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婚約者に捨てられ、親友に裏切られた私ですが――どん底からのストーリー  作者: ワスレナ
第三章

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第28話 同期の恋バナ、私の恋バナ?

 ある日のお昼休み。


 秘書課のデスクに書類をまとめて置いて、社員食堂に向かう。


 すると背後から元気な声が飛んできた。


「未春先輩っ! お昼一緒に行きましょ!」


 振り返ると、同期で大体一緒にいる中谷莉子ちゃん。


 入社してから一ヶ月、彼女はすっかり秘書課のムードメーカーになっている。


「だ・か・らぁ~、同期だって言ってるじゃん……」


「……でも私、先輩って呼んだ方がしっくりくるんです!」

 

 まあ、別に呼び方なんていいけど……。


 オドオドしていた入社当時の姿からは想像もつかないほど、今ではすっかり笑顔がトレードマーク。

 

 先輩や周りの男性社員からも可愛がられている。


「もう、しょうがないなぁ。よし、気分いいから、今日は(おご)ってあげる」


「ホントですか! うれしいです。ゴチになります〜」


 そう言って、私の腕にしがみついてくる。


 上機嫌でサンシャインスマイル炸裂の莉子ちゃんに、思わず苦笑してしまう。


「わぁー! 今日も美味しそう!」


 豪華なAランチにご満悦のようだ。


 二人並んでランチを受け取り、窓際の席に腰を下ろす。


 食べ始めて少しした時だった。


 彼女は急に真剣な顔になって、声をひそめた。


「先輩……ちょっと、恋バナしていいですか?」


「恋バナ? ……いいけど」


「実はですね、営業部の同期の斎藤君。最近めっちゃ優しいんです」


「え、斎藤君って……あの、計算得意で無口な?」


「そうですそうです! あの人、私のこと避けてると思ってたんですよ。でも、資料作成手伝ってくれたり、コーヒー買ってきてくれたり……。これって、脈ありですかね!?」


 テーブルに身を乗り出す莉子ちゃん。


「もしかして、莉子ちゃんは彼に気がある……とか?」


 そのキラキラした目に押されながらも、本心に迫ってみる。


 すると、彼女は急にしとやかにチェンジする。


「実は……そうなんです。それで先輩の意見を参考にしたくて……」


 ヒソヒソ声で教えてくれた。


――図星か。


 私はちょっと考えてから答えた。


「そうね。状況からして、それは……かなり分かりやすいんじゃない?」


 すると、莉子ちゃんのサンシャインが復活する。


「ホントですか! やっぱり! ……でも、斎藤君って未春先輩のこと好きだったって噂も聞いたんですよ。だから私なんかに……って思っちゃって」


「……えっ!? わ、私!?」


 意外すぎて、思わずスプーンを落としそうになる。


 そんな話、全然聞いてないんですけど!?


「でも斎藤君が優しいのは、未春先輩のおかげかも。先輩って、場を明るくするし、人を動かす力があるんですよ。営業部でも“有動さん効果”って呼ばれてます」


「えっ、そんな呼び方が!?」


 いやいやいや、それはさすがに無いっしょ。


「はいっ。だから、もし私と斎藤君が付き合えたら……先輩に一番に報告しますね!」


 莉子ちゃんはにっこり笑って、唐揚げを頬張った。


 その無邪気さに、思わずこちらまで頬が緩む。


 ……なんか、この子の恋がうまくいくといいなぁ。


「そういうことなら、私も全力で応援する! 彼に会うことがあれば、莉子ちゃんのこと、押しまくっとく!」


 私の言葉に、莉子ちゃんがさらに笑顔になる。


「ありがとうございます。でも、恥ずかしいから……押しまくりはやめて下さいね……」


「何言ってんのよ! 好きな人にはどんどん行かなくっちゃ。気持ちを伝えないと何も始まらないよ!」


 つい熱くなって熱弁してしまった……


 さすがの莉子ちゃんも、ちょっとドン引き気味かも……



――そしてふと、自分の胸の奥がチクリと痛むのを感じた。


 あの日の、桐生さんの言葉が、頭の中でリフレインする。


『すきだ』


 私の方は、まだ答えを出せないままなのに……。


 莉子ちゃんの恋の話を聞きながら、心の奥で自分の迷いと向き合う私だった。

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