第41.5話 天界での憂鬱①
『『あぁ~、退屈だわぁ』
天界は穏やかで晴れ渡っていた。
その中のとある神の神殿。
全長五メートルほどの目も眩むほどの美しい女神。
彼女は肩ひじを突き、ため息をついた。
「どうしました? 書類の山で忙しすぎてお疲れですか、アフロディーテ様?」
その隣でキューピッドがハエのように飛び回り、たしなめている。
『いいえ、退屈そのものよ。あの子から連絡すらなくなっちゃったしね~』
「退屈? あの子?」
キューピッドの問いに、アフロディーテは鋭い目つきで答えた。
『未春ちゃんよ。この前行ってもらったでしょ』
「あ、ああ! あの女の子ですね」
『そうよ。せっかく目をかけてあげたのに』
アフロディーテは不満げな表情で吐露する。
そんな女神にキューピッドが助言する。
「ですがアフロディーテ様、それはよいことではないですか?」
『え?』」
「ほら、彼女は色々な経験をしながら、順調に幸せに向かっています。これはもう、アフロディーテ様のおかげと言ってもよいですよ」
『そ、そうかしら』
「そうですよ、さすがはアフロディーテ様!」
アフロディーテは満面の笑みを見せた。
そんな姿に安心したのか、キューピッドが彼女を動かそうと説得する。
「それよりアフロディーテ様、ほかの人間たちのことを考えてくださいよ。この書類の山、整理していきましょうよ。貴女が本気出したらこんなの、すぐなんですから~」
そう言ってアフロディーテを見たキューピッドは、妄想に耽る彼女に気づく。
「だめだこりゃ……」
キューピッドはうなだれていたが、突然何かを思い出し、背筋をピンと伸ばした。
「アフロディーテ様!」
『何よ、そんな大きな声を出さなくても聞こえてるわ』
面倒そうな表情の彼女に、キューピッドがニコニコしながら答える。
「今いいことを思いついたのですが、聞いてくれます?」
『ええ、いいわよ。どうせ暇だし』
最後の言葉に引っかかりつつも、キューピッドはアフロディーテの耳元に止まった。
「実はですね……」
ごにょごにょと話が伝わるたび、アフロディーテの表情が明るくなっていった。
「どうです?」
『それはいいアイデアだわ。貴方、天才ね』
「えっへん!」
キューピッドは得意げにポーズを決める。
『早速取りかかりなさい。吉報を待ってるわ』
「がってん承知! では早速……」
キューピッドはそう言うと、パッとその場から姿を消した。
ひとり残された美しい女神は、少しだけ翼を震わせた。
『うふふ。楽しみね。待っていてね、未春』
――そう言って微笑むと、女神は椅子にもたれ、優しい風を感じながら佇むのだった。




