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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第四章

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第50話 脅迫の行方、意外な結末

 夕刻、明かりの消えた休憩室。


 私は完全に、大原先輩の支配下にいた。


 綾乃会長の指示は、秘書課には届いていなかったのか。


 どうしてこんなことになっているのか。


 考えても仕方のないことが、ぐるぐると頭をよぎる。


 とにかく、今は目の前のことに集中しなければ。


「さあ、どうなの?」


 大原先輩の顔が更に私に近寄る。


 もう成す(すべ)がない。


 そう諦めてしまった――まさにその時だった。


 パチン


 音がして、急に照明がつく。


 ハッとした。


「あーら、休憩室の電気が消えていると思ったら、お二人で何しているのかしら?」


 聞き慣れた声。


 とっさに、私と大原先輩は振り向いた。


 そこには腕組みして仁王立ちする川本課長の姿があった。


 上目遣いに私たちを見やる。


「……課長」


 先輩が(つぶや)いた。


「なぁにをしているのかなぁ~、お、お、は、ら、さーん」


「え、えっとぉ……」


 先輩が取り(つくろ)い、焦り出す。


「まさか、いじめじゃないでしょうねぇ?」


「そ、そんな、違いますよ」


「じゃあなぁに? 私、すっごく興味があるなぁ」


「ヒッ!」


 先輩の口から叫び声が漏れる。


「まさか、桐生常務の話じゃないでしょうね!」


「ひ、ひぃ」


「困るのよねぇ。その話。私が注意を受けるのよ」


 川本課長は毅然と私たちに警告する。


「大原さん、個室、行きましょうか。今日はみんな帰ったし、じーっくり話を聴くわよ」


 課長はそう言うと、私に目配せする。


 早くこの場を去れ、と。


 私は小さく(うなず)き、緩められた先輩の手をすり抜けて、()り足で歩みだす。


 川本課長と入れ替わりで、休憩室を抜けようとする。


 一瞬振り返ると、大原先輩の足が震えているのが見えた。


 私は前を向き、そのまま休憩室から出て、秘書課へと戻った。


 そしてそのまま荷物をまとめ、帰途に就いた。


 二人がその後どのようになったか、知る(よし)もない。



◇ ◇ ◇



 翌日の朝。


 タイムカードを刻印し、デスクに向かうと、そこには大原先輩と川本課長が立っていた。


 二人とも、昨日と同じ服装なのが少し気にかかった。


「お、おはようございます」


「おはようございます。有動さん、少しいいかしら」


 川本課長が私に声をかけてきた。


「は、はい」


 きっと昨日のことで間違いない。


 すると、課長が大原先輩の腰をポンと叩き、(うなず)いた。


 先輩がそれに呼応し、私の方を向いて口を開く。


「有動さん……」


 心なしか大原先輩の顔はほんのり紅潮し、肌艶(はだつや)がよかった。


「はい」


 すると、先輩が深く頭を下げてきた。


「昨日はごめんなさい! 私が言ったことは全部取り消すから」


「先輩……」


 昨日とは全くの別人と言っていいほど、豹変(ひょうへん)している?


 一体何があったんだろう……。


「もう二度と言わないから、(ゆる)してください」


 何だかわからないけれど、先輩のことが可愛そうに思えてきた。


「大原先輩、頭を上げてください」


「有動さん……」


「私は、何も聞いてなかった。それより、これからも仲良くしてください」


 私はそっと手を差し出した。


「有動さん……本当にごめんね」


 大原先輩はそう言って、優しく私の手を握ってくださった。


 何があったのかは知らないけれど、これで詮索(せんさく)されることはなくなった。


 私はふと、川本課長の方を見た。


 軽やかな笑みを浮かべ、私たちの様子を見て頷いている課長の姿が、そこにはあった。


「さあ、二人とも、仕事よ。今日も頑張っていきましょう!」


 課長の(げき)が飛び、二人は散開していった。



――何があったのかは、考えないようにしよう。


 そう考え、午前の業務に臨む私だった。


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