野鳥研究会1
勢いで書きました。
「後輩くんや。野鳥研究会、というものがあるらしい。君は知らないだろうけど」
先輩はお得意の『知らないだろうけど』を発した。
「野鳥研究会ですか」
そうして僕はいつものように復唱して返す。
話はいつも唐突に始まる。場所や時間なんかは関係ない。
すらりとした長身女とやせ細った不健康な僕が出逢えばそこはもう既に部室へと変わっているのだ。
八月も終りを迎え、はや九月。
もうそろそろ大学の夏季休業も終盤に近づき、閑散としていた校舎にも活気が戻ってくるだろう。
もちろん今だって教職課程や研究なんかで通ってる人はいるが、やはり活気あふれたものでなく何処となく寂しさを感じる。ただし季節はそれを知ってか知らずか、木々はまだまだ青々と、太陽光も燦々と降り注いでいた。
そんな中、学業の「が」の字も知らない僕ら二人はルーティンのように校舎のちょっとした広場に集っていた。
「今日はそんなありふれたネーミングのサークルへお邪魔してみようと思う。」
「ほんと、ありふれた名前ですね。そんなとこ行って満足できるんですか」
「ばぁかを言うんじゃあ無いないナイ!」
最後の『ナイ!』と同時に先輩はビシッと人差し指を僕に向けググッと無い胸を張った。
「わーたしがそう言ってるんだから楽しいに決まってるっしょ?黙ってついてくる。ヘイ、カモン」
「はいはい」
先輩はだいたいいつでもこうだ。
自分の楽しさの追求のためだったら僕の都合は知ったもんじゃない。彼女がこうといえばこう。そうといえばそう。まるで自分中心で世界が回っているかのように僕のことを振り回す。振り回すというよりぶん回す。
まあ嫌いじゃ無いわけだから僕もついて行っているのだけれど。
「で、今日の場所はどこですか。いきなりクソ遠出は嫌ですからね」
「大丈夫大丈夫。今日の目的地は~ココ。そう、This学び舎~」
This学び舎らしい。両手を軽く伸ばしてパタパタする姿は、彼女の見た目からはあまり考えられないおどけ方だ。
決していいとは言えない目つき、毛先が切りそろえられた長い茶髪、縁の厚い黒メガネ。女性にしては高めな身長も相まって、バリバリ仕事してるOLですと言われても全く持って違和感はない。なのに服装だけは類を見ないと言うか、奇抜と言うか...。そういったものに僕は疎いからなんて言えばいいかはわからないけれど、いつも系統は違えども常に何か全面的にエッチである。
いいぜ......。
「おいボケナス」
「はい?」
「何ニヤついてんだよ。キショ」
「キショは中々傷つきますね」
「へえ~愚かなのに心あったんだ」
「先輩も人を罵倒するくらいの知能はあるんですね」
「あはは~、そのくらいは勿論あるとも。つかぬ事を伺うけどサ、後輩くんの将来の夢って鳥の餌だっけ?今日は会えると良いね、猛禽類」
「そうですねえ。あ、先輩、先輩は棒きれみたいなんですから巣の設営とかに使われないよう気をつけてくださいね。心配です。」
「何だとコラくそガキ」
「はぁ~?やりますか?」
「あの、すみません。喧嘩ならよそでお願いします...」
ありがとうございました。