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数学弱者の最終定理 ~異能力バトルに数学って厄介すぎるんだが~  作者: 二毛作


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8/27

8覚悟を決めても自覚が足りないことはあるって誰かが言ってた

 モカさんと知り合った翌日、なぜかいろいろとモカさんから聞かれたり晴斗から「モカさんに狙い変更するのか?」みたいなことを聞かれたり、一路からは「ウンチめっちゃ出た」とかいうどうでもいい連絡が来たりとしていたら夜更かししてしまい、ラブコメフラグを建設する目的は全くないのに、遅刻してしまった、しかもよりによって担任長枝の授業つまり数学の時間についてしまうという最悪な時間だった。


「遅刻が得意だなぁ阿智良」


 まだ長枝が笑っているという事なのでこれは今日は許されると見た。


「ついでにこれ解いてみろ」


 全然許されていなかった。おい授業受けてないのに解けってなんだよ、予習するのは当たり前です。え?解けない?君はバカだなぁ、東大に行けという長枝からの熱いメッセージを受け取った。そんなわけはない。


「うーんこれは」


 あれこれくらいなら解けるわ、これ絶対答えがこのあたりに着地する形してるもん式がもうそういってますね。これこれ、僕が数学解けるときの感覚って着地点が見えてる感覚があれば解けるし見えなければ解けないのですっぱり諦める。そして残り時間で何とか頑張ってみる、そして大体解けない。


「1がπ/3で2が5π/6ですね、ちなみにここで言うπは卑猥な意味のπではないので校則違反には当たりません先生」


「何をいつも通りアホなこと言ってるんだ」


「おっと?教師による暴言か?」


 こんなやり取りでクラスにひと笑いが起きる。なんだかんだ長枝は僕のこと好きだろ、知らんけど。でさっき答えたのは正解なんですか?僕としては結構自信あるですけども。


「ふむ、すごいなよくわかったな、座ってよし」


「アザス」


 いえーい正解んぎもっちいいい!!勉強は嫌いだけど問題を解くのは好きなんだよね、正解できる問題のみに限るけど、そんな浮ついた気分で自分の席に向かう途中にちらっと明華の方を見た、この間のマリアさんから言われたアドバイス通りどうにか明華と仲良くなりたい、多分あのユリスさんとマリアさんが言っていたことは明華にもかかわるような事なんだと思う。


 しかし意外なことに明華は頬杖をついてはいるものの僕の方を力ない目で見ていた。まぁ別に教室で一旦注目を集めていたからそれで見ているというのは分かっているんだけど、なんというか初めてあんな目を見たなって感じだった。なんていうか――。


 そうすると明華の左手首よりも少し腕のほうにやけどのような跡と、長い髪で隠れていたけど右頬に切り傷のような跡を見た。その場で止まるわけにもいかず、なぜか僕が目を離してしまい、自分の席についてそそくさと授業の準備をした。


 なんだ?まさか明華がエンコン相手に怪我をした?あんなに圧倒的な強さだったのに傷が残るくらいに押されたってこと?でも、エンコンがこの間のような奴だけってことはあるか?何種類かタイプが違うやつがいるっていうのはそこらのファンタジーではお馴染みでは?たまたま相性が悪かったとかそんなことがあったのかもしれない。


 いやな考えが頭を駆け巡ったがひとまず学校に来るくらいには回復、または異常がないという事なのだからそこまで焦ることは無い。でもこれで明華はやっぱり僕の知らない間にもあのエンコンと戦ってるってことだ。何のために?たまたまあんなファンタジーな能力を持ってるから?そもそもなんで明華なんだ?だからさっきみたいな……。


 自分の席から見る明華は後ろ姿しか見えないが、どこか痛むといったような感じは見受けられなかった。だから今日もう一度明華に、そしてあのマリアさんが言って僕が感銘を受けた言葉を伝えるのがいいのかもしれない、今日がそのタイミングだったんだと僕の頭と心が初めて一致した答えを出した気がした。


――――――


 昼食もそこそこに僕は明華を探しに構内を散策していた。一路も晴斗ももう慣れたといわんばかりに「さっさと行かんかい!」みたいに逆に檄を飛ばしてきたまである。そしてクラスの人も「お、またしても阿智良が行くぞ」みたいな一種のイベントみたいなことになっていた。もうクラス公認の片思い男子みたいになってる気がする。もうそれでもいいや。


 明華が大体どこにいるのかは知っている。中庭に続く渡り廊下の近くのベンチか、空くことの無い屋上に続く階段のところで昼休みを過ごしている。ここ数週間で大体の行動パターンが読めてきた、校舎から中庭の方を見ると明華がそこにいるような雰囲気はない、今日は最近に仲良くなってきたであろう新入生などが、中学との違いを謳歌するように結構な人数が中庭で昼食をとっていた。となれば残るは屋上へと続く階段。


 屋上があかないことを前提に、踊り場あたりにはいつ使ったのかわからない物品や、いつ使うのか分からない掃除用具が入ったロッカーが置かれている。少しごちゃごちゃしているけれど、ヒトが2~3人滞在するには十分な広さがある。


 やはりというか、少し緊張しているけれど僕はその階段を目指していた。そのさなかで僕があのマリアさんから言われた言葉を言ったところで明華が受け入れてくれるとは思わない良くて3割程度、明華が頑なに示す拒否感を揺るがすことができるならそれでいい、それが第一歩だと思っている。


 階段を登っていくと人の気配がした。おそらく明華なんだろう、僕は一息ついて最後の階段を上がっていく。物置になっているだけあって、使われていない机などが並べられていて、明華はその机を並べてそこのうえで横になっていた。目のあたりを隠すように右腕を載せていてまるでこの世界からの刺激が鬱陶しいというように静かな呼吸で休んでいるように見えた。


 僕の足音に気が付いたのか顔だけ僕の方に視線を向けると、めんどくさそうな顔をして若干舌打ちも聞こえた。それでも今日がその日だと覚悟を決めた僕は拒否さているとわかっていても言わなければいけない気がした。明華からしたらしつこく付きまとうストーカーだと思われているのかもしてない。それでも女性の辛そうな現状、高校生にしては、あまりにもきつすぎる活動内容。そんな状況を僕には関係ないからなんて理由で関わらないようにするなんて、そんなのラブコメの主人公がすることではないっていうのは僕の心が叫んでいた。


「あのさ、その火傷みたいなのと切り傷みたいなのってエンコンとやりあってできたの?」


 僕がそう尋ねても、帰ってくるのはただ呼吸の音だけ、寝たふりとも違うけど答える気はないし、先ほどの舌打ちからお呼びでないってことは分かってる。


「なんでこんな付きまとうんだって明華は思うと思うんだけど、僕が明華を知った時の出会い方がラブコメフラグに限りなく近いからっていうのもあると思うんだよね」


「は?ラブコ……おまえ何言ってんだ」


 あまりにも突拍子が無かったか予想外すぎたのか、珍しく明華が反応をしえしてくれた。こんなことでも少しうれしくなるね、だって今まで基本無視だったわけだし。


「たぶんね、それだけじゃないと思うんだ、僕は時々する明華の目が気に食わないんだよ、そんなに綺麗でかわいいのにさ、僕がエンコンに襲われた時もあの変な空間から出るときも、廊下ですっころんだ時ももそう」


 全部共通するんだ、どれも僕がいる時だし、どれも明華があの赤い靄をまとった時である、つまりその力やエンコンに関わる事、何かしらの原因がそこにあるんだと僕はにらんだわけだ。おそらくこの推測はあってる。あの数式が着地するのを分かった感覚がそこにあるから。


「どうしていつも悲しそうで、おびえたような目になるのか、それが知りたいんだと思う、それを取り除いてあげたいって思うんだよね、僕が憧れてる人ってのはさ、自分の他の届く範囲の人なら全力で助けちゃうような人でさ、僕もそうなりたいんだよね」


 そうラブコメの主人公が何も無条件に好かれているわけではない、多少ご都合主義があるにしろ、少なくともヒロインの困りごとや悩みを解決して、そのヒロインの心を救っていくということはおそらくすべてにおいて共通している。だから気に食わないんだと思う、まるで僕にも原因があって怯えているかのようなあの目が。


「だからさ、直接的な力にはなれなくても明華を助けることなんていくらでも方法があると思うんだ、僕を利用すればいいんだよ」


 そういって明華の方を見たけど、やっぱり目はどうしてもあの目、キツイわけではない行けれど、その目を彼女にしてほしくない。


「まぁ、最近知り合った喫茶店のマスターが言ってた言葉まんまだけどね」


「はぁ……」


 すると明華は立ち上がって僕の事を避けるように階段を降り始めた。ここで追う必要はないと思うけど、さっきの言葉が明華の心のどっかに引っかかってくれて、本当にどうしようもないときに僕の事を頼ってくれるというか、相談したり愚痴をはいてくれるだけでもいい。そして多分だけど、明華と同じような領域に足を踏み込むことになるんだと思う。これもよくわからないけど恐らくそれが答えなんだろうなっていう数学の問題を解くときの感覚と同じ。


「いつか連絡先でも交換してくれたらうれしいんだけどな」


 そんな僕の要望を明華の背中に投げかけたが、返事は中指立てられて終わった、無視じゃないだけまだマシだな、なんて考えちゃうのはきっと明華の今までの対応があまりにもひどかったからだろう、それだけで一歩進んだような気がしてしまう。


―――――


 その後の授業をそつなくこなして、放課後なんの予定もなくそのまま家に帰ってもいいのだが、どうしてか何かに引きずられるようにマリアさんの喫茶店へと向かう道を歩いていた。さすがに連続で何日も行けるほど懐に余裕のある高校生ではないから、今日はさして行くつもりもなかった。


 暇つぶしの散歩といった感じで大通りのあたりをぶらぶらしていた。僕と同じような学生たちでにぎわっている通りで、おそらく一人でどこか適当なお店に入っても不思議に思われないくらいには学生のたまり場といった感じ、商業ビルもいくつかあるので、ここらで大体ほしいものがそろってしまう。去年の入学したての頃は、この大通りに通って路地裏探索したりして、僕も大人になったなぁなんて思っていた。


 さて、それがどうだろう確か僕の記憶が正しければ、ここの道に入るとオタクの聖地がいくつも出てくるはずなのだ、フィギュアとかカードとか取り扱ってる古本屋とかもあったはずなんだけど、1本道を間違えたっけ?まるでさびれた商店街のような場所に出てきてしまった。


 いつ立てたのかわからないが、アーケード街だ、ところどころ提灯に明かりが灯っているものの、辺りは何時ぞやのコンビニのように暗くなっていた。


 あぁ、やっぱりマリアさんのところに行っておけば良かったかもしれない、なんて後悔し始めたころに、僕は周りを確認する。いつどこからエンコンが現れて襲い掛かってくるともわからない。それどころか明華に傷をつけた別個体のエンコンが出てくるかもしれない。


 あの1回で慣れたのか、それともユリスさんの覚悟を決めろっていう言葉に、自分でも無意識で腹をくくっていたのかは割らないが、心臓の暴れ具合からして頭はわりと冷静に働いてくれている。


 深呼吸して準備を整えていると、僕の右側の提灯が付いたお店の扉がが開いた。古びたスライド式のドアがガラガラと音を立てて開くと、SPか何かですか?と聞きたくなるようなきっちりとしたスーツとサングラス。そして綺麗なビジネスバッグ。きっとお高いんだろうなぁとか考えていたところだった。


 そのスーツの人がこっちに向かってきている。周りを確認しても人影は僕しかいないし、後ろにあるのはシャッターの下りたお店、看板も文字がかすれていてここがなんだったのかわからない。


 もしかしたらあの人も明華と同じようにエンコンを退治しているような人たちなのかもしれない。そう思って近づいていくとその人がカバンの中から警棒のようなものを取り出した。


 んんん???これ僕がエンコンだと勘違いされてないか?僕じゃないですよ?僕はただ迷い込んだ哀れな一般男子高校生であって何の害もないですよ?


「あの、いや僕無関係なんですけど」


 後ずさりしながらそう言って誤解を解こうとする。


「認識完了、任務を遂行する」


 僕の事を言っているのか?任務って何だ?え?僕何か政府から狙われるような事してしまいましたっけ?いや絶対誰かと勘違いしてるだろ!!僕じゃないって!!


 ちょっとその人の進行方向からずれるように横に移動してみるが、その人は一直線に僕のほうに向かってきた。これ確実に僕の事をねらっている。


 振り返って走って逃げよう、そう思って振り返りギリギリトラベリングが取られないくらいの歩数のところで、今度は先ほどまで僕が探していたエンコンが待ってましたよと言わんばかりに上から降ってきた。


 おいおいどうなってんだよこれ……僕の命日なんじゃないの?


 すると一発の銃声が鳴った。あまりの音のでかさに驚いた。爆竹なんて比じゃない、本当に音っていうのは波なんだなって感じることができた。鼓膜が確実にだダメージを受けているのがわかる。


 そのすぐ後にエンコンの頭部がぐらっと揺らいだ。音のした方に目を向けると、先ほどのSPのような恰好をした人と瓜二つ、背丈も髪も体格も何から何までそっくりな人が銃を構えていた。その銃口からはうっすらと煙が上っており、間違いなくあそこから銃弾が射出されたと主張していた。

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― 新着の感想 ―
うん、いいぞーこの関係、そしてこの主人公の戦闘面での弱さ、最近ではあまり見かけない
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