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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第三章

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第38話 麗華さんの思惑、衝撃の告白

 昼下がりのオフィス。


 書類を整理していた私のもとに、受付から内線が鳴った。


『有動さん、九条麗華様がお見えです』


 その知らせに、頭が一瞬、真っ白になる。


 まさか――また彼女が会社に?


 慌てて立ち上がり、応接室へ向かう。


 ドアを開けると、そこには前より少しやつれた麗華さんがいた。


 それでも、どこか(りん)としたオーラをまとっている。


「……ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです」


 私が頭を下げると、麗華さんは柔らかな笑顔を見せた。


「御機嫌よう。そう見えるかしら。忙しい毎日だけど、ようやく一区切りついたところなの」


「九条グループ……大変そうですね」


 私が言葉を選ぶと、彼女は小さく頷いた。


「姉の件で、家も会社も少し荒れているわ。でも、嵐が過ぎ去るのをただ待つのは性に合わないの」


 穏やかに笑いながらも、どこか影が差しているように見えた。


「それで、今日は……?」


「挨拶と、お礼。それと――少し話しておきたいことがあって」


 お礼?


 私が首を傾げると、麗華さんはゆっくりと視線を落とした。


「……尚也のことよ」


「えっ」


 その名前を出されて、思わず姿勢を正す。


「あなた、彼の告白の時のこと、覚えてる?」


「も、もちろんですけど……」


「実はあの時、彼に少し“助言”をしていたの」


「……助言?」


 胸の奥がざわつく。


 麗華さんは、どこか照れくさそうに微笑んだ。


「あなたの好きな香り、服装の傾向、休日の過ごし方……。 それとなくあなたから聞き出して、彼に伝えていたのよ」


「え、えええっ!?!?」


 確かに、麗華さんとのSNSのやり取り、何か変だと感じていた。


 あれはそういうことだったんだ……。


 そしてまさか、あのぎこちないデートの裏で、そんなやり取りが……!?


「もちろん、あなたへの思いは彼自身の意思よ。私は少し背中を押しただけ」


「……でも、どうしてそんなことを?」


 麗華さんは、静かに答えた。


「彼を見てて分かったの。

 尚也は、あなたに出会って初めて“人間らしく”なった。

 だから――その気持ちが本物になるように、支えてあげたかったの」


 思わず、胸の奥が熱くなった。


「……麗華さん、もしかして……最初から」


「いいえ。あなたを敵だと思ってた。最初はね」


 そう言って、麗華さんは小さく笑った。


 でもその目には、もう嫉妬や競争の色はない。


「だけど、今は違う。

 あなたを見てると、私まで救われた気がしたの。

 私も、人を想うってことを、もう一度信じてみたくなった」


 麗華さんの言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。


 言葉が出なかった。


「尚也をお願いね、有動さん」


「……え?」


「私はもう、彼の隣には立てない。でも、あなたなら――あの人を笑顔にできる」


 微笑みながら、彼女はほんの少しだけ頭を下げた。


「本当にありがとう。あの人の閉ざした心を、柔らかくしてくれて」


「いいえ、そんな……」


謙遜(けんそん)しなくてよくてよ。しっかりおやりなさい」


 麗華さんはウインクし、(きびす)を返す。


 ぴんと背筋を立て、しっかりとした足取りで部屋を出て行く。


 私も遅れて麗華さんの後を追った。


 そして、その背中がドアの向こうに消えるまで見送った。


 オフィスに残された私は、胸の奥がじんわりと温かくなっていた。


(麗華さん……本当に、かっこいい人だ)


 彼女の強さと優しさ。


 そして、恋愛を超えた“桐生さんへの絆”。


――その全てが、私の心に刻み込まれたのだった。



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