水の由縁
---食べても無くならない物がいい---
私は水の精だと、生まれ直ぐに属性がついた、精霊の王に告げられたのだから、きっとそうなのだろう。
ただ、他の精と違うのは異常な程の食欲だ、精は欲がないエレメントに欲などない、欲などあれば別の何かに変貌してしまう。
なら、私の食欲は誰かの欲だったのだ、なら、誰かに返して来なければ、純粋な精になるために。
そう決心すると、とたんに睡魔が襲ってきた、瞼が重くなるのを感じながら、私は夢に落ちて行った。
うぇ、…グスッ……
…誰、誰かいるの?
いつも見る誰か泣いている夢だ。
可哀想で抱き締めてあげたいけど、ここでも私は水の精で両腕は滴る水で、掴めなくて申し訳なくなる
ごめんね、私じゃだめみたい
気休めに呟いたつもりだったのに、その子は突然顔を上げた
「…お兄ちゃん?」
えっ、何で気付いたの
後退りすると、かおを上げた少女はガリガリに痩せた手をこちらへ伸ばした。
「…お兄ちゃん…生きてたんだね、良かったぁ。
みんな、嘘ついてたんだぁ。」
パチン
と何か弾けた、そうだ何で気付かなかった?
俺は口減らしの為に雨乞いの生け贄にされたんだった
この子は俺の妹だ、俺が生け贄になれば、妹にたくさん食べ物をやると言われて生け贄になったのに。
この姿はどうだ、ガリガリに痩せた手足、落ち窪んだ目どうみても食事は与えられていない。
あ、あぁ…ごめん、兄ちゃんが馬鹿だった、大人にまんまと騙されて、お前一人守ってやれなかった。
ごめんなぁ。……そうか、だからずっと腹減って仕方ないんだ
どんなに食べても、空腹で、だからずっと、おかしいんだ。
妹のために--涙が溢れた。
雲が現れ、ポツリポツリと雫が痩せた村に落ちてくる、暫くするとどしゃ降りになり、村人が雨を喜ぶ間もなく、雨は勢いを増して土石流となった
---全て飲み来んでしまえ。
「お兄ちゃん!」
木片に乗って流される妹が空へ手を伸ばすと、透明な腕が現れ少女を空へ引き揚げた。
村人はなす術もなく、一人残らず水の中に引き込まれた。