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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第三章

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第31.3話 新人秘書有動未春の話②

 新人として私に就いた有動未春は、不思議な子だった。


 最初こそ、緊張感からか慣れない感じを出していたが、みるみる業務を覚えていった。


 秘書業務は多岐にわたり、覚えるだけでも大変だ。


 聞けば秘書は初めてで、資格も何もないらしい。


 だが、的確に業務内容を把握し、自分用にカスタマイズしつつ、俺のサポートもこなしていった。


 俺が細かい指示を出し、注文をしたが、最初は間違っても、二度目から修正する対応能力がすごかった。


 そして一度した失敗はほとんど、二度しなくなった。


 これは鍛えがいのある素質のある奴が来たと胸が躍った。



 だが、有動さんの能力はそれだけではなかった。



 倉庫視察に同行させた時、彼女は危険を(かえり)みず行動し、人命を守った。


 避けられない重大事故につながるはずだった。


 だが、彼女がいたおかげで、未然に終わったと言ってもよかった。



 社内の試作発表会でも、彼女は能力の片鱗を俺に見せた。


 彼女は商品の欠点を見抜き、アンケートを書き上げて意見した。


 また、それについての開発部でも動じることなく、自分の意見を多角的に論じた。


 俺も補佐はしたが、有動さんの明晰な頭脳に翻弄されっぱなしだった。



 そして、交渉の席に立ち合わせると、変化が起きた。


 交渉相手の様子が軟化し、さらに彼女の一言で、大きく局面が有利に動いたのだ。


 それも一度や二度ではない。


 偶然やまぐれでは片づけられない事態だった。


 彼女は出過ぎたことだと謝っていたが、そんなことはなかった。


 適度なバランス、絶妙のタイミングで発言してくれていたのだ。


 まさに俺が欲しい時、欲しい言葉を見透かしたかのようだった。


 女性はそういう感覚に優れているのは知っていたが、有動さんのそれは、そういった次元を超えている。



 そして、それ以上に感じることがある。


 それは、会社や俺だけでなく、交渉先や相手をも幸せにし、包み込むような何かを感じるのだ。



 最初は偶然だと思っていた。


 だが、同行の回数を重ねるにつれ、それは確信に変わっていった。


 有動さんには申し訳なかったが、意図的に同行を増やすようにした。


 当然、彼女がすべき業務にも支障が出てしまう。


 だが、彼女は言い訳を一切せず、俺の依頼を受け入れた。


 そして、必ず自分の業務もこなしていた。


 

 それにもかかわらず、時折、オドオドした素振りを見せることがある。


 まだ新人だから当然なのだが、ここまで仕事がこなせるなら、自信を持っていいはずだ。


 前職の経歴を見ても勤務年数が長かったし、きっと重宝されていたのだろう。



――とにかく、様々な面で不思議な子だと思う。


 もっと色々接して話を交わし、知りたいと思うようになっていた。


 容姿も出自も、今まで付き合ってきた女性たちとは程遠い存在。


 だが……。



 その時にはもう、彼女のことが好きになっていたのかもしれない……。

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