第21話 堕ちた男と女の暗躍?
俺、実小路浩康は、苦労の末に、倫道伽耶に許しを請い、再びヨリを戻すことができた。
俺は、いや、俺たちはここからやり直す。
そして、この暗いトンネルから一刻も早く脱出するんだ。
あれだけ強いとわかった伽耶となら、何とかやっていけるはずだ。
伽耶を一流の高級レストランに招待し、これからのことを相談する。
「それで、これからどうするの? 何かいいプランがあるわけ?」
「いや、それを今から相談したくて、ここに来てもらった」
「フッ、それはとんだ甘ちゃんね……」
「な、甘ちゃん……」
伽耶がニヤリと笑っている。
だが、言い返す言葉も出ない。
「釈放までしてくれるから、てっきり何かプランとかがあるのかと思ったわ。でも、確かにあんたの顔見てたら、余裕無さそうだしね……」
俺はタバコを取り出してくわえ、火をつける。
ひと煙吹かしてから答えた。
「ああ、そうさ。余裕なんて全くねぇ。どうしていいかもまだ決め切れてねぇ」
伽耶は俺の目を見つめながら話す。
「ふぅーん。いい気なものね。……立て直すのか、這い上がるのか、それとも……逃げ出すか?」
「……」
「ふふっ。あんたの考えそうなことね。でも、違うでしょ」
「何? どういうことだ?」
「――未春のこと」
「!……なぜそれを?」
「図星ね。でも、やめときなさい」
「……なぜそう言える?」
伽耶は小さなため息を吐き、俺の目を見て答える。
「――私はね、あの子の親よりも、あの子のこと、知ってるから」
伽耶は流し目でティーカップの取っ手を取り、紅茶を一口飲む。
マジかよ……
だが、伽耶の余裕さが本当だと物語っている。
――この女だけは敵に回しちゃいけない。
「そ、それはすごいな。で、どうだ。俺はどうすればいい?」
伽耶はティーカップを置き、淵を指でなぞる。
「答えは出てるんじゃないの? できることから立て直せばいいのよ」
「……」
「……というか、まずは落ち着きなさいよ。みっともない。すべてはそれからよ」
「……あ、ああ。そうだな」
俺は再びタバコをふかし、伽耶と深くヨリを戻す算段を考え始めた。
ちょうどその時、スマホの着信音が鳴る。
画面表示で相手の名前が目に入る。
――親父から?
電話に出て、親父の話を聴く。
「な、何だって!」
とんでもないことを言い出しやがった。
その後も数分間、話は続き、俺は電話を切った。
「どうしたの浩康。顔色がよくないようだけど……」
伽耶が俺の様子を見て言ってきた。
「あ、ああ。実はな……」
俺は話を切り出した。
「結論から言うと、親父が俺に縁談しろと言ってきた。しかもすぐにだと……」
「……! それってどういうこと?」
「親父の決定は絶対だ。俺に拒否権はないってことだ……」
「それで、誰と縁談なのよ?」
伽耶の当然の質問に、俺は震える手を抑えながら答えた。
「……九条家の長女、――幸代だ」
「あっ、あのお嬢様ね……」
伽耶の表情が引きつる。
やはり知っていたんだな……
「すまん、伽耶。本当はお前とゆくゆくは結婚してもらうつもりだった……こんなことになってしまって」
「ふっ……いいわよ。それに釈放の恩もあるから、もう少しいてあげる。……それより、大丈夫なの?」
伽耶が突き放すように俺に尋ねる。
俺は首を横に振った。
「いや、――多分、詰んだ」
――何で俺の周りにこんなに不幸がつきまとう?
俺が一体何をしたって言うんだぁ!




