表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います  作者: ゆさま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/20

Sランクモンスター(幼体)

 痛ってぇ……。かなりの威力の魔法だった。俺じゃなきゃ死んでるぞ。


 魔法で吹っ飛ばされ、受け身も取れずに地面に叩き付けられた。まだ拘束魔法が効いているらしく、体は動かないし声も出せない。どうすることもできずに、そのまましばらく横になっていると、体が動くようになってきた。


「まさかこの俺がオヤジ狩りにあうとは……」


 上体を起こして、体の各部を確認する。かろうじて生きているとはいえ、かなりの深手を負わされてしまった。


 あちこちから出血しているし、右足は折れているな……。あと呼吸が苦しい、息をするたびヒューヒューと音がする。肺が傷ついているのか? 


 下心はもちろんあった。あの四人組は、全員かなりの美人さんだったからな。だからって、何もしてないのにこの仕打ちとは酷いじゃないか。


 今度会ったら、絶対お仕置きしてやる。「ごめんなさい! 許して! もうらめぇー!」とか言わせてやるからな。


 そんなことを考えていると、急に胸が苦しくなった。咄嗟に咳き込むと、口を押さえた手にはべったりと血が付いていた。


 今はしょうもない妄想をしている場合じゃない、とにかく生きて街まで戻らないと。


 痛みをこらえて立ち上がり、足を引きずりながら森の中を彷徨った。ヒールポーションもあいつらに盗られたし、ここから街までは距離がある。助けを呼ぼうにも、街道から離れたこの場所に人が通りかかるとは考えにくい。


 さすがにこれはやばいな。こんなところで俺は死ぬのか。


 そのとき足元で、もぞもぞと動いている物体に気が付いた。なんだ……これ? 霞む目を凝らしてそれを見る。


 リンゴ大で、茶色の地に毒々しい赤色の斑点のある萎れたキノコのようだった。


 キノコ型モンスターか。いや、待てよ、まさか……これはブラッディマッシュの幼体か? なんでこんなところにSランクモンスターの幼体がいる?


「ゲホッ、ゲホッ」


 再び激しく咳き込むと、俺が吐き出した血はボタボタと垂れ、そのキノコ型モンスターにかかった。


 キノコ型モンスターは俺の血を吸収し、萎れていた体が張りのある姿に変わった。そして、しっかりと立ち上がる。


 そいつは俺の足にまとわりつき、菌糸を伸ばして俺の身体を包み込んだ。俺を喰う気か? 今の俺には、その菌糸を振り払う力さえ残っていなかった。


「いいぜ、喰えよ。どうせ俺はもう死ぬ。厄災級のモンスターの糧になって、俺をこんな目に合わせた奴らを蹂躙するのも悪くない、か……」


 かすれた声でそう呟くと目を閉じる。立っている気力も尽きて地面に倒れこんだ。


 柔らかい糸状の物が、全身の肌を撫でるように這うのが分かる。不快感は全くなく、むしろ気持ちいいくらいだ。


 そのまま俺の意識は薄れていった。




 * * *




 目が覚めた。俺、生きてる……? 喰われなかったのか?


 上体を起こすと、身体中にあった痛みは消えていた。出血は止まっているし、呼吸も楽になっている。 


 傍らにはあのキノコ型モンスターがいて、俺の様子を窺っていた。


「お前が治してくれたのか? ありがとな」


 キノコ型のモンスターに礼を言うと、嬉しそうに飛び跳ねた。


「助かったのは、こっち。血、くれた、アリガト」


「お前、喋れるのか!?」


「念話。ウィルの記憶、探った、人間の言葉、覚えた」


 俺の名前……。記憶を探った? どういうことだ? 考えを巡らせていると、さらに俺の頭に声が聞こえてくる。


「菌糸で触れる、記憶、探れる」


 記憶を探れたとしても、数時間で人間の言葉を習得できるとは、こいつはかなり知能が高いんだろうな。


「なんで、丸ごと俺を食べなかった?」


「ウィル、命の恩人、だから助けた」


 吐血をぶっかけただけなんだが……。モンスターのくせに恩を感じたりするのか?


 疑問はあるが、言葉を交わしているうちに親しみがわいてきた。


「お前の名前は?」


「名前、付けて」 


「そうだな……。ベネット」


 なんとなく思いついた名前を口にすると、キノコ型モンスターは再び飛び跳ねた。


「ベネット、ウィルの友達」


 ずんぐりとしたキノコの軸の部分にある、小さな目で俺を見つめている。なんとなくだが、直接頭に響く声が弾んでいるように感じる。


「ああ、よろしくな」


 俺がベネットの傘の部分に手をポンと置くと、ぶるるっと体を震わせた。かわいい奴だ。


 俺は立ち上がって、道に戻るために森を歩き始めた。ベネットも転がったり跳ねたりしながら、俺に付いてきている。


「俺の怪我が治っているみたいだが、お前治癒魔法とか使えるのか?」


「使えない。ベネットの菌糸、ウィルの傷、塞いだ」


 菌糸で傷を塞いだ? 少々不安を感じたので、俺は自分の体を手で触って調べるが、特に変わったところはない。


「それ、大丈夫なのか?」


「ベネットの菌糸、ウィルの細胞、相性良い。馴染んでる」


「お、おう。そうなのか」


 まぁ、考えても仕方ないか。今はこうして痛みもないし、体は良く動んだ。


 茂みをかき分け、しばらく歩いていると、ようやく街道にたどり着いた。やれやれ、酷い目にあったが、これで街に帰れる。安堵の息を漏らすのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ