6なんだってこんな役目に
そんなバブみでおぎゃり満点の店員さんに連れられて再び先ほどの喫茶店の中に戻った。今度はソファ席に座るのではなく、その店員さんの仕事が目の前で見ることができるカウンターの席に通されたわけだ。おお、なんかフラスコみたいな器具とかいっぱいあるんだなぁとか感動していた。
すると別に注文した覚えもないに目の前にアイスカフェオレが置かれた。もしかして角砂糖マシマシミルクたっぷりの様子を見られていたってことなんだろうか。
いくら今はお客さんが少ないとは言え僕の行動とかを確認していたとなると、相当気配りができるというか、よく周りを見ている人なのだろうか、そうするとその店員さんは僕の前にきて、簡易的な椅子を持ってきてカウンター越しに対面する形で座ることとなった。
するとおもむろに店員さんはポケットから煙草を取り出してそれに火をつけた。おお、外見から煙草を吸うような人ではないと思ったけど、これはこれでギャップ萌え、いやギャップによるオギャりという事ですか?オギャリギャップ?なんか大食いの葦毛の怪物って感じがするのは気のせいですね。
「急にごめんね、本当は今日じゃないと思ったんだけど、連絡が入っちゃっし、それにタイミングもよかったから」
煙を吐き出すと、店員さんは申し訳なさそうにそういった。それにしても謝罪の内容がまったく意味がわからん件について、結局僕は「はぁ」となんとも曖昧な返事を返すことしかできなかった。
「それでちょっと時間をもらってね君のことを知りたいの」
「え?」
それはつまり、お付き合いを前提に結婚をする、あいやこれは逆だ、お付き合いすることを目的に僕のことが知りたいですっていう事なんですか?そう思っていいんですか?今日初めてこのお店に来たけれど一目ぼれしちゃいましたってことなんですかねグヘヘ。
いやぁ、まいったなぁ僕くらいのイケメンんいなると年の差なんて関係なく女性を魅了してしまうようだ。この店員さんが一体何歳なのかわからないし、直接本人に聞くなんて愚かな行為はしないけれども30代後半くらいだろう行ってても40代前半と見た。
「ユリスちゃんいいわよ~」
そういって店員さんは店の奥の方へと声をかけた。するとその店の奥からお客さんから見えなくするためにかけていただろう暖簾をくぐって出てきたのは、すらっとした長身の男性。おそらく40代後半は行ってるのではないだろうか。カジュアルなジャケットを着て下にはジーンズ、顔立ちは彫りが深くて日本人離れしていた。あ~なんでか知らんけどイタリアとかに居そうっていう感じがする。
これはいわゆるイケオジ!!かっこいい僕も将来はこんな渋い雰囲気を出せるようになりたい。
「この子が?」
僕の方を見ながらそう言ったユリスと呼ばれた男性、まるで僕を品定めするかのように全身を見られた気分だった。
「そう、あの時売った情報に入ってたと思われる子」
にこやかな顔で店員さんはユリスさんにそう返した。なんか怖いことを聞いた気がするんですけど、売った情報?え?ここはCIAとか何かの支部かなにかですか?そこに僕の情報があったって事?なんで?僕なにしたんだ、ラブコメフラグ違法建築か?
「ああ、そんなに警戒しなくて大丈夫よ、痛いことも怖いことも何にもないから」
僕の心が身構えたのが伝わってしまったのか、店員さんが子供を安心させるまさにバブみの塊のような声音で僕に話しかける。あぁママ~バブみ幼稚園に入園しなきゃ。
「では、ちょっと失礼」
そう言ってユリスさんは胸ポケットから紙とペンを取り出して僕を見つめる。すると、手元を見ていないのにペンで何やらメモをしていた、それが一体何なのかわからないけど、少なくとも日本語ではないことだけは分かった。
その数秒後だった。何か風邪をひいたときに感じるような肌のざわつき、心臓のあたりがヒヤッとする余殃な感覚に襲われた。恐怖ともまた違う、どちらかと言えば緊張、ステージの前に立って何かの発表をするときのような緊張感がふいに僕に襲い掛かってきた。
カフェオレを一口飲んで落ち着こうとしている間もユリスさんのペンは止まらない。店員さんはそのユリスさんの書いたメモを凝視して何やら考えこんでいるようだった。
「なるほど」
時間にしては10分にも満たなかったと思うが、僕の体感的には1時間も2時間もあったように感じた。先ほど感じた緊張感は和らいだが、まだその余韻が残っていて、僕は一度大きく息を吐いた。
「えっと……一体何の時間だったのでしょうか?」
「ごめんね、あとで教えるからちょっと待っててね」
店員さんがそういうとユリスさんとそのメモを見ながら何やらブツブツと議論しているようだった。そして話が終わると二人して僕の方を向いた。なぜか背筋をピンと正して座りなおしてしまったが、二人の言葉を待った。
「ごめんなさいね、時間を取らせちゃって、ただ伝えておいた方がいい……いえ、伝えなきゃ行けないことがあるの」
店員さんさんがそう謝ってきたが、一体何を伝えられると言うのだろうか、そう言うった後に店員さんはユリスさんの方を見て、あなたから伝えなさいよと言わんばかりの目配せをしたら。ユリスさんはそれを感じ取ったのか頷いてから僕の方に向き直る。
「阿智良湊で間違いないな?」
正直びっくりした。情報にあったとか言われていたからなんの情報なんだろうとは思っていたけど、マジ名前も把握されてるとは思わなかった。声をかけられて情報に載ってた、なんて言われた時点ですでに僕のことはある程度調べていると言うことだろうか。
誤魔化す気にもなれず僕は驚いた表情のまま頷いた。
「今の君は言わば未定義の式、しかし解釈次第、定義次第、そして君のセンス次第で結末は変わるだろうが、君は今が分かれ道の目の前にいるようだ」
ユリスさんはそこまで行った後に僕の方に身を乗り出して僕の目を見つめてから言う。
「覚悟を決めろ、君は見たはずだ。あの異形の生き物を。そして君は踏み入れればおそらく逃げ切ることはできない」
そのあまりにも真剣な雰囲気に圧倒されてしまったが、もしかしてこの人が言っているのっていつぞやのエンコンのことを言っているのか?でも逃げられないってどう言うことだ、それに未定義の式という意味もわからない。
頭の中の整理がつかないままでいると店員さんが口を開く。
「今はわからないと思うわ、でもほぼほぼその時は来ると思うの、君の想像もしないような出来事が」
既にそのことは経験済みなわけだけど、それ以上にやばいことが起きるという認識でいいのだろうか。え、でもそうしたら僕はもうただサンドバックよろしくボッコボコのみそっかすにされてこの世にサヨナラバイバイしなきゃいけないと思うのですが、これがうわさに聞く死亡フラグってやつですか?
「阿智良君、それでも何か困ったことがあったらここにきて、少なくとも私がいるわ、直接力になれないかもしれないけど、それでも貴方を助ける方法はいくらでもある」
眼鏡の奥の目がやさしさだけでなく、真剣さを帯びたものに変わっていた。多分これはおちゃらけたりする場面ではない、きっと僕は何かの転換点にいるんだと、決断しきなゃいけないんだということを嫌でも分からせてきた。
そのあと店員さんは少し満足そうな顔をしてから続けた
「そういえば、自己紹介がまだだったわね、私はマリアここの一応店主をやらせてもらってるわ」
そう笑顔で言うマリアさん、なるほど、やはりこの圧倒的なバブみはマリア様だったからなのか納得した。そしてまさかマスターだったなんて驚きだ。変な過程を踏んでしまったけどもこれで僕もここの常連になってしまうことが確定したわけだ。
ちなみにユリスさんって何者なんだろうか、ただのお客?というか、この人たちが明華のようにあのエンコンの事を知る人たちってことでいいのだろうか。
「あの、お二人ってエンコンの事とか知ってるってことですか?」
「もちろんよ、それに明華礼香ちゃんの事も」
マリアさんがにこやかに返してくれた、そして驚いたのは明華の事も知っているという事実、いや確かにエンコンの事を知っているなら明華を知っていてもおかしくはないのだろうけど、ここでその名前が出るとは予想していなかった。
「あれは、なんなんですか?」
明華から聞けなかったことを素直に聞いてみた。
「私たちも全部を知っているわけではないの、ただこの世界とは別のところにいる存在、侵略してくるエイリアンっていう認識でいいわ」
煙を吐いてそういうマリアさん、ユリスさんも言語化が難しいのか少し眉間にしわを寄せて考えているような表情をしていた。まぁつまりは害獣みたいな駆除対象っていうことで、明華のしていることはとりあえず正しいという認識でいてよさそうだ。
あれ?これってもしかして、ラブコメフラグじゃなくて変なフラグ立ってないか?これバトルファンタジー物のフラグ立ってないか?やっぱりビーム出るんじゃないか?
そんな、思いもよらぬフラグ建築に頭を抱えそうになってしまうが、いただいたカフェオレを飲むことで何とかごまかした。でもいいこと聞いたな、『直接力になれなくても助ける方法はある』ってつまり明華にも同じことを伝えられるってわけだ。




