第46.5話 天界での憂鬱②
天界のとある神の神殿。
美しい女神、アフロディーテは日向ぼっこをしている。
『ああ、未春は幸せそうね。何だか妬けちゃうわ』
ニヤニヤしながらワインを飲んでいると、突然ふわりと何かが出現する。
「アフロディーテ様ぁ」
キューピッドである。
『何、どうしたの?』
彼は息を切らしている。
少し落ち着いてから、話し始めた。
「も、申し訳ございません、アフロディーテ様。色々と手を尽くして頑張ってはみたのですが、邪魔が入ってしまいまして……」
『邪魔ですって?』
「はい。途中まではうまく行っていたんですよ。二人の噂を流し、周りから横槍を入れるよう、仕向けるところまではできたのです」
『ふむふむ。なるほど』
傾聴するアフロディーテに、キューピッドは両手を広げ、続けた。
「ですが、肝心なところで邪魔が入ってしまい、噂がしぼんで収束しちゃったんですよぉ~」
キューピッドはそう言って、がっくり肩をうなだれる。
『あらあら、それは残念でしたね。それで、二人は今どうなってるの?』
アフロディーテは興味津々な眼差しで彼に尋ねた。
「はい。……それがですね、彼らの仲は前より深まったようで……」
キューピッドは彼女の怒りを覚悟つつ、恐る恐る話した。
だが、アフロディーテの両眼はさらに輝きを増した。
『おお! それは素晴らしいことではないの! あなた、いい仕事をしたわね!』
「えっ?」
『さすがはキューピッドね。未春のことを思ってそうしたのでしょう。お手柄じゃないの』
「えええええっ!」
キューピッドは目を丸くする。
『何驚いてるのよ。あなた、その能力通りの仕事をきちんとしたんじゃないの? もっと誇らしくしてよくてよ』
「は、はぁ……」
何だか話が噛み合わず、キューピッドは困惑した。
「そ、そうですか。いやぁ、アフロディーテ様のご機嫌が良ければ、私はそれで満足でございます」
『そうでしょうそうでしょう。見て、お陰でお肌もまた艶々になっちゃったわよ』
「そ、それはようございました。ハハハ……」
取り繕うキューピッドをよそに、妄想を膨らませるるアフロディーテ。
『あなた、これからもいいアイデアがあれば、どんどんおやりなさい。そして私を楽しませてちょうだいね』
退屈から解放され、アフロディーテは満面の笑みでキューピッドに感謝した。
「は、はいっ! このキューピッド、あなたのためなら何だってやりますよ!」
キューピッドは胸を張り、得意げに答えた。
『期待しているわ。次もまた、取りかかってちょうだい』
「はいっ! このキューピッドにお任せあれ!」
そう言って、キューピッドはアフロディーテの前から姿を消した。
一人になり、静寂が流れる。
傍にあるグラスを取り、ワインを一口飲んだ。
『はぁ……。また退屈にはなったけれど、この先もまた楽しませてね、未春』
そう言ってアフロディーテは、晴天の空に吹く一陣のそよ風を堪能するのだった。




