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人を殺めてはいけない理由を考える  作者: 葉加多錬一朗


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3/3

後編

こちらは小説ではありません。小説を読みたい方は(以下略)

 中編では客観的苦痛と主観的苦痛、この2つは別物で客観的苦痛から罪の大きさが変わっていくということや死ぬことによって主観的苦痛は存在し得ないということを軸に話しました。今回はその続きとなります。

 では最後の、客観的苦痛と主観的苦痛によって起こってしまう悲劇とは何なのでしょうか。ずばり、他者痛めつける行為そのものです。抽象的すぎてすぐにはピンと来ないと思うので具体例を示し説明します。

 例えばあなたが学校で先生から体罰を受けたり、クラスでいじめを受けていたとしましょう。このとき自分自身には直接苦痛を被る主観的苦痛が生じます。ですが、苦痛を与える側の先生やクラスのいじめっ子からしたら特に何か苦痛を被っている訳でもありませんし、その様子をただ眺めていたり面白がったりしていれば完全に一方的にただ1人だけが苦痛を被る状態となります。

 もしこのとき、この人は今痛い目にあっててかわいそうだな、辛そうだな、という客観的苦痛を共有できればその人にとっては多少なりとも痛み、苦痛を共にでき1人で抱えることなく分散できるのです。その場では自分にしか分からない主観的苦痛であっても、客観的苦痛によって自分一人で抱える苦痛の量は軽減できるのです。

 しかし、先述したような1人だけが苦痛を被る状態となるとどうなるのでしょうか。その答えこそが中編の最後に出した「無敵の人」であると私は考えます。

 どんな嫌なことをされてるときでも誰も助けてくれない、その苦しさに共感してくれない状況がずっと続いたとしましょう。そんなときに目の前の人が突然ひったくりに鞄を盗られてしまったらあなたはどう思うでしょうか。間違いなく、そいつは今まで何かしら悪いことをしたからそのバチが当たったのだと思うでしょう。なぜならあなたはそのときひたすら一方的に苦痛を負っている状態で、さらに誰かに苦痛を分かり合えたという経験をしたことがないのでひったくりに鞄を盗まれてかわいそうという客観的苦痛、いわば共感ができなくなっているからです。

 誰かと苦痛を分かち合えたことないからということだけで他者が苦しんでいる状況でその気持ちに共感できないと言い切るのは傲慢かもしれませんが、一方的な苦痛しか感じたことがない人からすれば、「自分自身」の痛みを分かってくれない人間は被害者と言える立場でも、苦痛を一緒に負ってくれない自身へ苦痛を与える側の「敵」いわば加害者と同じなのです。

 そういったことが積もり積もって、他者に対する客観的苦痛が完全に0になったところで「無敵の人」になり、別に人が痛そうにしていてもどんなに苦しんでいても自分自身への苦痛はないのでどこまで人を痛めつけても平気になれるのだと思います。

 その人にある苦痛は自分自身に積もり積もった主観的苦痛のみです。もしその苦痛を他者に分かってもらうとしたら、その分直接誰かを痛めつけなければ分かってもらえないのです。

 この考えは復讐による殺人にも共通点があります。自分自身に与えられた主観的苦痛をそのまま返すとしたら、当然ですがその人に直接手を下し苦痛を与えるでしょう。

 

 ここまで罪の大きさや苦痛によって起こること、そして無敵の人が生まれる理由など人を殺めてはいけない理由とは少し反れた話となりましたが、どれにおいても共通することはやったことは巡り巡って自分含め誰かに返ってくるということです。苦痛にせよ、犯罪を犯した結果による刑罰にしても必ず返ってきます。心理学ではこれ返報性の原理と言うそうです。

 このやったことは巡り巡って返ってくるということこそが、人を殺めてはいけない理由ではないのでしょうか。

 誰かを傷つけたり殺めたりして自分や大切な誰かの命を縮めるようなことがあるとしたら。あるいは誰かに与えた苦痛が知らない誰かの手により直接返ってきたとしたら。

 自分や他の誰かを守るために、他の人を殺すのは悪と定義し今日まで私たちは生きてきたのだと思います。痛みを分かってあげることや返ってくるものを一部でも受け取ってあげることによって助けられる存在がいること、そしてそれによって自身誰かの身を守ることができるでしょう。これを読んでいるあなたにできないことではないでしょうから。

コメ欄でみなさんの意見といいね諸々くれるとうれしーです。

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