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第17話 初めての出撃です♡

"ヤツら、速度を出しても諦めぬぞ! 鬱陶しいのぅ!!"


 ヨルムンガンドが悪態をつく。敵の発見から数分後、俺達は格納庫で出撃の準備をしていた。


 竜機兵になったティアマトに乗り込み、通信魔法が施されたという兜を被る。こうするとパイロットスーツと合わせて簡易的な鎧着てるみたいだな……ってそれどころじゃないか。


「ティアマト、空賊ってなんだ?」


『空賊は戦艦竜や他の船竜へ取り付いて物資を奪う輩です。ヨルムンガンドに攻撃を仕掛けるとは……よほど自信があるのでしょう』


 精神リンクを通してティアマトの緊張が伝わって来る。国としての軍備になるヨルムンガンド。その機体搭載数が12機……機体10機で攻めて来るってことはアイツらは空賊としては相当数が多いって事だよな?


〈解。通常空賊は3機編成で行動します。10機クラスという事は大規模組織の可能性があります。共有記憶領域を確認──機体・装備に適合情報あり。空賊組織「ムシュフ」だと思われます〉


"ムシュフじゃと……? わざわざそのような名前を組織名に付けるとは……"


 話を聞いていたのか、ヨルムンガンドの声が聞こえる。


「ん? ムシュフってそんなに変な名前なのか?」


『古竜語で「恐怖」を表す言葉です。王族でもない者がそのような言葉を知っているとは思えませんが……』


 ティアマトが考え込んだ次の瞬間、耳をつんざくような雄叫びが聞こえた。それとほぼ同時に艦内が激しく揺れる。


『グオオオオオオォォォォォォ!!!!』


 咄嗟に操作魔法陣を使ってティアマトの右手を操作、壁にある取手を掴む。近くにあった窓から外を見ると、ヨルムンガンドを一回り小さくしたような戦艦竜がこちらへ砲撃を放っていた。


"……やはり。古竜ムシュフシュ(恐怖を呼ぶ者)じゃ! 彼奴め、戦艦竜になっておる。……賊に成り下がったか!!"


『人に飼われたヨルムンガンド!! 情けなや情けなや!! 我が腹に収めてくれよう!!!』


 ムシュフシュの声に大気が震える。うるせぇなコイツ!? ヨルムンガンドが声抑えてるのはこうなるからかよ!


"力の差も分からぬとは。理性も失い、もはやモンスターと変わらぬな"


『ほざけ!!!』


 ヤツが背中にある3門の砲塔から砲撃を放つ。圧縮されたマナ粒子が光の砲弾となって俺達に襲いかかる。


"ちっ、鬱陶しいの!!"


 ヨルムンガンドの翼が大きく羽ばたいた後、体がフワリと浮く。浮遊感を感じた数秒後、再び猛烈な重力が襲いかかった。


「うわああああ!?」

『きゃああああ!?』


 なんとかティアマトに踏ん張って貰う。けど、こんなの続いたら戦う所じゃないぞ!?


"すまぬ皆の者!! 保護術式を多重展開する!!"


 ヨルムンガンドの声と共に揺れが急速に収まっていく。


〈術式の多重展開によりヨルムンガンド体内の内部重力安定。機体の固定は不要です。戦闘準備を再開して下さい〉


 内部重力が安定? ヨルムンガンドの魔法のおかげで揺れが収まったってことか。


 ハインズが各機へ向けて声を上げる。


「この間に出撃準備をしろ! 俺とショウゴ達でヤツらの機体に対処する! ダーナは3機を統制してヨルムンガンドの援護だ!」


「はっ!」


 ハインズの指示でダーナがハッチを展開する。ダーナ機を含めて4機が出撃。彼らに続いて出撃しようとした時、ハインズ機に肩を掴まれた。


「バルランチャーの使い方は教えたな? 実体剣も装備していけ」


 バルランチャー……その言葉でこの2ヶ月で訓練した装備の1つだと思い出す。こういう時に使うための物なのか。てっきりモンスターの捕獲に使う装備かと思ったぜ。


 技術士達の誘導に従って格納庫に置かれた装備を拾う。実体剣をティアマトの背面にあるマルチアームに近付けると、マルチアームが自動で動き、剣の持ち手をガチャリと掴んだ。


 実体剣を背中にマウントし、バルランチャーを抱える。白い筒状の銃身に、カートリッジが付いている銃。なんとなくグレネードランチャーに似てるよな、これ。


「よし、俺がフォローする。ショウゴと姫は先行してくれ。コクピットは狙うなよ。憲兵へ引き渡すからな」

 

 コクピットに攻撃が当たる。それはつまり、人を殺してしまうって事だ。人を殺す……それを意識した瞬間、背筋に嫌な汗が流れた。


『大丈夫ですショウゴ。人を殺す事は目的ではありませんよ? 落ち着いて』


 精神リンクで俺の気持ちを感じてくれたのか、ティアマトが優しい声をかけてくれる。その声のおかげで、俺は落ち着く事ができた。


「……そうだな。ありがとう」


 人を殺すのは怖い。だからやりたくない。俺は甘いか? ガキか? でも、仕方ないじゃないか。異世界に来ても俺は日本人なんだから。人なんて……殺したくねぇよ。


 でも、今やる事は分かってる。ハインズはその為に指示をくれたのかも……なら俺は、与えられた役割をキッチリ果たしてやる。


 手元の装備を見る。バルランチャーに実体剣。装備を上手く使えば、大丈夫。俺ならやれる。事故なんて起こさない。バトリオン・コアだってそういうミッションあったろ? コクピットを狙わず無力化するってヤツ。それと同じだ、ショウゴ。


〈ティアマト・リ・アシュタリアとショウゴ・ハガの精神リンク安定。接続率70%。いつでも発進可能です〉


 AIの声がコクピット内に反響する。ティアマトをハッチに乗せ、スラスターをふかす。心を奮い起こす為に俺はずっと憧れていた言葉を告げる事にした。自分の名前もAIが言うようなカッコ付けた言い方に変えて、ロボット作品なら絶対に燃えるあの言葉を。



「ショウゴ・ハガ!! 竜機兵ティアマト──出撃する!!」


『行きます!!』



 ティアマトがハッチから跳躍し、その翼を展開する。俺達は、戦闘空域へと飛び立った。








◇◇◇


〈敵機確認。距離100。10秒後に接触します10、9──〉


 魔法陣を操作しバルランチャーを抱え、敵機を目視で確認する。ワイヴァルスよりも猫背で、丸みを帯びた青い機体……なんだか手足のパーツに一体感が無い。ツギハギしたみたいだな。


『強奪したパーツで無理やり繕った改造機体。アシュタリアではメンダーと呼ばれている空賊の機体だ』


 兜からハインズの声が聞こえる。背後に目を向けると、俺達の10メートルほど後方にハインズのワイヴァルス・カスタムが飛んでいるのが見える。


 ……フォローはしてくれるって言ってんだ。やるぞ。


〈8、7──〉


 メンダー、か。装備はマシンガンみたいなのを持っている。背中には実体剣をマウント。ここからは見えないけどワイヤークローもあると考えた方がいい。


〈6、5───〉


『銃を構えました。左へ……んっ、んく……っ!』


 姿勢制御スラスターを使用して敵の狙いを撹乱する。途中回転を織り交ぜ右へ。動く度にティアマトが変な声を出す。だいぶ慣れたと思ったけど、やっぱ戦闘になるとこうなっちまうな。


「急な姿勢制御はキツイか?」


『大丈、夫です……気絶しないくらいの体力はありますから』


〈4、3──〉


 ティアマトの事を信じて俺はやれる事をやろう。気を抜くな、集中しろ、俺。


〈2、1──〉


「ちょっと激しめになっちまうけど許してくれよ……!!」

『は、はい♡』


〈0、接触します〉


 AIの声と共にペダルをベタ踏みし、両手の操作魔法陣を思い切り引き込んだ。


『ひぎっ!?』


「耐えろよティアマト!!」


 メンダーの頭上を獲る。メンダーの反応はコンマ1秒遅れ。ヤツが頭上を見上げる前にトリガーを引いた。



『左胸に装甲!? なんで竜機兵がいるんだよぉ!?』



 機体から聞こえる男の声。バルランチャーの銃口から弾丸が発射される。メンダーの眼前で弾丸が弾け飛び、中からヒモ状の物体が現れる。ワイヤーの両端に機械が付いた物体が。それが敵機へ巻き付き、ヤツの足元に魔法陣を描いた。


『があ゛!?』


 巻き付いた衝撃で急停止するメンダー。次の瞬間、メンダーが猛烈な速度で地面へと落下した。


『うわ゛ああああぁぁぁぁぁぁ!!?』


 空賊の絶叫と共に機体が大地へと直行する。そして地面へ激突するかと思われたその時、巨大な風船が機体を包み込み、激突の衝撃を殺した。


 遥か下の草原でゴロゴロと転がる風船。それはやがてピタリと動きを止めた。



〈敵機の機能停止を確認。生存反応あり〉



『やりましたねショウゴ!』


 ティアマトの声が聞こえてやっと緊張の糸が解ける。最初の1体目だからめちゃくちゃ緊張したぜ。


「良かった……最初の機体はなんとかなったな」


 バルランチャー。それは相手を風船で包み込む捕縛用装備。術式に変更が加えられてるのか地面に急降下するとは思わなかったけどな。使い方教えて貰って良かったぜ……。


『油断するなショウゴ。次の機体に向かうぞ』


 ハインズに嗜められた俺は、次の機体へ向かった。







〜ティアマト〜


やりました!さすがショウゴです♡


でもまだ戦闘は始まったばかり。早く空賊達を捕縛しないと!


次回は空賊の視点でお送りするそうですよ?私達に襲いかかった空賊はどんな人達なのか。なぜ襲って来たのか……でもなんだか焦っている感じがありますね?ヨルムンガンドの戦闘もあったり……激しめの回になりそうです!


次回、「戦闘空域」


絶対見て下さいね♡

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