首輪
次話から牙禅視点になります!
「あっ」
低い声で言われたことに思わず声を出し咄嗟に口に手を当てるも、防毒面の男の眼は聖菜を捉えて離さない。そして防毒面の男は聖菜の腕を掴み自身の目線の高さまで軽々と持ち上げた。
「いった……!離してっ」
聖菜の足が宙に浮きばたつかせるも防毒面の男は微動だにしない。
「貴様の異能を言え」
「はぁっ?っつ……」
聖菜の周りからはどんどん人が離れていく。聖菜の口調に驚きの表情を見せるものや、こそこそと近くの人と話して距離を取るものなどさまざまだ。
ぎりぎりと強い力で持ち上げられ続け聖菜の腕や身体は徐々に悲鳴を上げていく。
「誰っ何っ……離してよっ!」
「言え」
「いっ……分かんないっ……!」
そこで聖菜はふと思い出した。
「じょーっか、浄化系とか言ってたっ」
甜が言っていた「浄化系」と言う言葉が頭によぎる。
その言葉を聞くと聖菜の腕は離され地べたにへたり込む。掴まれた腕は握られた形に赤くなっていた。
「っ……あなた何……?」
聖菜は腕をさすりながら顔を見上げるも、座りこんだ状態で見る防毒面の男が威圧的に感じ、語尾が少し小さくなる。と、防毒面の男の少し後ろにいた別の防毒面の人物が男の耳元に近づいてきた。
「……。正面と左後方から見られています。」
防毒面の男の横に別の防毒面をつけた人物が現れ、小さな声で何かを報告する。
名前を呼んでいたであろう部分は声が小さく、聖菜には聞き取れない。
防毒面の男は変わらず聖菜を見下ろしている。
「面倒な首輪だ」
男はそう言うと聖菜から目を離し、再び歩み始めた。聖菜は慌てて少し横側に移動する。後ろに整列していた他の防毒面の人物達も先頭の防毒面の男に続く。
防毒面の人物達を避けるように離れていた市場の人々は彼らが去ったのを確認すると、徐々に元の位置に戻りそれぞれ再び活動し始めた。
「聖菜様!お身体は?何かされていませんか?」
少し離れたところから莉里が焦った顔をし小走りで近づいてきた。
「あ、うん大丈夫です……ちょっと掴まれただけ。でもさっきの人達って何なんですか?」
同
聖菜は防毒面の男達が去った後を見ながら聞いた。莉里は聖菜の様子を見てほっとする。
「彼らは還同衆と呼ばれてる方達です。構成者全員が異訪人で聖菜様が見たように、ほとんどが防毒面を着けています」
「異訪人……あの人達皆私と同じような人……?」
「はい。時期や年齢は不明ですが皆ここの生まれではありません」
「そう、なんだ……でも急に腕掴んでくるし命令するしここってやばいやつしかいないんですね」
「……?命令とは……」
莉里は聖菜が地べたに座った際についた土埃をはらってくれる。
「なんか異能を言えって。それだけだけどすっごい嫌な感じでした」
「彼らは……礼儀がないとも言われていますから。私存じ上げないのですが、聖菜様の異能について甜様はなんと……?」
「甜さん……あーーなんか浄化系?だって言ってました。珍しいみたいなことも言ってたような」
聖菜の手が止まる。
「それは先ほどの方に伝えましたか?」
「え?はい……まずかったですか……?」
莉里は息を飲んだあと小さく溜息を吐く。
「莉里さん、手は出されてないから大丈夫だと思いますよ」
聖菜の後方から聞きなれない男性の声がした。
「柳さん……聖菜様、彼が甜様が言っていた者です」
「どうも。あなたが聖菜さんだよね。柳ですよろしく」
自身を柳と紹介した男性ははきはきとした声ながら軽い口調で言った。聖菜は軽くおじぎをする。
黒髪の短髪で明るい表情で言う姿はただの好青年に見えた。怖さのない声も相まって聖菜は少し安心したようだ。
「一見分からなかっただろうけどあいつ聖菜さんの首飾り見てたよ」
柳は聖菜の首飾りを指さして言った。
「これですか?」
聖菜は自分の首元にある首飾りに触れる。
「白に紅は甜さんを印象付ける色だから。甜さんの物って言わずとも周知できる優れものだ」
(なんでこんなもの付けるのか分からなかったけどリアルに効果のあるお守りってこと……?)
「でもぶつかった時は少し肝を冷やした。普通ならそこで終わってる」
聖菜は意味が分からず呆けた顔で柳を見た。
「例えばあそこにいるような普通の民がぶつかってたら、即切られていただろうね」
柳は市場を行きかう人々を指さして言う。
「え……ぶつかっただけで?」
「そう。彼らはそういう人だよ。僕たちを人だと思っていないんだ。元を辿れば僕たちが悪いんだけどね」
「……ここの人達って倫理観どうなってるんですか……」
「はは、異訪人は皆同じような反応をするから面白い。さて、莉里さん今回は黙っておきます。でももう少し慎重に動かないと甜さんに見限られちゃいますよ?」
「……ご忠告感謝いたします」
莉里は柳にそう言うと、娼館の方に戻っていった。
「それじゃ早速行きましょ」
「どこにですか?」
「僕達の訓練場さ。聖菜さんが異能持ちなのは分かったけど実際どう使うかはまだ分からないだろ?僕は指導するよう言われているんだ」
「なるほど……」
「聖菜さんはまだ分からないと思うけど、ここは完全に弱肉強食の世界。弱い者は強い者に捕食される。そうなる前に聖菜さんには甜さんの力になってもらわないとね」
聖菜は柳の軽い口調でつらつらと並ぶ言葉に怖さこそ感じないものの、感情をあまり感じとれなかった。
「あと次に彼らを見かけたら近づかずに離れていた方がいい。手を出さなければこちらにも特に何もしてこないから」
柳の言う彼らというのは先ほどの防毒面の集団を指していた。
「あの……身の回り品を買うみたいに聞いていたんですけど……」
「それは後にしましょう。ちょっと目立っちゃったしね。今も何人か好機の目で見てるし落ち着いたときに来るほうが良さそうです」
そう言われて聖菜は当たりを少し見回す。市場は来た時と同じ活気を取り戻してはいたものの、数名聖菜のことを見てこそこそと話しをしたり指を指したりしている。
居心地の悪さを感じた聖菜は柳の言うことに大人しく頷き、市場を後にすることにした。
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