第40話 女王様、見せ付ける
ショウゴ達がイルムガンを退けた頃。天空国家ハーモラ代表のヴィヴルとカズマは渓谷エリアでモンスター狩りをしていた。
『貰いっ!!』
「ギィアァ!?」
ヴィヴルが巨大な拳を振りかぶり、小型飛竜を崖に叩き付ける。隙を見せた飛竜に側面からの一撃。叩き付けた瞬間、飛竜はガクリと息絶えた。
「ふぅ、これで20体目やな。累計ポイントは……っと……9000ptか。結構ええポイント溜め込んでるな、コイツら」
『その分飛び回るから森林エリアと比べて効率はイーブンくらいじゃない? それに、こっちの方がライバル多そう』
ヴィヴルが周囲を見渡す。深い渓谷では複数の竜機兵達が飛竜狩りをしている。カズマはシートに座り直し、深く息を吐いた。
「ホンマやな。にしても……このランキング、どうもきな臭いで」
彼の視線の先には儀式のランキングが表示されていた。
1位 ティアマト 9600pt
2位 ツィルニトラ 9200pt
3位 ヴィヴル 9000pt
4位 イルムガン 8500pt
5位 ネリー 1800pt
6位 ケルヒトニク 1500pt
7位 ベルシス 1250pt
8位 ルビーナ 1200pt
9位 バロンズ 1150pt
10位 スーガル 1050pt
チラリとコクピット内に映る画面へ目を向けるカズマ。そこにはツィルニトラとイルムガンのポイントが乗っていた。
「ツィルニトラが俺達を超えてイルムガンがすぐそこ。その反面、5位以下はぜーんぜん俺らに届きもせん。どういうことやこれは?」
「本戦に入るの確定だしいいじゃない」
「いや、なんか作為的なもんを感じるで。終了までに一波乱ありそうや」
そんなことを話していると、カズマがあることに気付いた。
「ん?」
『どうしたのよ?』
「いや、上を見てみろ。竜機兵達が何かに群がっとるぞ」
カズマが手元の魔法陣を操作し、ヴィヴルの指先で谷の上方を指す。ここは荒野に亀裂を入れたように存在する渓谷。谷の上部ということは何もない荒野が広がっているだけだ。そこに群がって何をしているのか。カズマの疑問に答えるように、渓谷に轟音が響き渡った。
『撃てえええ!!!』
瞬間、無数のヴァース・ショットが渓谷に放たれる。その銃弾が崖に直撃し、頭上から岩が落下してくる。渓谷で飛竜狩りをしていた他の竜機兵達が、怯えるように渓谷エリアから逃げ去っていった。
渓谷に残されたのはヴィヴル達だけ。崖が弾け飛び、土煙が発生。頭上の戦闘が見えなくなってしまった。分かるのは粉塵の中で何かが戦っていることだけ。土煙の中は、光と悲鳴が渦巻いていた。
『な、何が起こっているの……?』
ヴィヴルの頭に疑問が渦巻く。飛竜を狙っているにしても妙だ。あの数で1体の飛竜を狙うなど非効率にも程がある。大型の古竜がいたとしても、土煙程度で姿が消える事はないはずだ。そう考えた時、ヴィヴルの瞳に黒い何かが映り込んだ。
『何……アレ……?』
人型をした何か。それが竜機兵だとヴィヴルが気付いたのは、機体が目の前を通りすぎる時だった。
『巻き込まれるぞ』
凛とした女性の声。漆黒の機体に紫の差し色。その機体が渓谷を飛び去っていく。数秒遅れて無数のヴァース・ショットの弾幕がヴィヴル達の元へ降り注いだ。
『きゃああああああ!!?』
「飛ぶぞヴィヴル!!」
カズマがペダルを踏み込みスラスターを展開。急発進するヴィヴル。ヴィヴルは、先程飛び込んできた黒い竜機兵を追うように飛行した。
「アイツ……トルテリアの機体か」
ボソリと呟くカズマ。その言葉をヴィヴルは聞き逃さなかった。
『ホント!? 今回の儀式で最強と言われるコンビよね!?』
「ああ、漆黒のバイザータイプ。間違いない、ヤツや」
カズマは、ヴィヴルが次に言う言葉を予測していた。スラスターから勢いよくマナ粒子が噴射される。黒い竜機兵……ツィルニトラを追うように。
「分かったで。攻撃をしかけとるヤツらは低ランクの竜機兵や。あの女王を倒して一発逆転を狙っとるってことか」
『ふぅん……私達は狙わないってしょうもない奴らね。そんなことよりカズマ! 絶対見失わないで! 優勝候補よ! ここであの女王の戦い方を目に焼き付けるわ!』
予想通りの言葉。カズマはニヤリと笑うとスラスターを全開にした。
「了解や!!」
加速するヴィヴル。直進が続いたおかげで一気にツィルニトラへ接近する。あと数メートルまで接近した時、ツィルニトラはチラリと背後へ視線を向けた。
『貴君らは仕掛けてこないのか?』
漆黒の竜騎兵。そのバイザーが太陽を反射してギラリと光る。瞬間、ヴィヴル達が恐ろしい殺気に襲われる。ヴィヴルは、それを振り払うように声を荒げた。
『ふん!! アンタを仕留めるのは本選に入ってからよ!! 今はじっくりアンタの動きを見せて貰うわ!』
「おいヴィヴル! 自分からバラしてもうてええんかよ?」
『いいの! どうせあの女王にはアタシ達の狙いなんてバレバレよ!』
『面白い少女だな。威勢もいい』
ツィルニトラが腰の翼をはためかせ、仰向けに泳ぐように飛行する。彼女は速度を落としてヴィヴルの下に着く。向かい合うように飛行するヴィヴルとツィルニトラ。ツィルニトラは、ヴィヴルの顔を見据えて声を発した。
『貴君はなぜ闘う? 野心か? 義務か? それとも……』
『アタシは自分のために戦うの! お父さんとお母さんに見せるために!!』
『家族のためか。良い理由だな。我らの速度に着いて来られたなら、私の力を見せてやろう……ユウ、加速だ』
『分かってるって。ホント、ツィルは手の内全部見せたがるよな~!!』
ツィルニトラの搭乗者、ユウ・シライの声を皮切りに、ツィルニトラがさらなる加速を見せる。振り落とされないように喰らいつくヴィヴル。細い渓谷を2機の竜機兵が飛行する。
数匹の飛竜の横をすり抜けた時、渓谷の至るところから竜機兵達が飛び出し、2機の後に続いた。
『トルテリアの女王を逃すな!!』
『今倒したら本選は楽勝だぜ!』
『うわ〜……セッコいヤツらねぇ……』
ヴィヴルが呆れたように呟く。彼女達のすぐそばをさらに数機の竜機兵達が通り抜ける。
『ギャハハハ!!』
『おいおい! 図体デカすぎて遅ぇんじゃねぇの!?』
『ツィルニトラは私達が落としちゃうから!!』
加速する竜機兵達。無名のヴィヴル達を上位ランカーだと思わなかったのか、竜機兵達は捨て台詞を吐いて加速していった。
『何アイツら!? ツィルニトラの考えも読めないクセに調子乗らないでよね!』
うねる渓谷を右へ曲がり、ツィルニトラが急上昇する。彼女を追うように右へと曲がる竜機兵達。彼らの眼前に突如として岸壁が現れた。
『崖!?』
『ちょ、回避!?』
『止まれないよぉ!?』
慌てふためく竜機兵達。しかし、急ブレーキで止まれるはずもなく、竜機兵達は岸壁へ突撃した。
『うわああああああ!!?』
第一陣が壁に激突し、後方の機体達も止まれずに激突していく。身動きが取れなくなった竜機兵達の元にツィルニトラがフワリと舞い降りる。彼女は、両手の実体剣を構え、技を放った。
『波動斬』
連続で放たれるマナ粒子の刃。それが竜機兵達の首を切り落とし、十数機の機体は、一瞬にして全滅した。
『な、なんて力なの……? これが、トルテリアの力……』
ツィルニトラが真っ直ぐに剣を向ける。その切先がヴィヴルを捉える。
『ふむ。彼らを引き付けていたことに気付き減速したのか。良い判断だ』
『……ホントはもっと力を見せてくれると思ったんだけど?』
『何を言っている? 力ならこれから見せるではないか。私と貴君との戦いでな』
『た、戦い……?』
ヴィヴルが躊躇う。ここでツィルニトラに挑んで予選落ちとなれば、ここまで稼いだポイントが全て無駄になってしまう。そんな思いが彼女に二の足を踏ませる。
『どうした? まさか怯えているのか? 本選に上がろうという者が?』
ツィルニトラの全身からマナ粒子のオーラが湧き上がる。それと同時に怒りも。ヴィヴルの中に怯えが広がっていく。先ほどツィルニトラの実力の一端を見た。今の自分とは何もかもが違うような力を。そんな相手と戦って、万に一つの勝ち目はあるのか、と。
「戦うぞヴィヴル。ここで逃げたら前回より後悔するで。それに、向こうさんは逃してくれる気はなさそうや」
『カズマ……』
「俺の世界にはこんなことわざがある。『当たって砕けろ』。まずはやってみろってことや』
『砕けたら終わりじゃない』
「う、うるさいわ! 俺が言いたかったのはやな……」
ヴィヴルが笑い声を漏らす。精神リンクを通してカズマに伝わるヴィヴルの感情。そこに恐れの感情は消え去っていた。
『ううん、ありがとう。やりましょうカズマ! こんなチャンス滅多にないわ!』
ヴィヴルは、拳を構える。やる気になった彼女にツィルニトラが満足げに頷いてみせる。
『それでいい。それでこそ誇り高き竜機兵だ』
『なーんか偉そうな女ねぇ! その鼻っ柱、へし折ってあげるわ!!』
トルテリアの女王。竜機兵ツィルニトラ。
優勝最有力候補へのヴィヴルの挑戦が始まった。
〜ティアマト〜
私が休んでいる間にヴィヴルさんとツィルニトラ様が戦っているなんて……この勝負、一体どうなってしまうのでしょうか?
次回、 ヴィヴルの挑戦
次回も絶対見てくださいね♡




