表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/90

第56話 新プロジェクト始動、共に描く未来

 桐生グループ本社・大ホール。


 今日は――新プロジェクト「JAPAN BEAUTY ALLIANCE」の発表会。


 桐生グループを中心に、九条グループをはじめ複数の財団、異業種の大手企業が参画する。


 テーマは「日本の美を、世界へ――」。



 私は緊張した面持ちで会場の裏方を走り回っていた。


――絶対成功させるんだ。


 そんな覚悟を持って臨んでいた。


「マイク、リハーサル用にチェック済みです!」


「プレゼン資料、スクリーンテスト完了しました!」


 順調に各部署の準備完了確認をしていると、背後からふわりと和の香りが(ただよ)った。


「来ていたのね、有動さん」


 振り向けば――九条麗華さん。


 白地に金糸を織り込んだスーツ姿に、きりっとキメた巻き髪、落ち着いた表情。


 そこに彼女の覚悟が見て取れた。


 以前の“財閥令嬢”という印象よりもずっと、しなやかで堂々とした(たたず)まい。


「麗華さん!」


 私が声をかけると、笑みをたたえ、語気を強めて言い放った。


「桐生専務のプレゼン、サポートするんでしょ? しっかりおやりなさい」


 彼女の透き通った声が、以前よりも力強く響いた。


「はい! ありがとうございます」


 以前の麗華さん以上の威厳と、覚悟を垣間見る気がした。


 彼女は踵を返し、会場を見守るべく観客側に向かった。


 残り香と(ただよ)うオーラが、彼女の存在感を物語っていた。



 会場が暗転する。


 照明がステージを照らすと、桐生さんが登壇した。


 スーツのボタンを外し、マイクを握る。


「――世界は、変化を求めています。だが、“変える”ためにこそ、“守るべきもの”がある。それが――この国の“美意識”だ」


 熱を帯びた低い声が、会場中に響きわたる。


 彼の言葉は理論ではなく、信念そのものだった。


「我々の新プロジェクトは、“日本の美”を再定義する挑戦です。それは文化であり、技術であり、心そのもの。各財団、九条グループ、そして国内の多くの企業と共に――未来を描きます」


 それはもはや――魂からの叫び。


 会場中から割れんばかりの拍手が起きた。


 見守る私の胸もじんと熱くなる。


(桐生さん……堂々としていて、本当に素敵です)


 かつて社内で孤独に、必死にもがいていた彼。


 けれど、そんな彼の背中を私もサポートしてきた。


 彼と共に、ここまで一緒に作り上げてきたんだ。


 そして今、多くのオーディエンスの前で、雄々しく業界全体の未来を語っている。


 その背中を見ながら、改めて(そば)で支えることのできる現状に感謝したのだった。



◆◆◆



 発表会終了後、控室。


 関係者たちが入れ替わり立ち替わり、私たちに挨拶していく。


 そして、麗華さんが最後にやって来て、静かに桐生さんに話す。


「立派になったわね、尚也」


「そうか?」


「ええ。昔みたいに、全部一人で抱えようとしないところがね」


 その言葉に、桐生さんはわずかに笑みを浮かべた。


「支えてくれるパートナーがいるからな」


 その瞬間、麗華さんの視線がふと私へ向いた。


 目が合い、互いに微笑む。


「……そうね。大切になさい。私も負けないわ」


 そう言って彼女は席を立った。


 去り際、麗華さんはふと振り返る。


「有動さん」


「……はい」


「尚也を見て、あなたの働きがよく分かるわ。 ――だから、これからも頼んだわよ」


 その言葉に、胸が熱くなった。


「はい……しっかりサポートします」


 私は深く頭を下げた。


「ふふっ、そして、ちゃんと甘えなさいな」


「まっ……」


 言い返せなくて(うつむ)いてしまう。


 麗華さんはそう言い残して、悠然とその場を後にしていった。


 そんな彼女の穏やかな笑みが、私の脳裏に焼きついた。



◆◆◆



 夕刻を過ぎた。


 華やかで力強い発表会が幕を閉じた。


 私たちも会場を後にする。


「今日は……お疲れ様」


「いえ。桐生さんこそ、本当に素晴らしかったです」


「……ありがとう」


「これからも、しっかりサポートしたいと思いました」


「そうか……よろしく頼む」


 夜の街を歩く。


 いつの間にか、手を繋いでいた。


 お互いを意識しながら、静かに歩を進める。


「このプロジェクトが成功すれば、恐らく、桐生グループは本当に変われる」


「ええ。私も、頑張ります」


「頼もしいな」


 淡々とした短い一言。


 けれど、心に深く響いた。


 見上げた夜空には、街の光と重なって輝く星がひとつ。


 桐生グループの新しい息吹(いぶ)きが――ここから確かに、始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ