第10.9話 元カノ有動未春の話①
嫌なものを見てしまった。
よりによって隣にいたのが、ライバル会社ルミナリエ化粧品の桐生尚也とはな……
自宅に戻り、リビングのソファでタバコをふかしている。
――どこでどう間違ったんだろうか……
この約二週間ほどで、こうも人生が変わるとは、思ってもみなかった。
いや、今ほどではないが、似たような時期はあった。
そうだな、あれは二年前、まだ俺が本部長で営業部にいた頃だった。
――何をやってもうまくいかない時期が続いていた。
少し自暴自棄になり、本部長まで上り詰めた実績にも陰りが出ていた。
何でこんなにツイてないかなと嘆き、近くの神社に参拝したんだっけ。
そんな矢先だった。
俺は何度も足を運んでいた取引先の商社に向かった。
その時、なぜかはわからないが、商談相手からいい子がいると紹介を受けたんだ。
それまではそんな話一切なかったのに……だ。
――紹介された彼女の名前は有動未春。
商談相手の部下の一人だった。
当時は化粧をしてなくて、すっぴんに近かったが、ちょっと可愛いくらいの子だった。
少しキラキラオーラは出ていたっけ。
最初は向こうも恥ずかしがり、なかなか進展しなかった。
だがSNSで何度かやり取りを重ねるうち、距離が縮まった。
そして互いに時間を作り、何度か会ううちに、俺の身の回りに変化が起きた。
それまで失敗続きだった交渉が急にうまく運んだのだ。
まずは未春の会社との交渉が弾んだ。
そして営業契約も右肩上がりに伸びていった。
――最初はこれが未春と連動しているなんて、思いもしなかった。
だってそうだろう。
こんな話をしても、誰が信じる?
話はそれだけじゃなかった。
俺だけじゃなく、俺の部下達も、上司も、業績を上げていったのだ。
今までが嘘のように周りが動き出したんだ。
俺も正直まったく信じていなかった。
未春のことは可愛いと思っていたから、気にせずそのまま交際を続けた。
すると……だ。
そのうち会社の業績まで上がっていきやがった。
――気づけば俺は未春に告白し、彼女にしていた。




