第34話 主を倒せ!
「グオオオオオオォォォォオオオ!!!」
アヴェルガが咆哮を上げ、マナ粒子のブレスを連続発射する。スラスターをふかしてブレスを回避。ヴァース・ショットをヤツへ放ちながら距離を縮める。横目でヤツの甲羅を見ると、甲羅から伸びた触手が警戒するようにユラユラ揺れていた。
思った通り。近付けば触手での攻撃を仕掛けて来そうだ。だけど、ヤツはまだ周囲への警戒を怠っていない。もう少し近付く必要があるか。
「ティア! もっとヤツに近付くぞ! 触手攻撃を引き出したい!」
『ふえぇぇ……気持ち悪いですが頑張りますぅ〜……!!』
操作していないのにティアマトの体がブルリと震える。接続率が上がったからか、ティアマトの意思に機体が細かく反応するようになってきたな。……今回は触手への拒否反応だけど。
「信じてる……ぜっ!!!」
ペダルを踏み込む。全開になるスラスター。吹き飛んでいく景色。左腰のワイヤークローを木々に打ち込み、急速巻き取り。機体の軌道を変え、すれ違い様にアヴェルガの首の1つを一閃する。
「ギアアアアアァァァァッ!!?」
森に響く叫び声。しかし、その甲高い声とは裏腹に、首は繋がったままだ。ちっ、頑丈だな。斬り飛ばすつもりだったが完全な切断はできなかった。
「ギオッ!!」
もう1つの首が声を上げると、傷口に魔法陣が浮かぶ。ジュクジュクと傷口が泡立ち、瞬時に傷は消えてしまった。
『アヴェルガは治癒魔法を使うようです! ですが恐れる必要はありません!』
「分かってる。『魔法を発動するということは、隙が生まれるという事だ』……ハインズが修行で言ってたことだろ? 違うか?」
『その通りです! だから隙を突けば倒せるはず!』
ティアマトとの精神が入り混じったような感覚がする。この状況でも疑似的な共鳴接続みたいだな。俺達の間に起きる確認事項や読み合いが短縮され、より機敏に動けるようになった。これなら……!!
〈精神接続率120%突破。全機体性能が70%上昇します〉
「グアアアアアアアア!!!」
アヴェルガが触手攻撃を開始する。接続率が上がって反応速度が上がったティアマトは、俺の操縦へ反応して紙一重で攻撃を避けていく。無数に迫る触手。それを避けては実体剣で叩き斬る。アヴェルガが治癒魔法で触手を再生する。それを繰り返していく。
この時点で、完全にアヴェルガの意識は俺達へと向けられた。
『今のうちです!!』
実体剣で5本の触手をまとめて切断した時、ティアマトが叫ぶ。その声に合わせて、木々の影に隠れていたヴィヴルが飛び出した。
『やるじゃない2人とも!』
「さすがムシュフシュを倒しただけあるで!」
アヴェルガの甲羅へ取り付いたヴィヴル。彼女がその強靭な腕で捕まった竜機兵達を引き抜いていく。さっきの俺達とは違って軽々と救出する様は流石だな。拳で戦うだけあってパワーもある。この配置にして正解だったな。
ヴィヴルが3機目の竜機兵に取り掛かったのを確認して、俺達も本格的な攻撃態勢に移ることにした。
「AI! ヴァース・キャノンを使う! ティア、ヤツへ捕まるぞ!」
『えぇ!? ワザと捕まるんですか!?』
「ああ、ムシュフシュ戦の応用するからな」
言いたい事が伝わったのか、ティアマトが再び体をブルリと震わせた。
『ヒィ……!? 本当にやるんですか!?』
「俺もついてるから大丈夫だって!」
『か、覚悟を決めますぅ……!!』
話しながらアヴェルガのブレス攻撃を回避していくと
、ヴィヴルが最後の機体へ手をかけた。
『これで……最後ね!!』
竜機兵を勢い良く穴から引きずり出すヴィヴル。彼女が、助け出した機体を抱えて後方へ跳躍する。
「よし! ヴァース・キャノン発射準備してくれ!」
〈ヴァース・キャノン、発射態勢へ移行します〉
『ひぃぃい……嫌ぁ……!?』
手元の操作魔法陣を展開する。
「倒すって言った……ろっ!!」
俺は、勢いよく魔法陣の中へ腕を突っ込んだ。
『あっ♡』
突っ込んだ瞬間、精神リンクを通してティアマトが多幸感を抱いたことが伝わる。ヴァース・キャノンは何回やってもこうなるんだよなティアマト……おっと、集中集中。最後の決めだ。気を抜くなよ、俺。
ティアマトを停止させ、右腕の装甲が開く。銃身が展開し、周囲のマナ粒子の吸収を始めた。
「グオオオオオオォォォォオオオ!!」
瞬間、アヴェルガの甲羅から無数の触手が伸び、ティアマトを襲う。
『ひっ♡ 触手が全身に絡み付いてきます♡ 粘液みたいにニュルニュルして気持ち悪い……♡♡♡』
……ティアマトのヤツ、ヴァース・キャノンの感覚と触手への嫌悪感でよく分からない事になってるな。ていうかなんで実況するんだ?
アヴェルガに甲羅へと引き寄せられる。俺達を飲み込もうと甲羅に空いた穴が口を開けた。ヌラヌラとテカる穴では無数の触手が蠢いている。これは確かに気持ち悪いな……。
『あっ……あ♡ 穴に入れられちゃう……♡♡♡』
「おい! 変な事言うなって!」
『変な事? ひっ♡ どういう事ですか? あ♡ ショウゴは、何を想像したのですか?』
くっ!? そんな風に聞くなよ。俺が恥ずかしくなるだろ……!
戦闘中にも関わらず天然なティアマトの質問。俺はそれを全力で回避する事にした。
「そ、そんな事より! チャンスは飲み込まれる一瞬だぞ!」
『わ、分かりましたぁ♡』
触手に引き込まれる。銃口を構え、甲羅の穴へと向ける。まだだ……あの口が最大に開く一瞬を狙え。
「グオォオ!!」
アヴェルガの甲羅が震える。ガパリと開く捕獲口。その中へと照準を向け、トリガーを引く。
「行けえええええ!!!」
マナ粒子の砲弾が捕獲口へ吸い込まれる。数秒の沈黙が訪れる。
『!? 触手の拘束が緩みました!』
全身に絡み付く触手を引きちぎる。捕獲口から光が漏れ出るのを確認して後方へ大きく跳躍する。
「グオオオオオオアアアアアァ!!!」
怒り狂った2つの首がその口へマナ粒子を集める。ブレス攻撃……道連れ覚悟の最後の一撃かよ。
……ん?
視界の隅にギラリと銀色の光が発するのが見えた。
『ショウゴ! 回避を……!』
「大丈夫だ。アヴェルガはアイツらに気付いてないからな」
『え?』
ティアマトの視線を頭上へ向ける。そこには拳を構えて落下する白銀の竜機兵、ヴィヴルの姿があった。
『トドメ頂きぃ!!!』
ヴィヴルの右肘の装甲が展開。彼女がクルリと回転した瞬間、肘でマナ粒子の爆発が巻き起こる。ヴィヴルは加速した拳をアヴェルガの頭部に叩き付けた。
『ガイストクラッシャーーーー!!!』
「ギィッ!!?」
無理矢理口を押さえ付けられるアヴェルガ。瞬間、アヴェルガの体内で膨張していたヴァース・キャノンのエネルギーと、ヤツのブレス攻撃のエネルギーがぶつかり、その体内で臨界点を迎えた。
『ヴィヴル! 逃げるで!!』
『オッケー!』
ヴィヴルが飛翔したのと同時にアヴェルガの全身から光が溢れ出し、モンスターの体は爆発四散した。
「ギィアアアアアアアアアアアァァァァ!?」
絶叫。眩い光と共に爆風が森に吹き荒れ、アヴェルガは跡形も無く消え去った。
◇◇◇
『累計ポイントは〜っと。5800ポイントね。そっちはどうだった?』
「俺達は6500ポイント。悪かったな。トドメ刺したのはヴィヴル達なのに俺達の方が振り分けが多くて」
『ううん。ほとんどショウゴと姫に任せっきりだったしね。ポイントの分け前あるだけで十分』
『せや、5000ポイント超えられただけで十分やで』
謙遜しているが、ヴィヴル達のおかげで俺達はアヴェルガを倒す事ができた。俺達だけならきっと、捕まった人達を助けるのにもっと苦労しただろう。
「あ、そうだ。今の順位はどうだ?」
AIに聞こうとした時、ヴィヴルがあっと声を上げる。
『すごいわ! ショウゴ達1位よ!?』
「え?」
急いでAIに確認する。コクピット内に順位が表示され、AIが読み上げてくれる。
〈データベースと照合します。1位、竜機兵ティアマト6500pt。2位、竜機兵ヴィヴル5800pt。3位、竜騎兵ツィルニトラ5000pt。 4位、竜機兵ブラム3800pt──〉
何度確認しても間違いない。俺達が1位、ヴィヴル達が2位、ツィルニトラとユウが3位になっていた。
「マジか……」
『アヴェルガを倒したことで一気に引き離したみたいですね!』
俺達が1位……さっきはユウ達に届かなくてショックだったのに?
自分の手を見つめる。すると、魔法陣が俺の指をギュッと締め付けた気がした。
『ほら、私の言った通りでしたよ?』
「ははっ……そっか。そうだな……!」
笑いが込み上げてくる。俺自身よりも、ティアマトの方がよっぽど俺の事を信頼してくれてるみたいだ。
なんだか、さっきまでの悩みや焦り、色んな事が吹き飛んだ気がした。
〜ティアマト〜
はぁ……今回はまずかったです。脚がガクガクしてたのをショウゴに気付かれていないと良いのですが……。
な、なんでもありません! 予告ですよね!?
次回は休息回。夜も迫って夜明けまで活動禁止となった私達は人の姿に戻ることに。
ヴィヴルさんの人の姿ってこんな風だったんですね!可愛いです!
次回 休息
次回も絶対見て下さいね♡




