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数学弱者の最終定理 ~異能力バトルに数学って厄介すぎるんだが~  作者: 二毛作


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21こんな結論に至るのであった

 そんなわけで呼び出されたので、クラスのみんなが部活に行ったり帰ったりして、一人放課後の教室で待っていると、明華はいったいどこで待機していたのか教室に入ってきた。


 どうも疲れたような顔をしていたが、もしかして今の時間までクラスの女子に何かしら聞かれていたのだろうか。女子ってその手の話題になるとすごい盛り上がるって聞いたことがあるようなないようなだけど、それにしてもあのエンコンを相手にしても涼しい顔をしていた明華をここまで疲れさせるとは、女性は強い。


 そして僕の目の前の椅子をもってそこにドカッと勢いよく座った。およそ女性らしい座り方ではないが、どこかそれが明華にはそれっぽく見えてしまう、ましてや疲れている様子だしそれくらい仕方がないだろう。


「お前、このクラスでどんな立ち位置なんだよ……」


 うなだれた明華からは怨嗟の声のような、僕に対して静かな怒りをぶつけるような声が聞こえてきた。


「どういう立ち位置といわれると難しいな、なんか一大コンテンツみたいに扱われるんだなって今日初めて知った」


 クラスのやつらが言っていたのだから間違いない。勝手にコンテンツにされるのは迷惑だしなんでか僕が総受けになっていたりと僕の尊厳がずたずたに引き裂かれている気もしないでもないけど、とりあえず応援してくれているような気がする。いやただのコンテンツならただただ面白がっているだけで味方になったのは今日限定の事なのかもしれない。


「なんで私がお前の良いところとか、お前が私に猛アタックしているとか永遠聞かなくちゃならないんだ」


「クラスの中で僕は明華に片思いするも全然報われない哀れな男子高校生阿智良湊君になってるらしい、今日初めて知った」


「お前の方から否定してくれ、こんなのにわつぃを巻き込むな」


「えぇ、でも実際にはデートしたわけですしいいじゃないっすかぁ」


「やだ、エンコン退治するより疲れる」


 何を思い出したのか心なしか明華の目がショボショボしているような気がする。それに「やだ」の言い方が若干子供っぽかったのは相当疲れている証拠だ。可愛い。


 何があったのか詳細は知らないけど僕の事聞くだけでそんな疲れる?それもしかして僕の事嫌いとかじゃなくて話しているその女子生徒が悪いのでは?というか絶対右か左かとかの宗教戦争とかも含まれてただろ、それなら明華がこんなに疲れるのも頷ける。


「それで、今日残れっていたのは、その文句を言うためですか」


「それもあるが、お前の式が暴走することについてだ」


 その言葉を聞いて僕は背筋がピンと伸びる気がした。現状僕にとって喫緊の問題。早めに解決しておかないと、いつ僕がぽっくり逝ってしまうとも限らない。いつも隣に明華がいるとも限らない。そうなるとやっぱり僕自身がある程度自分の能力についての知識を深めてコントロールする必要があるという事なんだろうけど。


 テンプレートの式を用意して戦う戦法はまだあの一回しか無いけど、どうも僕の性に合わないというか、感覚で使っているときのほうがまだ自由に動けていた気がする。それどころか、あの数学を解いているときの感覚が湧いてきたときのほうが比較的マシな立ち回りができていた気がするし、何なら新しい発見とかもそういったときのほうが多かった気もする。


 つまりは僕には理論武装をするよりも、その時の感覚に頼ってしまうのが現状の最適解なのではないだろうか?それかあの構築したテンプレ式に現れた勝手な補助式はどうして現れたのか。その補助式の現れる条件というのも曖昧だ。別に厳密に式を定義した訳ではないのに発動するものもある。この違いが分かれば何とか改善する方法が見つかるかもしれない。


「何かマリアさんから連絡があったの?」


 明華に問いかけてみると首を横に振る。当事者でもなければその場にいたわけでもないマリアさんが解決策を導き出すというのも難しいだろうし、かといって明華にこのままずっとおんぶにだっこというわけにはいかない、其れだと全くラブコメの主人公から遠ざかってしまう。


「現実的に私がお前に同行するっていうのが一番だとは思うが……」


 そこで明華は言葉を切ったがその表情から続く言葉の内容が僕にはすぐわかってしまった。


「あの状況でまたクラスのやつに見られるとかなり面倒なことになるからやりたくないと」


「それもあるが、稼ぎの効率が悪くなる」


 確かに僕が一緒にいるだけで明華が討伐できるエンコンの数は必然的に減ってしまうのは自明であろう。ただ負担が増えるだけでなく経済的なほうでも迷惑を開けるというのは何とも気が引ける。


「というかモカさんには顔が割れてるのは仕方がないとして、僕がこのエンコン退治から降りるって選択肢はないの?」


 そう尋ねると明華はまたしても首を横に振った、それも先ほどと違い少し苦虫をかみつぶしたような表情をしていた。


「マリアはあたしたちに情報も売るが、他のやつらにも情報は売る。いわば本当に中立だ、それにあの喫茶店での暗黙の了解として戦闘が禁止されている。つまりうっかりお前がストレージの売却に行ったところでばれる可能性もあれば、モカや私、特にユリスのような奴にはおそらく違和感からお前がただの一般人と認識されるのは厳しいものがある」


 そこで明華は僕の方を見てから真剣な目で言葉を紡いだ。


「つまりマリアさんの喫茶店に行かずともそのプルコギとかいうやつらが僕を見たときに違和感とかで僕の事を感づいたり、すでに僕の顔なんかも向こうに筒抜けの場合もあるってこと?」


 明華は無言のまま頷いた。その返答を見て僕の心臓のあたりが若干ヒヤッとした感覚に襲われた。緊張した時と似てはいるものの、それと違うものと言えば頭のほうは割と冷静にこの後の動きに関しての作戦を考えているという事だ。


「そうなると、トカゲやリーマンモドキのエンコンで何度か練習するしかないかな、最悪だったらいつも通り爆破と右腕への式付与でどうにか逃げることにするよ」


 明華に今後の練習補法を伝えると少し浮かない顔をしていた。納得いかないといった感じもうっすらと感じ取れた。


「大丈夫、前のテンプレート式に対しては僕の方でもいろいろ考えてみるし、明華は今まで通り動いて大丈夫。あ、それとも僕の事心配してくれてるの?」


 最後の方は完全に冗談というか少しシリアスになった雰囲気を和らげようとしたつもりだった。余計な心配というか明華に責任とか余計な負担を背負わせたくなかったがゆえに出てきた言葉だった。


「心配……どうなんだろうな、正直、お前が死んだらそれはそれで仕方がないとも思ってるし、私にとってはあまり関係のない話だ」


 そんな明華の突き放すような言葉になぜかわからないけど少し笑ってしまった。そんなことを言いつつ前回は僕のためにいろいろ考えてくれたり、僕の練習に付き合ってくれた。言っていることはきついのかもしれないが、なんだかんだきちんと僕の事を面倒見てくれる優しさは持っているようだ。


「そんな風に思ってる人の面倒見てくれたりするなんて明華は優しいんだね」


「死んでもどうでもいと言ってたのは耳に入ってないのか?」


 呆れた顔でそう返されたけれど、だからこそだと思う、僕に関しては僕の自己満のために明華を助けるって言う理由があったけど、明華に関しては全くそういうものがない、明華の感覚からすれば僕はほとんど赤の他人と言って差し支えないのに、それでも時間を割いて教えてくれたり守ったりしてくれる、これを優しい人と言わずになんというのか。


「その場に私がいたら手伝ってやるくらいはしてやるよ」


「いやいや、僕が明華を助けるって言ったんだからそれだと逆でしょ」


「今のお前だと邪魔でしかないって」


 そういって明華はカバンを肩にかけた。もう話は終わったといった感じだ、そのまま明穴のっ背中を見送る。このまま一緒に出ていくとまだ学校にいる部活のy面に見られると、それはそれで明華にまた迷惑をかけてしまうからだ。


 教室の扉に手をかけたところで、明華が振り返った。


「まぁ、少しは助けになってるんじゃないか?だから私を助ける目標を達成するまでせいぜい死ぬなよ」


 最後に超ド級の言葉を残して去っていった。表情もいつもより明るく少しいたずらっ子のような顔をしていた。え?あの明華が?あんな顔しかも少しは助けになってるって、何に対して?まだ助けたような記憶ないんだけど……。


 心臓が早くなったのが分かる。湧き上がる気持ちは達成感に似ている。前向きになれるようなそんなプラスのエネルギーを持っていて、ただそれと同時にもっと頑張ろうというやる気も引き出してくれた。理由は分からないけど、明華が褒めてくれた。久々に褒められ多様な気がする。こんなにうれしいものだったんだ。長い間忘れていた感覚を感じて僕はその場で小さくガッツポーズをしていた。


「これはさすがにちょっとはフラグでしょ」


 気が付けばそんな言葉を僕はにやけながら発していたと思う。


――――


 あの後一人謎の達成感と高揚感を感じながら、僕のできる式をいくつか整理した。


 爆破式 f(x) = |tan(x)|、g(x) = αx これはtan関数で瞬間出力を定義してαxで威力調整して空間を瞬間的に膨張させて爆破、g(x)は最近になって明華と一緒に導きだしたけど、これが多分僕が感覚で補完していた式の正体で、爆発の規模をいじっていた。


 斬撃飛ばし式 f(x) = x² − a、g(x) = ∂x/∂t、h(x) = ∇ρ これは物理で学んだ運動エネルギーで威力定義して速度と圧力差で制御、圧力差で斬撃のように見せているっていうのが正しいのかも、ちなみによく右手に付与している式はこれのメイン式であるf(x)だったりする。


 移動加速式 h(x) = ∂²x/∂t²、k(x) = μ·m、 加速度ベクトルで瞬間加速、慣性制御で安全確保しとかないと内臓が悲惨なことになるとかなんとか、高速移動・回避・空中機動で使いたいと思うけど、式が失敗してそのまま落下死とか笑えなのでしばらくは移動のみにしましょう。


 反射式 g(x) = −F(x)、h(x) = θ·n、入射力を反転して反射つまるところの反発係数なんだけど式だけ見るとe=1なので激やば物質ですね、これでノーベル賞は僕の物だ。そして法線ベクトルで角度補正、法線ベクトルって何って明華に聞いたら余計にわからなくなったのでわかったふりをしておいた。攻撃を跳ね返すつもりだったんだけど、当たった瞬間の角度を入射角として瞬時に式に組み込まなくちゃいけないから殆ど運ゲー、実践では自分に跳ね返るというゴミっぷり。


 波動式f(x) = A·sin(kx−ωt)、g(x) = ∂²φ/∂t² 、波動関数で衝撃波を定義して波源の強度を時間制御したもの指向性をもたせた衝撃波を放射したんだけど暴走すると制御不能で無限に演算容量を吸われていったのでもはやトラウマである。


 この他にも炎まとわせたり温度下げて凍結させたりはできるんだけど、どうせならやっぱりビームが出したいけど、そこまでは明華に教えてもらってないので僕の小さいころからの夢はいまだにかなっていない。サンタクロースの能力を少し手に入れただけでもありがたいと思うことに使用、別にサンタクロース信じているわけではないけど。


 ということで今僕が安心して使える式っていうのが、上から3つしかない、攻撃の種類が少なすぎるのであとはなんか格闘技とか習ってどうにかするしかないのでは?


 ちょっとだけ僕のこれからに不安を覚えたけどこれなら前に明華といった本屋でも行った方がいいのだろうか?いやそれよりも悔しいけど長枝に頭を下げて教えてもらうとか?いや先生なんだし生徒が勉強しようとしてるんだぞ喜んで教えろよ、お前公立高校の教師だから公務員だろ?公僕だろ?おら働けよ。


 それにプラスして物理とか化学とか生物とか、なんだかんだ理系の先生大集合してもらっておしえてもらわないとダメなんじゃないか?僕はそこまで成績が悪いわけでもないけど、そんな明華が読んでいたような教科書の内容は理解できないよ?まずは高校生レベルの問題を解けるようにしなくちゃいけないのでは?


「え?もしかして僕の修行パートって受験勉強みたいにいっぱい勉強するってこと?技の練習とかじゃなくて開発から手掛けないといけないの?」


 そう街中で独り言をこぼす。さっき言ったように明斑と行った本屋に足が向かっていったけど、もしかすると僕の恰好が完ぺきにマッチする受験用の参考書エリアに向かうことになりそうだ。


 というか明華から渡された式も細部までわかってるまでには至ってないんだし、やっぱり学んでおかないとまた式が暴走したり、失敗の確率が上がるのかもしれない。それなら……やっぱり勉強かぁ……

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