報告
あけましておめでとうございます。
ちと短くなっちゃいました。
「入り」
聖菜から目を逸らし返事をする甜。
「はっ」
部屋の外から聞こえた声の主が返事と共に扉を開け入ってくる。
しかし中に聖菜がいると思っていなかったからか一瞬動揺し動きを止めた。
「申し訳ありません、お話中とは……」
「ええよ、もう終わりやったから。莉里いる?聖菜の服見繕ってあげて。生活に必要なものもね。用意できたら柳に引き継いでくれる?」
甜は椅子から立ち上がり莉里を呼んだあと、小さな声でやりとりをして聖菜を連れていくよう促した。聖菜は急に人が増えおどおどとしながらも莉里に付いていく。
その姿が見えなくなるのと同時に甜は男に話すよう指で促した。
「では報告いたします。本日甜様を襲撃した賊は朱弥の刺客でした。遺体を解体中、心臓付近から……その……こちらを発見いたしました」
刺客を処理した男は言いにくそうな声で言いながら、赤い何かを甜に差し出した。出てきたのは1枚の紙。血液で赤黒く染まっているが、焦げた文字で『兎は巣穴に籠ってろ』と書かれていた。
「こんな熱い恋文わざわざ届けてくれるなんて、そこまで好かれてとるとは知らんかったわ」
兎とは甜の見た目を指している。真っ白な白髪に紅い瞳。筋肉のついた長身はとても兎には見えないが、見た目の特徴からか四十国では朱弥のみが甜に対しそう呼んでいた。
「そんなに俺らのことが気になるのかねぇ。あちらさんから見たら俺はまだまだひよっこに見えると思てんけど」
朱弥は組織の名称だ。四十国の中でもかなり力を付けてきており、構成員のほとんどが甜と同じ異能持ちで暴力と力を行使する武力組織。その中でも他人の身体に自由にものを出し入れできる異能持ちを甜は知っていた。
「あんたは思っている以上に目立つと思うけど?」
扉の外から中を覗いていた女性が言った。
「トーコさん」
透子と呼ばれた女性は赤茶の長髪で、すらりとした細身の洋袴に身を包んでいる。半分の襟が白でそれ以外は全て濃紺色だ。茶色の瞳に切れ長の目に鼻筋が通った顔をしている。
「甜が来てから変わったことがどれだけあると思う?少なくとも私達がいる地区の治安は他よりもかなり落ち着いた。そしてあんたに感謝する人間が増えに増えていろんな人に様付けされてるじゃない。この国で様付けされる人がどれだけいるか分かってるの?」
「さぁ、ようさんいるんやないですか」
甜は透子に紙を指で挟み差し出しながら言う。
起きろひ
「尊敬や期待を込めて呼ばれる人なんて限られる。ほんの一握りよ。」
透子は紙を受け取り書かれた内容を確認しながら言った。
「へぇ、僕そんなええ人やないのに」
「……そういうところも含めて目立ってんじゃないの」
透子は眉を潜めながら半分呆れたような声で話を続けた。
「で、これどうするの?」
透子の問いに甜は微笑んだ。
「僕って僕のことを好いてくれる人には応えたい人間なんです。情熱籠った恋文もろたらお返事せな。ほんでまた返事してもろたら嬉しいやんなぁ。なんべんもやり取りして離れとる時間が多ければ多いほど、やっと会えた時の感動も格別ですから」
淡々と言い続ける甜の声色には嬉しさや愛情は感じられない。
「まぁほどほどにしときなさい。あんまりやりすぎると動きにくくなるわよ」
「そりゃ間違いない。何より怒らしたトーコさんが1番怖いやからね。ところでトーコさん僕なかなかええもん見つけてん」
「さっきの女性のこと?」
「そそ。聖菜言います」
「あぁあんたがそうやって言うってことは異訪人ね。あれは使えるの?何の力もないなら繁殖に回しましょ」
「待った待った、トーコさん勘違いせんといてください。聖菜はもう僕預かりやから。手出し無用ですよ」
にっこりとほほ笑んだまま甜はトーコに向かってはっきりと伝える。透子はその言葉に少し動揺したようで、組んでいた腕が外れていた。
「あんた預かりってその女何者……?」
「トーコさんだけ特別。聖菜は浄化系の異能持ちですねん」
「!!」
「僕らに必要な人やから、勝手なことせーへんといてくださいね?」
「そう……ずいぶん良い拾い物をしたのね。ただ私が黙っていてもいずれすぐに知られるわ」
「重要さを理解してくれてるトーコさんなら知られる前にいろいろ準備してくれるかなー思てます」
甜は自分のものに手を出されるのを酷く嫌う性質だ。異能が役立つうちに聖菜に手を出せば身内でも徹底的に潰すという脅しだった。
透子は甜から見ても分かるほど嫌そうな顔をする。
「あんたのそういうところほんっとに嫌い」
「僕はトーコさんのそういうとこ好きやで」
沈黙で返事を返す透子。
「それで用事は?ただいちゃもん言いに来ただけやないやろ」
「……そうよ。偵察部隊から連絡が入った。東間が死んだらしいわ」
「誰やっけそれ」
「従順な繁殖用を作るのに秀でていた男よ。牙禅ってやつが殺したらしいわ」
甜の動きが止まる。少し考え込んでいるようだ。
「牙禅なら俺も聞いたことあるわ。戻ってきた繁殖用がつぶれる前に言うとった名前や」
「東間は腕の立つ男ではあったから少し気になってね……。今後も少し様子見ておくから覚えておいて」
透子はそれだけ言うとさっさと部屋を出ていった。
「牙禅くんかあーーどんな人なんやろ。俺と同じだったらええなあ」
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