こうして勇者は闇堕ちする 第三部
こうして勇者は闇堕ちする 第三部
「ヴィルヘルム様。リュート・エバレットが謁見に参りました」
「通せ」
中から声が聞こえ、扉が開く。
王の前に跪く。
「400年前、世界は突如闇に包まれた。しかしこのレイト王国は特殊な結界を張っていたことにより、辛うじて生き残ることができた。そしてなにより、代々この国にて継承されていた『勇者』を守ることもできた。じゃが…」
王は深く息を吐く。
「リュート。そなたも知っての通りこれまで『勇者』は常に非業の死を遂げておる。諸悪の根源は全てあの魔王シューヴェルトにある。奴が大地を枯らし、結界外の世界を闇に葬ったのだ」
「はい…」
「リュートよ。今度こそ…今度こそ…頼む。ニュートの無念を....いや、それだけではない…この世界を救ってくれ…」
「心得ました。ええ。任せてください。我々『勇者』の一族の無念を必ず晴らし、世界の秩序を取り戻します」
僕は家に戻り、準備を整えて、街から出る。
「ついに行くのね」
後ろから呼び止められる。
「エレナ。うん。行ってくる....」
「何が『行ってくる』よ」
「…?」
「決まってるでしょ。私も行くわよ」
「本当か?それは心強いけど....でも…死ぬかもしれない…」
「勿論。今回運よく勝てるかも何て思ってないわ。負ける可能性の方が高いとも…だからこそ…あなたを一人でいかせるわけにはいかないでしょ」
「エレナ…」
「ちょっとまてぇい!!」
「はぁ…はぁ…」
「ライアン!ユル!どうして…」
「どうしてじゃねぇよ!なんで勝手に二人でいい感じになってるんだよ⁉」
「…僕たちも行きますよぉ」
「....覚悟は」
「当たり前だ」
「もちろんです」
「....結局みんな一緒だな。じゃあ行こうか」
この4人は幼なじみで小さいころから今までいつも一緒に遊んだり、パーティーを組んで街の外に行ったりした。
3人がいるとはとても心強い。
目的の場所。魔王の城に向かう。
砂漠を越え、雪山を越えて、森を抜けて、海を渡り、ついに魔王の城に着く。
「くっ…さすがに魔物が多いな…」
ライアンが言う。
「そうだね。でもこの四人なら…」
「ええ。楽勝ね!」
…突如あたりが光に包まれる!
「転移だ!」
ライアンの声が聞こえた後、どこかに飛ばされる。
…?みんなは…?
「よくここまで来たな。俺は四天王の一人。カクロス。見た所お前が一番強そうだからな。一番強い俺が相手をしてやるという訳だ」
後ろから声がした。
「…そこをどけ。俺は魔王を倒しに来たんだ」
「お前には無理だ。あのお方は誰にも倒せない」
「だとしてもそれが諦める理由には...ならない!」
『ヘヴンズレイン』
「お前…光属性か…!いや、まさかな…」
『フレア』
「くっ…」
「どうしたどうした?もう終わりか?」
「おれはみんなの為に…こんなところでは終われない!」
『ヘヴンズソード』
「…速――」
ザシュ!
「うわあぁあああああ!」
四天王が倒れる。
「そんなに強くなかったな...........まぁいいか...........」
僕は構わず先に進む。
「みんな!無事だったか!」
「あぁ、何か思ってたより強くなかったわ」
ライアンが言う。
「えぇ、そうね。でも次は魔王よ。気を引き締めていきましょう」
エレナが言う。
「あぁ。これで最後だ!」
魔王の間にたどり着く。
「ふっふっふ。よく来たな」
「シューヴェルト!貴様をここで討つ…!」
「父親にそっくりだな...........お前は。弱かったよ。あいつは。お前らもきっと弱いんだろうなぁ。せいぜい楽しませてくれよ」
『アイス・フロスト』
『ギガ・ファイア』
『ウィンド・カッター』
『ヘヴンズソード』
…!
「......うわあああ!」
魔法攻撃が返ってくる。
「効かんな...........」
「もう一度!」
『アイス・フロスト』
『ギガ・ファイア』
『ウィンド・カッター』
『ヘヴンズソード』
「......うわあああ!」
「おい、効かんと言っているだろう。もういい。貴様らの遊びに付き合うのも飽きた」
『ブラックアウト』
『ギガフレア』
『ハイドロレイン』
『濁流』
『リゲイン』
『ギガフレア』
『ホーリーランス』
『ジ・エンド』
「.......…え」
刹那、意識が飛ぶ。
「…死んだか」
「くっ..........」
「おお、まだ生きていたか..........」
「エレナ?ライアン?ユル...?おい、起きろよ..........」
三人が血を吐いて倒れている。
重症だ…
「もう死んでおるぞ。お前ももうじき死ぬ」
「まだ終わって…」
「足元を見よ」
…!足が壊死して…
「もう歩くこともできまい」
「あぁああ゙あ゙あ゙!、痛たい…!」
「せいぜい苦しんで死ぬがいい」
「.......…みんな、限界なんだ....お前がいるせいで…街の結界の外では作物が育たない…お前がいる限り…街の不幸は終わらない」
「..........ん?おい、何だその光は?」
「俺はここで!お前を倒す!絶対に!父さんをみんなを殺したお前を許さない!」
「…!早く始末せねば…」
『ジ・エンド』
「ぉぉぉぉおお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!」
[能力『勇者』は『光の勇者』に進化した!]
光の勇者:当能力保持者は対象者の能力・スキルを無効化することができる。過去に受けたダメージも無効化することが可能。尚、当能力保持者は自身を対象者とすることはできない。
「足が…戻っている…!」
「何?攻撃が…効かないだと…!」
『ヘヴンズレイン!』
「あぁああ!まだ、まだだ…」
『ブラックアウト』
『ギガフレア』
『ハイドロレイン』
『濁流』
『リゲイン』
『ギガフレア』
『ホーリーランス』
「..........効かないよ。お前は能力に頼りすぎた」
「馬鹿な…ありえん…こんなことが…!」
「これで終わりだ!」
『ヘヴンズソード』
「待て…待ってくれ…殺さない方がいい…思い出したんだ…殺せば…酷い目に…あう…」
僕は魔王に近づく。
「ふざけるな。世界を荒廃させ、仲間を殺したお前の言うことなど聞かない」
「あぁ…」
「終わりだ!シューヴェルト!」
「…………セナ」
ザシュ!
魔王の息の根が止まる。
「やった…あぁ…ついにやったよ…父さん…みんな…」
エレナ…
ライアン…
ユル…
みんな…ごめん…守れなかった…
ごめん…
帰ろう。故郷に。
ようやく平和が訪れ――
[能力『簒奪者』を得た!]
「…は?」
[能力『二者択一』を得た!]
[能力『超回復』を得た!]
[能力『堅牢無比』を得た!]
[能力『不老』を得た!]
[能力『反射』を得た!]
[能力『未来視』を得た!]
「なんだ…これは?」
[能力『ジ・エンド』を得た!]
リュートは未来を垣間見る。
「.............何だこれ…なんで…」
「どうして……悪夢は……終わらないのか…?」
『勇者』を待つ◀
逃げる
こうして勇者は闇堕ちする
完