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しらかわよふね  作者: 諧謔亭ごちそうたべたべ
2/7

野鳥研究会2

ご指摘お待ちしてます。

        ー野鳥研究会ー




「ど~も~、いや~失礼、失礼しましたあ!私たち今日見学させていただくお約束してた者たちです」


先輩はそう言ってポリポリと頭をかきながら軽く会釈した。

僕もそれに続いて「どうも」と頭を下げた。


「あ、そうだったんですね!お待ちしていました!野鳥研究会部長の忘端 (わすればた)といいます。よろしくお願いします」


「忘端ちゃんか、よろしくっす~」

「よろしくお願いします」

「はい、もちろんです!」


先程のか細い声とは変わって元気いっぱいな忘端さん。聞くところによると僕の一つ上の学年で三年生らしい。ちょっとそうは思えない見た目だが。先輩とは間逆なタイプでお淑やか、ゆるふわガールな感じだ。ショートカットが良く似合う。そうだよ、こういうポワポワした子がいいんだよ。心に響く。デレデレしてんじゃねえよゴミ、とか聞こえてきた気もするが気のせいだろう。


「でさ、忘端ちゃん。野鳥研究って何してるの」


「いやいや先輩、忘端さん野鳥研究って言ってるじゃないですか...」


「だってさ~研究会っていってもさ、まさか観察だけってわけじゃないっしょ?取っ捕まえてさわさわしたりするの?」


「何いってんスか先輩...なにサワサワって」


「いやね、後輩ちゃんや。この学校にはね鳥を研究すると言う名目の集団が二つあるのよ」


「ふたつ?」


「そう。一つがバードウォッチング同好会のピーピング・モズ」


「なんつうネーミングセンスしてんだよその組織...。」


「もう一つがここ、野鳥研究会」


「すげえ、やってることは似てるのかもしれないけど、名前だけでここまで印象違うとは...」


「そうだね。でもね後輩くん。部員数、野鳥研究会の方が圧倒的に少ないって言ったら、どう思う?」


「えっ...、まさか」


二つある鳥の生態を観察する組織、なぜそれが二つに分かれているのか?

理由はとしてはいくつか候補があるだろうが、端的に言えば『目的が違う』ことだろう。

目的が違うとは何か?

先ほど先輩が言ったように一つが単純に『バードウォッチング』をすることをメインとした組織。そしてもう一つが『バードウォッチング以外』を目的とした組織。

じゃあそれは何か?

僕はいとも簡単に答えを導き出した。

方や野鳥研究会、方やピーピング・モズ。

野鳥研究会なんて名前はいくらだってあるだろう。だが...『ピーピング・モズ』、やつは違う。

『ピーピング』とは本来コッソリ覗く、なんて意味だ。しかもその中でも覗き見行為本体のことを指すことが多い。

さらに言えば『ピーピング・モズ』の由来...であろう言葉だ。

それはきっと、ピーピングトム...。

俗に言う、覗き嗜好のこと...。



「ヤリサーなんですか?」


「なんでそういう結論になったんですか!?」


忘端さんはアワアワとしながら大声でそう答えた。キッッッッッッッショとか別方向から聞こえてきたが、まあ良いだろう。


「野鳥研究会もピーモズもそんないかがわしいサークルじゃあありませんよ...どっちも鳥さんを愛し、愛されるサークルなんですから」


「はあ、すみません」


愛しはわかりますけど...。愛され?


「わたしもかつてはピーモズにいたんです。でも...少し問題がありまして...私一人でこの研究会を立ち上げたんです」


「忘端ちゃん一人なんだ」


「はい...どうもなんだか...ちょっと、アハハ」


そう彼女、忘端さんは笑ったが困ったように、言いにくそうに少し俯いた。


「...わたし、ピーモズの皆さんと少し考えが違っていたと言いますか、あのサークルに入ってすぐに何か距離を置かれてしまって...あのグループに馴染めなくて...。周りの方たちともあまり話せずにギクシャクしちゃって、そのまま辞めちゃったんです...だからこうやって一人で...」


「忘端ちゃ...」

「忘端さん!」


先輩が言い切る前に僕も声を上げた。


「忘端さん。いいじゃないですか考えが違ったって。すごいと思いますよ僕」


「えっ...」


「自分がこうしたい、ああしたいってのを、理想を貫いたんじゃないですか。もっと自信を持ってくださいよ」


「もっと自信を...」


忘端さんがゆっくりと顔を上げる。僕はそんな彼女をじっと見つめた。自分でも少し驚いたけれど、何故か忘端さんの力になってあげたい。彼女の貫こうとした理想を肯定してあげたいと思った。


「僕と先輩はあなたが作り上げた野鳥研究会を今日見学に来たんです!見せてください、忘端さん」


「...はい!」











「あぁぁ~♡いいよ!いいです!いいですねえ!これこれこれこれ!来てます!来てますよ皆さん!」


「先輩。なんですかこれ」

「...さあ」


あのあと忘端さんは自信を取り戻したように僕らに野鳥研究会について説明した。



「野鳥研究会の活動内容ですが。鳥さんに愛してもらいます」


ん?


「わたしが最近ハマっているのは、まあ説明より見ていただいたほうが早いですね」


そう言うと忘端さん。いやこの変人は懐から袋を取り出し、中身を周囲にばらまいた。

そして散らばったものの中央辺りに寝転んだ。


「きます!きますよ!」


ん?


バササと近くから多数の羽音がこちらを目掛けて近づいてくる。

それは大量の、


「あああ~♡鳩さん、みなさんよく待てました!偉い偉いです!早く包んで!もっともっと...オラァ゙さっさと近う寄れ♡...!くっさ♡野生に塗れた据えた匂い♡天然害鳥の特濃香水無問題(モーマンタイ)!1年以下の懲役又は100万円以下の罰金♡ゴメンナサイ!待たせてしまった罪なわたしを罰してください!もっともっと!フワッフワ!...増して!いつもに増して!ふぁふわ!だめッッ!その嘴の上のお豆なんなの~?何のために存在してるの~?天然トマソン♡ガチ底抜け柄杓♡わたし!わたしにも!豆鉄砲バチコリ打ち込み、ぁ大胸筋♡全身胸板関取以上横綱未満♡ッッッ!刷り込まれちゃう!刷り込まれちゃうよ~♡パパもママもご存命のこの私の新しいパパとママに鳩さんみんなが立候補しちゃう~♡守って♡べらぼうに守って、もっと...選挙権ッッッ!被選挙権ないのに~♡人にしか被選挙権ないのに~♡」



「忘端ちゃん、すごい趣味だね」

「はい。やべえ女ですね」

「君はこういう女の子が趣味なのか」

「ねえよ」






野鳥研究会

野鳥(主に鳩)に全身を包まれ恍惚に浸る変態女の会(非公認)


会員1名


代表


忘端 志音音

わすればた しおね

ありがとうございました。


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