表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

本屋では買えない本当に怖い本の話

「あらあなたよく来れたわね? ここは普通の人には見つけられないはずなのだけど」


 昼も半ば。一見してバーのお店であるその店は、普通のバーなら開店していないはずの時間帯に、普通に過ごしていたら出会えないような本を紹介してくれるらしい。あなたが知ったのは風の噂からだった。


「私は夜久舞宵。職業は……今風にいったらコンシュルジュかしら」


 夜久がそう言って自己紹介する。歳は未成年にも見えなくない。場と釣り合ってなくて、あなたは違和感が増してくる。


「ここに座って、飲み物は何にする?」


 あなたは思わず断ってしまう。


「そう、長居したくないかもしれないものね」


 夜久が訳知り顔で微笑む。


「なんたってあなたはそう、怖い本をご所望みたいだから、今すぐ走って帰りたくなるかもしれないものね」


 あなたは驚いた。まだ、何も話していないのに、それを聞いた夜久が言う。


「なんで知っているか? ですってなんででしょうね」


 静寂が包む。そういえば店内のはずなのに明かりは暗い。


「いいわ、あなたのその願い叶えてあげる」


 夜久が入ってきた扉を指さした。あなたは振り返ってドアを見る。


「でもまだ引き返せるわ。今ならそこのバーの扉を開いて外に飛び出せば、お日様の輝く日常に戻れるはずよ」


 あなたは動こうともしなかった。


「何どうしてもみたいんだって? あなたみたいな怖いもの知らず、私は好きよ。でもあなたはきっと後悔する」


 夜久はカウンターの下から一冊の本を取り出す。女性の手では持ちにくそうな分厚さだ。表紙は夜久の手が覆い被せられていた。


「あなたには今日これを見せるわ。赤い本。赤い表紙に装丁された大きな本」


 大事そうに夜久が本をなでる。


「見せる前にこの本との出会いを語るわね。あれはそう、大学の閉架書庫をさ迷っていた時に見つけたの。あるところにはあるものよ。それがこんなかたちで役に立つなんて。これが縁というものかしらね?」


 あなたはそんなことはいい。早く見たいと思う。それが伝わったのか夜久が言葉を告げる。


「さて、じゃあ手で隠したタイトルを見せるわよ。覚悟はいい?」


『世界最終戦論』石原莞爾 著


「よ。なに? 知ってるって? テストで出てきた? 検索で出てくるですって?」


 不気味に夜久は口角を歪ませる。


「でもあなたは読んでいない? そうよね?」


 夜久がページを開く、この世界最終戦論は講演をまとめたものなの。ここからね、と夜久があるページを開く。

「この本が今、日本で1番怖い本だってこと教えてあげるわ」


 一息入れて夜久が語る。


「学校の試験で習ったのはこれかしら? 日本とアメリカは戦うんだって書いてある本。可笑しい。だって全然違うんだもの。この講演はこう始まるのよ、もうすぐ日本はアメリカと戦うことになるが、と。つまり本当の世界最終戦論の本題はアメリカと戦うことじゃないのよ。いい? この本には世界最終戦とはガイの戦いになるとあるわ。ガイというのは骨偏に豊と書いてガイ。4次元ということよ。この本の言いたいことはね、アメリカとの戦いのことを言いたいのではないの、時間をかけて滅ぼすのが世界最終戦となるという主題なのよ? 怖くなった? 分からない?」


 点けられていないテレビをちらりと見た夜久があなたに話す。


「あらあら可笑しい。この本をアメリカと戦うことについて論じた本だなんて、この本の主題を徹底的に隠している人達は日本人を絶滅させる予定でもあるのかしら。そうね。私たちの世代は大丈夫。でも何世代まで大丈夫かしらね?」



 どう? あなたは怖くなったかしら。



「でも、そうね。あなたがもし小説を書こうと思っているのなら、これ小説のネタとして面白くないかしら? そうでもない?」


 ふふふと夜久が笑う声がする。あなたは夜久の声を背に店を出る。


「あなたのご所望はこれじゃなかったかしら。じゃあ今日はこれぐらいにしとくわ。また会えるといいわね?  お帰りはあちらの扉。まだ日が沈んでいないといいわね?」

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。


何卒よろしくお願い致します( *・ω・)*_ _))ペコリン

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ