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数学弱者の最終定理 ~異能力バトルに数学って厄介すぎるんだが~  作者: 二毛作


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9/27

9初のデートは痛みと共に

 なんだこれ、エンコン専用の駆除部隊が出張ってきた?いや、それにしてはさっきの一人は明らかに僕を……


 そんなことを考えていると、後ろから僕の方へと走ってくる足とが聞こえた、すぐに振り返るとすでに警棒を振り下ろすようなところだった。すぐさま前のほうへ飛び込むようにしてジャンプしてかわす。飛び込み前転のようにして回転してから体を起こすと明らかに僕をピンポイントで狙った攻撃だったことが明らかだ。


「な、何すんじゃぼけぇえええ!!」


 ちょっと声が上ずっていたけど、威嚇の意味も込めて罵倒してみた。きっと何の意味もない。


 予想通りなんの反応も見せない。それどころか警棒を構え直し僕の方に距離を詰めてくる。もう一人は確実に僕の方に狙いを定めて銃を構えていた。


「クッソ!!」


 鞄をかけなおして走り出した。アーケード街みたいなところだったはずだが、そこにもさらに細くなった小道がいくつかある。その先に行き止まりがないことを祈りながらそこを目指して突っ走る。


「ぶっへぇ!!」


 曲がろうとした矢先、急に壁に激突したようにして僕は後方に弾き飛ばされた。一体なにかと思ったら、そこには少し体格のいいトカゲが人間のサイズで直立二足歩行したような生き物が立っていた。それは目に当たる部分が見当たらなく、口からは何故か寒くもないのに白い息が漏れ出ていた。


 うわ、臭そうとか一瞬思ったものの、すぐさま本能的に嫌悪感と危機感が襲い掛かる、すぐに立ち上がって逃げようとするところに再び銃声が鳴り響く。


 目の前の生き物に当たると一瞬怯みはするものの、大したダメージがないのかすぐに打ったSP風の男のほうに顔を向けた。目が見えないと思っていたがそれ以外の器官が発達しているのか、きっちりと銃を撃ったやつの方を向いていた。


 次に僕に襲い掛かったのは風圧と礫、腕で顔面を防いでいるつもりだが、それでも小石などが混ざってちょっと痛い。そのトカゲが向かったのはやはり先ほど銃を撃ったSPの方。とがったご自慢の爪で切り裂こうとしたのか右腕を振るうも、SPはその場で転がってその攻撃を回避すると立て続けに3発撃ち込む。


 トカゲはハエでも止まったのかと言わんばかりに右わき腹に撃ち込まれた銃弾をかゆい部分を搔いているいるかのようにして払う。3個分の銃弾の落下音がむなしく響くが、それを見てもSPは攻撃をやめることは無く距離をとりつつ、銃を撃ち続けた。


 一方で、警棒を持ったSPはどこかに連絡をしているのか、耳に手を当てて襟を口元に持っていて何か話していた。おおやっぱりSPじゃないか、SPらしいよねあの連絡の仕方。


 その間にももう一人のSPはリロードを挟みつつ銃を撃っていた。トカゲからの攻撃をうまい事交わしているが、アーケード街の壁やシャッターに刻まれた爪痕を見るにあれにやられたらひとたまりもないというのがわかる。


 その時だった、銃を持ったSPの前に何か数式のような記号の羅列が現れた。あれは「w∈A」?なんだったっけあれ、確か数学Aの集合で習ったような気がする。もう昔の事なので大学受験直前まで綺麗さっぱり忘れていることだと思ったけども意外と要素は出てくるものだな。


 その式が解けていくように消えると、SPたちの手にはなぜか日本刀が握られていた。鞘から抜いて鞘を投げ捨て、両手で構えをとった。しかし、なぜかその日本刀が何かただの鋼で出来た刃物という感じがしなかった。何かの違和感というか、何か手を加えられたような。


 キリキリとした痛みが頭に走ったが、それどころじゃない、これに気を取られていたらトカゲかSPのどちらかに命を取られる。しかし、気になるのはあの日本刀だ、目にするたびにただの日本刀じゃない感じがひしひしと伝わってくる。


 どうしてか、明華のあの赤い靄と近しい威圧感がある。多分あれがエンコンに効果的にダメージを出せるものなのだろうだからあれを手にしたのだろう、ただ問題はあれが一体どこから来たものなのかという事。出てくる前に見た式。何か、思い出せそうなのに思い出せないもどかしい感じ。答えまでたどり着けそうなのに。


 どうやって逃げようか、今トカゲとSPがやりあっているならこのまま距離をとってしまえばいい。でもこの場所がただの場所じゃない。多分あのコンビニのように、明華が何かした時みたいに何かがおかしいんだ、なにかが異常なんだ。何かを治さなくちゃいけない。


 僕が何かをほころびを直して……ここから抜け出さなくちゃいけない。その原因を見つかなくちゃいけない。


 最後はほぼ直観だった。何かを直して脱出する。たった1度の経験しかないのにほぼ確信めいたものがあった。そうあの時の、式が破綻しているものを直す、イコールで結べるような、きちんとした連続性と規則性と、繋がりを作る。


 すぐさま走り出した。しかしもう一人のSPが僕の行動に気が付き後を追いかけるような形でこっちを追いかけてきた。


 止まるな!違和感だ、違和感だけを頼りに探しだすしかない!!


 アーケード街をほぼ一直線に走る。なぜか、SPは僕の時だけは日本刀を構えない。それどころか拳銃もただの威嚇射撃化のように近くのごみ箱や看板をわざと狙っているとしか思えない場所を打っている。どういうことだ、殺さずに生かして連れて来いとか言われたのか?それはあれかい?臓器売買とかそういうことに使いたくて僕を捕まえようとしてるとかですか?


 銃弾が電柱に当たった時である。そこに何か違和感を感じた。ピントの合わない眼鏡をかけているときのように、光というか光景が歪んだような感じがした。多分ここを直したら……


 なんてことはなく、薄い膜を破るかのようにしてさっきのトカゲと同じやつが現れた。もしかしてエンコンってこういう現れ方するの?今のはない?この瞬間に生み出されたとかなの?ん?ということはそこがエンコンの発生源として異常が起きている根本原因だったりしないのかな?


 でももしそこが原因だったとしてもこのトカゲをどうにかしないと探る事すらできない。ここはSPにこのトカゲを押し付けて遠くへと言ってもらうのが得策か。


 そう思ってSPの方を見ると、僕の考えが伝わったのか、それとも初めからトカゲが見えたあたりから用意していたのかわからないけどすでに日本刀が握られていた。やっぱりあれは対エンコン用の武器とみて間違いないだろう。


 トカゲをSPに気が付かせるため、SPのほうへと向かって走り出す。この行動が予想外だったのか、SPは慌てて警棒を手にする。やっぱりどういう訳か僕を殺すわけにはいかないようだ、そうとなればこっちの物、後ろのトカゲが僕の後を追ってきていることを確認して。


「用意するのはそっちであってるのかなぁ!?」


 そんな挑発じみたことを言ってSPの寸前で向きを変える、壁を蹴ってそのSPを追い越す。これで後はSPによろしくお願いする。そう、これはMMORPGとかで嫌われるトレインと呼ばれる擦り付け行為だね。良いこのみんなはゲームはルールとマナーを守って楽しくやろうね。


 これでしばらくはSPがトカゲの注意をひてくれるはず。そうすればどうにかあのトカゲが入ってきた辺りを調査できるだろう。


「ウッグ!!」


 そう思った矢先、後方からうめき声のようなものが聞こえた。ゴミ箱の陰に隠れてから少しだけ顔を出して様子をうかがうと、トカゲに体当たりされたのか、SPが腹のあたりを抑えていた。それから、一発銃を撃って、ひるんだすきに距離をとった。またしてもあの数式が現れてから両手右手に日本刀が握られていた。


 どういう事なんだろうか、なんかファンタジーなことが起きているとは思うけど明華のようなものとは全然別物だ。こういうファンタジー的なものって火とか水とかなんかそういうものが出てくるもんじゃないの?武器召喚が基本なんですか?


 トカゲの爪による攻撃を日本刀で受けて、銃撃でひるんだところで日本刀による攻撃、そんなパターンができ始めていた時だった。この隙をついて先ほどの場所に向かおうとした。


「なんか相当ここに近づいて欲しくないみたいですねぇ」


 まるで僕が来ることを拒むかのように、あと数歩のところでまたしてもトカゲが生み出される。これ何か人感センサーみたいなの仕込まれてたりしない?しかも今回は白い息だけじゃなく涎まで垂らしているときた。これは僕を貴重なタンパク源と捉えられてもおかしくない。


 鞄の中に何か戦いに向きそうな物あったかなと、距離をとりながら鞄の中を漁ってみるも教科書と弁当箱、それからあるのは筆入れくらいで、筆入れの中にカッターでもあればよかったのに、生憎とそんなものを持ち歩く僕ではない。


 さて、このエンコンに向かって今僕ができることと言えばなんだ、逃げるだけでは、いつまでも追いかけてくるのが容易に想像がつく、加えてSPは2人しか確認出来ておらずここで誰かにトカゲを擦り付けるなんて言う作戦は使えない。つまり、逃げながらあの違和感の感じた場所から離して、空いた時間でその場所の調査をするというのが現実的だろうか。


 そうするとやはりそのトカゲが出てくる時の違和感、やはりあそこに何らかの手がかりがあるとみるのが正解のようだろうが、この一体のトカゲをどのようにして引き離すか、先ほどのトカゲの行動からして、そこまで速度はない、おそらく僕の方が早いというのは間違いない。ともすれば距離をとって引き離す。


 次の瞬間5メートルほどの距離は取れていたと思っていたのだが、まさか、一回の跳躍で僕の目の前に着地されてしまう。まずいこのままだといくら距離を稼いだところでその跳躍だけで一気に対ロを絶たれるのは目に見えている。


 どうする、素手でしか攻撃の方法が見当たらない、その辺にあったコンビニ前に置かれていそうな吸い殻入れを持ち上げてトカゲに向かって投げつける、そうするとそれをいとも簡単に爪で引き裂かれてしまいちょっとしたすきを作るにも何も効果を発揮していない。


「なんだってこんな変なところに変な生き物が出てくるんだよ」


 不満を口にしたところでないも変わらない、あたりからは銃声や爪と日本刀がぶつかるような、金属音に近い音が鳴り響いている。このアーケード街には僕たちしか存在していないのではないかと思うほどにそれ以外の音は聞こえてこなかった。


 おそらく2人のSPもいまだトカゲとの戦闘中で、こちらへの増援は見込めない。どうしたら……。何をするどうするどうやって抜け出す!?


「あー。あたしが出張ってくる予定じゃないんだけどなぁ」


「どうして……モカさん?」


 オーバーサイズの服とサングラス、スケボーとかやっていそうな格好の女性が、薄ら笑いを浮かべたまま僕の前に立った。しかもあのトカゲを見ても何も驚かないどころか、少しめんどくさそうな顔をしていた。


「ちょっと、荒っぽくするしかないか」


 そして僕の方を見ると。


「惜しいところまで来てそうだけどまだなんだ、君は本当に面白い未だ定義すらされてないなんて」


 どういうことだ?定義?僕の定義って何ですか?ヒト科のオスです。いや、きっとそういう事ではないんだろうけど。


 するとモカさんは首からかけていた犬笛のようなものを取り出しそれを吹いた。おそらく僕ら人間の耳には聞こえていないのだろうけども何か音が鳴ったのだろう。空間がジリっとゆがむ気がした。それに伴い画面酔いのような感覚が一瞬襲い掛かってきたが、モカさんの目の前に数式が現れる。


 「A⊂R」確かあれは部分集合の文字だったはず。なんでそんなものがモカさんの目の前に現れてたんだろうか。


「割と距離離れてるねぇ、ちょっと疲れちゃうじゃん」


 そんなことを言うが声に疲れは一切感じない。首を一回しして準備運土でもするかのように手をブラブラとさせる。さながら100M走の出走前の選手かのようだった。その格好で100M走は向かい風がきつそうですね。


「今だ」


 モカさんが言った次の瞬間、排水溝に水が吸い込まれる時のように空間が混ざるようにしてゆがむ。そこの空間には先ほどモカさんの前に現れた数式が青く発光していた。そしてそれが落ち着くと、トカゲを羽交い絞めしているSPと、爪と日本刀で鍔迫り合いのような状態になっているSPが現れる。


「お疲れさん」


 そういってモカさんの胸のあたりに何かが溶け込んだあれは「Φ」?どういう意味なんだろうか。


 地面を蹴ってモカさんが一気に距離を詰める。その速度はあの時の明華と同様人間とは思えないような速さだった。羽交い絞めにしているSPの手から日本刀をとると、そのままSP事一気に切り裂く。そしてすぐさま手首を返して、つばぜり合い状態のトカゲの腕を切り落とした。


「え、はっや」


 僕は剣道とか、剣術とかは全く造詣がないけれど、それもただの一般人があんな速度で、キチンと綺麗に切れるとは思わない。やっぱり明華同様何かしらファンタジーなことが起きているのは明白で、あろうことかモカさんまでそちら側だという事。


「そんじゃおつかれ~」


 そんな軽いノリでトカゲの首を切り落とした。2体のトカゲがいくつかの光芒となって霧散していく。そして生きていた証を残すといわんばかりに代わりに石ころのようなものが、重そうな音を立てて落ちた。


 残すのはあとトカゲ1体、そういったところでモカさんは日本刀を投げ捨てて手を2回ほどたたいた。するとSP二人の頭の上に「=Φ」と表示されそれが青く光るとそのSPたちがこれまた空間に溶けていくようにして姿を消した。


 もう驚かないと思っていたけどやっぱり無理。どこ行った?今のSPって昔の忍者みたいにすぐ隠れることができるの?これが訓練されたエンコン討伐部隊ってことですか?


「さて、阿智良湊君」


 僕がそんな光景に呆けていると、モカさんがこっちを向いて僕に話かけてきた。


「こんな形でのデートになるとは思わなかったけど、今日が初めてのデートってことで」


 ええ?こんな形のデートがあるんですか?事実は小説よりも奇なりっていうけど、本当にそんなことありえるんだな。というよりもこれはラブコメフラグですか?判定をお願いしたいんですけどVARはありますか?


「君があのトカゲを倒してよ」


 にこやかな笑顔でそう言ったモカさん。これはVAR見るまでもなくラブコメフラグじゃないです。

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