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第28話 竜の姫に俺は乗る!

 ~ショウゴ・ハガ~


 トルテリアから帰国して1週間。気合いを入れた俺達は修行に勤しんでいた。再び訪れた日常。だけど、俺達には1つ変化があった。



「はぁ……あっ♡ ダメです……あ! やめないで……あっあ……♡」


「どっちなんだよ」


「はぁう……!? ん、んん……♡ んう……♡」


 痙攣するティアマトの脚を抱える。あともう少しでいけそうらしい。それまで我慢してやるか。


「う……う、うぅうう、ひぐっ……ゆるして……♡」


「泣くなよ。お前が言い出したんだから」


「う、う、うううぅぅ……がんばりますぅ……あと少し……で……♡」


 ティアマトが体をピンと張る。硬直した彼女の体をしっかりと支え、逃がさないようにする。昨日はここで離したから直前でダメだったんだ。絶対離すか。


 手を伸ばしたティアマトは、目の前にあった木に手を触れた。


「ゴール!! 頑張ったねぇ~姫」


 アンヘルさんの声でティアマトが取れこむ。それにつられるように、彼女の足を持っていた俺も力尽きてしまった。手押し車で敷地内の大木まで移動するなんて無理があるよな。


 だけど、ティアマトが言い出した事だし、それをやり切ったのはホントすごい。帰ってきてから起きた変化はこれだ。ティアマトのやる気が異常に高い。今までもやる気はあったけど、今回は色んなことを自分から率先してやってる気がする。


「飲み物取ってくるね~ビルも呼んでくるから2人は休んでて!」


 屋敷へ走っていくアンヘルさん。それを見送りながら息を整える。木の葉の隙間から見える青い空。そよ風が頬に当たって気持ちいい。ふと横を見てみると、ティアマトが俺の事を見ていた。


「はぁ……はぁ……」


 ティアマトの呼吸音と草木が風にそよぐ音だけが聞こえる。彼女の上気した頬に潤んだ瞳……それを見ているだけで、ティアマトから目が離せなくなってしまう。彼女は何も言わず、ただ俺の瞳を見つめ続けていた。


「あ、のさ……」


 俺は思わず声をかけていた。何か話さなければ、マズイと思ったから。


「なんか、帰ってきてからすごいよなティアマト。やる気に満ち溢れてるっていうか。そんなにトルテリアへ行ったのが刺激になったか?」


「……」


 ティアマトが空を見上げる。彼女の横顔はいつもよりずっと大人びていて、落ち着いているように見えた。



「ショウゴと出会ってから、私のすべてが変わりました」



「え?」



 ポツリと呟くティマト。俺が聞き返そうとする前に彼女が言葉を続ける。


「竜機兵として戦えるようになれましたし、お姉さまの事も分かるようになりました。それに、ツィルニトラ様にも褒めて頂いて……こんな日が来るなんて夢みたい。全部、ショウゴのおかげです」


 ティアマトが俺の手を握る。彼女は、もう一度俺を見た。今度は真剣な表情で。


 ティアマトがスミンの花の髪飾りを撫でる。


「私も貰ってばかりじゃなくて、頼るだけではなくて、アナタの隣にいたい。だから……」


 ティアマトが微笑む。いつもの彼女のようで、少し違う。ゆっくり起き上がって俺の手を引いた。彼女に引かれて俺も起き上がる。


「だから私、頑張ります。ショウゴに相応しい竜機兵になれるように。その、あの、だから……きになって貰えたら……」


 彼女がハッとした顔になって両手をブンブンと振る。


「で、でも今は竜闘の儀です! ショウゴが何も気にしなくて良くなったら私……ちゃんとですね、正式な形で気持ち(・・・)を伝えますから! その時は……聞いて下さいね?」


「えっと、気持ちって?」


 ティアマトが目を泳がせる。彼女はブツブツと呟いた後、意を決したように声を発した。



「鈍感なのは、ダメです」



 突然、俺の両頬にティアマトの手が添えられた。視界が何かに覆い尽くされる。唇に伝う感触に、時間が止まったような気がした。



「んっ……」



 ティアマトの緑色の髪がフワリと香って、俺は何も考えられなくなってしまう。必死に状況を掴もうとしているうちに、彼女の唇は離れた。


「こ、こういうこと……です」


 訪れる沈黙。口を開けたまま何も言えない俺。彼女は、上目遣いで俺を見た。



 え? ちょ、今……キスしたのか? ティアマトと? 俺が……?



 唇が離れてからようやく実感が湧いてくる。顔が一気に熱くなって、頭の中がドロドロになっていく。



「この気持ちを、ちゃんと言葉で伝えますから。だから、待っていて?」



 ティアマトの瞳……俺に断られるなんて微塵も考えていない目。俺を信頼している目。それに釘付けになってしまう。彼女の言葉が、気持ちが、俺の中に浸透していく。湯立っていた思考がギリギリで繋ぎ止められる。


 俺も何か伝えないと思って、でも突然の事で言葉が出てこない。考えた挙句、俺はなんとか声を絞り出す。ティアマトが言おうとしている事を、否定したくなかったから。彼女を不安にさせたくなかったから。


「わ、分かったよ」


 短い返事。ティアマトが嬉しそうに笑う。それを見るだけで心臓がうるさいほど高鳴ってる。俺の答えって……もう決まっているのかも。


 だけど……そうだな。全部決着をつけてから。ティアマトがそう言うなら、もっと考えよう。


「その、グタグタな返事でごめんな?」


 続けて出せた言葉に、ティアマトがゆっくり首を振る。


「そこがショウゴの良いところ、ですよ?」


 俺にとってティアマトがどういう存在なのかをハッキリ自分の中に置きたい。彼女と真剣に向き合って、精神リンクが無くても彼女と繋がっていると思えるようになりたい。


 今は、そう思う。


「2人とも~!! 特製ドリンク持ってきたよ! 飲んだら再開ね!」


 その時、屋敷の入り口からアンヘルさんの声が聞こえた。バスケットを抱えたアンヘルさんが、大きく腕を振って俺達を呼ぶ。その後ろにはハインズが仏頂面で、でも優しそうな目でアンヘルさんを見つめていた。


 ……気を抜くのはここまでだな。


 俺はティアマトの手を取って立ち上がる。10か月後の迫った竜闘の儀へ向かうために。


「じゃあ、修行の続きするか!」

「はい♡」


 こっからだ。俺とティアマト、2人の闘いは本当の意味でこれから始まるんだ。




 見てろよユウ。見てろよツィルニトラ。



 見てろよ、大陸中から集まるライバル達。




 優勝は……俺とティアマトが頂くぜ!!






─竜の姫に俺は乗る! 第一章・完─





 そして、物語は10か月後。竜闘の儀、開催直前より動き始める──。







〜ティアマト〜


 これにて私とショウゴの出会いの物語は完結です。ここまで歩んでこられたのも、ひとえに皆様の応援あってこそ。本当にありがとうございました。


 しかし、物語はまだまだこれからです。ここからは第二部へと入っていきます。まだ見ぬライバル達、ハインズとアンヘルさんを傷付けたイルムガンとの因縁……。


 ツィルニトラ様達との約束。より熱く、より響くようなお話をお届け致しますのでどうぞよろしくお願いします。


 また、作者より皆様へ伝言を預かっております。


『現在第二部は鋭意製作中です。第一部程度の分量が書き上がりましたら再び投稿開始致します。皆様にはご迷惑をおかけしますが、何卒作品フォローをしたままでお待ちください。なるべく早く投稿再開できるようがんばります』


 とのことです。詳しい日取りが決まりましたら活動報告にてお知らせします。


 お待たせしまして申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いします。


 もし、まだの方がいらっしゃいましたら是非評価やレビューなどで応援お願いします。作者一番のモチベーションになるそうなので……。



 それでは皆様、またお会い致しましょう。



 次章も絶対見て下さいね♡



 私からの約束です♡


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