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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第三章

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第29話 同期の絆、師弟に発展ですってぇ?

 翌日の昼休み。


 コピーを取りに行った帰り、廊下の角を曲がったところで――。


「……あっ」


 例の斎藤君とばったり目が合った。


 スラっとした体型に175センチくらいの高身長。


 そしてサラサラ髪の美形。


 莉子ちゃんが好きになるのもすごくわかるわー。


「有動さん、少し……いいですか」


 顔だけじゃなく声まで少し高めの美声。

 

 彼の顔がほんのり赤く映った。


 いつもより真剣な表情に、思わず足を止める。


 彼に促され、人気のない場所へと移動する。


「な、何でしょうか?」


 私はできるだけ平常のトーンを意識した。


「その……前から、ずっと気になってて。俺、未春さんのことが――」


「ストーップ!!」


 思わず両手をバッと広げて(さえぎ)った。


 斎藤君は呆気に取られて固まる。


「え、えっと……あの……」


「斎藤君、それ以上はダメ。私じゃない」


「……え?」


 真剣に首を振った。


 まさかこの人、私に気があったの?


――けれど、それは受けられない……


 私は彼の目を直視する。


 まさか、この人、まだ気づいてないの?


「斎藤君、私なんかより、もっと素敵な子がいるんじゃない?」


「もっと……俺に?」


「ええ。私の話に乗ってみる気はない?」


「え?」


 彼の目が大きく開かれる。


「誰のことですか?」


「後で話すわ。彼女も君のこと、気になってるみたいよ」


「……そ。そうなんですか」


「うん。きっとお似合いのカップルになると思うの」


 私の言葉に斎藤君はポカンとしている。


「悪いようにはしないわ。私に任せてみない?」


「……一体誰なんですか?」


 私は少し顔を近づけ、彼にささやいた。


 彼の息遣いが聞こえてきそう。


「秘書課の中谷莉子ちゃんよ」


「えっ!!」


 瞬間、彼はのけぞり、取り乱した。


「え、いや、それは……彼女、明るいし人気者だし……俺なんか相手にされない」


「そんなことない! 莉子ちゃん、斎藤君のこと、よく見てるよ」


「えっ……!」


(ふふ。バレてないのは本人だけ。典型的だわ……)


「どう、乗らない?」


「そりゃあ、それが本当なら、すごいことですけど……」


「大丈夫よ。任せて。で、どうする?」


 斎藤君は少し間を開けてから、私に言った。


「お、お願いします」


 私は満面の笑みで返す。


「よーし、契約成立ね。よろしく」


 彼に対して親指を突き立ててみせた。



◆◆◆



 午後、オフィスの休憩スペース。


 莉子ちゃんがコーヒーを飲んでいるところに、斎藤君を引っ張ってきた。


「ちょ、未春先輩!? 何で二人一緒に……」


「さっき彼が、大事な話あるって言ってたの。ね?」


「え、あ……あの……」


 斎藤君は顔を真っ赤にして(うなず)く。


「ほら、男の子でしょ? 言っちゃいなさい!」


 背中をドンと押すと、斎藤君が大きく息を吸った。


「……莉子さん! オレと付き合ってください!」


 休憩スペースに響く直球の言葉。


 莉子ちゃんの目がまん丸になる。


 次の瞬間、顔を真っ赤にして笑った。


「……もう、バカ。やっと言ったのね」


「えっ!? まさか、知ってた?」


「ずっと前から気づいてたわよ! でも……斎藤君が言うまで待ってたの」


 真っ赤な顔をした莉子ちゃんが言葉を(つむ)ぎだした。


 二人の間にふわっと甘い空気が流れる。


 私はニヤニヤが止められない。


「……じゃあ、いいのかな」


「うん。ちゃんとリードしてね」


 自然と握られた二人の手を見て、思わず拍手してしまう。


「よーし、成立! これでめでたしめでたし!」


「有動先輩、本当に……ありがとうございます!」


「師匠、ありがとう!」


「うんうん。若いっていいね。って何? 師匠って」


 満面の笑みの莉子ちゃんが私に言い放つ。


「先輩は約束を守ってくださいました。ですから、これからは先輩じゃなく、師匠と呼ばせてください!!」


 そう言って私に頭を下げた。


「ええっ!! 師匠とか恥ずかしいし、やめてよ。先輩でいいから……」


「イヤです。有動師匠は私の恩人です。もう先輩じゃダメなんです」


「なんですって!」


 私たちのやり取りに斎藤君が照れ笑いしている。


「何か知りませんが、有動さん、これは一本取られてますね。観念した方がいいですよ」


「斎藤君まで! もう、他人事と思って……」


 照れ笑いをしつつ、私は二人のうれしそうな顔を眺めた。


 お互いに見合って頬を赤らめ、見つめあう二人が微笑ましい。


 やっぱり、私、こういう縁を結ぶのは得意なのかもしれない。


 胸の奥がほんのり温かくなる。


「次は師匠の番ですね。いい人が見つかるよう、応援しますから!」


 莉子ちゃんが溢れんばかりのスマイルで言った。


「な、何言ってんのよ。あんたたち、これからなんだからね。私のことなんかよりちゃんとやりなさいよ」


「はい! 任されました」


 斎藤君が元気な声で答える。


 二人が楽しく談笑し始める。


――こうして、ひっそりと、新たに師弟が誕生したのだった。



 彼らのやり取りを見ていると、ふと、桐生さんの横顔が頭に浮かぶ。


 けれど、自分の恋のことになると、どうしてこうもうまくいかないんだろう。


 ……ううん、そんな気持ちじゃダメ。


 私も負けてられないわね。


――二人の笑顔を祝福しながら、自分の気持ちを引き締める私だった。

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