自作地蔵菩薩イキがりメスガキ部
「後輩くんや。、というものがあるらしい。君は知らないだろうけど」
先輩はお得意の『知らないだろうけど』を発した。
「先日みたいなのはごめんです」
そうして僕はいつものように復唱して返は返さない。
昨日の珍妙サークル二連トツに心底疲れたからだ。
方やおかしい女、方やおかしい男ども、連続の何かズレているサークル巡りはもう懲り懲りであった。
もっとこう普通なところがいい。
「今回は普通だから、絶対。頼むよ後輩くん。や。もうアポ取っちゃってるんだよマジ頼む」
言葉とは裏腹に全くもって頼み込む気概のない先輩は、今日も今日とていつものカフェで糖分を貪っている。
「普通って、先輩の普通がよくわからないんですけど」
「だってさ~、ありきたりはツマンナイじゃない?でも明らかにおかしいところは手が出にくい」
「どっちも明らかにおかしかったんですが」
「名前は普通だっただろ!名前は!野鳥研究会に四季候委員ってどう考えても普通じゃん?でも何かありきたりでは無いな~って感じじゃない」
「まあそうですけど...」
「なぜか二つあるバードウォッチングサークルに、字面だけは普通だけど活動内容はわからないサークル。うぅ~ん調度珍妙、OK」
なにがOKなのかはわからないが、まあ言っていることは納得できた。
先輩なりにも一応あからさまに変なものは避けていたらしい。
だとしてももっと普通なところにしてもらいたいわけだが。
「で、先輩、今日は」
「今日行こうと思ってるのは、自作地蔵菩薩イキがりメスガキ部です」
「やっぱお前馬鹿だろ」
「なんだァ?てめェ……?先輩に向かって馬鹿だってえ?聞き捨てならねえな!何が気に入らねえ!三十字以内で述べよ」
「さっき自分が言ったこと覚えてます?今回はもう名前すら普通じゃねえだろ。なんだよ自作地蔵菩薩イキがりメスガキ部って。日常生活で聞くまともな単語皆無だろ」
「三十字以上は聞き取れませ~ん。バリア~バリア~」
「このクソガキ...」
はあと先輩はため息を付き、ヒラヒラと両手を降った。
「なんて、流石に私もアカンな~と思ってはいたから大丈夫。ここはナシだ。アポだって取っていないサ。実はね後輩くん。今日はいくつか候補がある中で君に選んでもらおうと思ってね。」
アポは取っていなかったらしい。先輩も一応感性までは阿呆に侵されてはいなかったらしい。
「候補をいくつか上げるから、選んでほしい」
そう言って先輩メモ用紙を取り出した。
そこには先日回ったサークルの名前もあった。
野鳥研究会
四季候委員
自作地蔵菩薩イキがりメスガキ部
独独楽で
炒飯愛好会
雨宿りサークル露
良いではない会
姫サー
OOO
巨人ファンズ
微生物言語研究会
etc
地蔵菩薩以外なら正直何でもいいと思ったが...
うん...。
阿呆みたいな名前の候補から僕は一つをしょうがなく指さした
ー 姫サー ー