた。


「尚也がね、未春ちゃんでないとうまく回らないって」


 桐生さんが会長経由で泣きついてきたのだ。

 

 だから行くって言ったのに……。


 桐生社長の了承も出て、桐生さんのデータ面のサポートは私が請け負うことになった。


 そうした桐生さんへのバックアップも含めた秘書業務に加え、開発部での“LUMIERE NEO”の企画チーム。


 私は開発推進課の特別顧問に選出され、秘書との二足の草鞋(わらじ)で動いている。


 睡眠時間を削ってでも、私は走り続けていた。


 就寝しても、夢の中でアフロディーテ様をはじめとする神々と力の使い方を学んだ。


 あの後アフロディーテ様にお願いしたのだ。


 睡眠法も学び、短時間でも熟睡するようになれた。



 その後すぐに、桐生さんへのサポートが功を奏し、動きができるようになったと連絡が来た。


 順調にプロジェクトは動き始め、現地での企業との連携も取れ始めた。


 桐生さんは手腕を発揮し、次々と困難な取引をまとめていった。


 プライベートの連絡もSNSで取り合った。


 互いの写真を交換し合った。


 仕事面のサポートもあったおかげで、意外と寂しさは感じずに過ごすことができた。


 綾乃さんに週一で会っていただき、それもかなり精神的に支えられた。



◇ ◇ ◇


 

 さらに二か月の時が過ぎた。


 新商品が発売されるその日がやって来た。


――商品名『LUMIERE NEO』。


 私たち開発部全体の努力の結晶。


 生産、工場、流通、販売、広報。


 みんなが一丸となって動いてくれた。


 すでにCMが流れており、SNSやテレビでも好調の噂が入って来ていた。


 販売が始まると、商品は飛ぶように売れた。


 販売管理からも、好評の報告が入ってきた。


 けれど、まだ安心は禁物。


 私たちは、週間の売上情報を待つしかなかった。



◇ ◇ ◇



「有動さん! 売上速報、出ました!」


 私たち開発部のもとに、報告が上がってくる。


 初週売上、前年同週比の三倍。


 SNSでも話題になり、口コミは爆発的に広がっていた。


 その報告に、開発フロアは歓声に包まれた。


「有動さん、やりましたね!」


「さすが特別顧問!」


「やったわね。みんなが頑張ったからよ」


 周囲の拍手に笑顔で応え、喜びを分かち合った。


 けれど、胸の奥にあるのは、ただ一人の顔。


(桐生さん……見てくれてますか?)


 胸にそっと手を当てて報告する。


 祝福してくれるみんなの笑顔が(まぶ)しい。


――私の(あきら)めない努力が、実を結んだ瞬間だった。



◇ ◇ ◇



 数日後。


 本社ホールで社長表彰式が開かれた。


「新商品の成功と売上に最も貢献した社員として、秘書課兼開発推進課・有動未春をここに表彰する!」


 社長の言葉と共に、ライトが(まぶ)しく照らす。


 壇上に立つと、社員たちの拍手が降り注いだ。


 誇らしくて、でもちょっと恥ずかしくて、思わず涙が出そうだった。


 表彰状を受け取り、壇上を降りると、みんなから温かく迎え入れられた。


 式が終わり、桐生社長がそっと近づいてきた。


「有動君、君に一つ(しら)せがある」


「はい?」


「桐生副社長……いや、尚也が君を呼んでいる。ニューヨークに来てくれとね」


「……えっ?」


 心臓が跳ねた。


 思わず言葉に詰まった。


「もちろん、私も社長として賛成する。君はもう、十分に認められる存在だよ」


 社長の笑顔が、どんな言葉よりも背中を押してくれた。


「あ、ありがとうございます。何よりうれしいです」


 実現すれば、予定より二か月早い再会となる。


 自然と涙が(あふ)れ出す。


――互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、励まし合った日々が、ついに報われる時が来たのだ。


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