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1.エンター・ザ・アヤカ

 「2組に超絶美少女の転入生が来たらしいよ。桜井も見に行こうぜ」

隣の席の中島が急に話しかけてきた。

2年生の1学期が始まって4日後、ようやく通常授業が始まったばかりの頃。

ここは新都心高校2年1組。県下でベスト3に入る公立進学校に転入生とは珍しい。

よほど転入試験の成績が良くなければ入学できない筈だ。

昼休みが始まったばかりでまだ昼食も食べていないのに、男子生徒20名ぐらい

隣のクラスの廊下に群がっている。

「窓際の列の一番前の席の女子らしいぜ」

大勢のクラスの男子に囲まれて、困り果てている女子生徒の表情が少し見えた。

超絶美少女なのかどうかはまだわからない。

一瞬だけ彼女と視線が合ったような気がした。

「あれ、哲夫じゃない!哲夫でしょう?こんなところにいたの」

大きな声でそう叫ぶと、彼女は一直線に自分の方へ男子を蹴散らしながら走り寄ってきた。

「ほら!やっぱり哲夫じゃない。こんなところにいたなんて。アヤカよ、桜井綾香、覚えているでしょう!」

おそらく午前中いっぱい、何を話しかけてもにっこり笑うだけの清楚系女子で通していたのだろう。

突然の出来事に周りの男子は呆気にとられている。

桜井綾香は桜井哲夫の幼馴染。

哲夫って呼ぶのも別にそういう仲なわけじゃなくて、名字が同じ桜井だから、親戚でもないし。

「ああ、・・・、うん、・・・久しぶり」

哲夫はそっけない素振りをで答えた。

昔から顔立ちは整っていたけど一層磨きがかかっている感じだ。

ボディの方も魅惑的に成長している。

まあ、確かに超絶美少女なのかな!?外見は。

「小学校の卒業式の後、突然いなくなって、何処行ったかわかんないし、連絡もよこさないんだから!」

周りの男子生徒からの視線が突き刺さる。

この話だけ聞くと自分と彼女と付き合っていて、突然捨てて逃げたとんでもない男に聞こえる。

全然違うからね。

「いやね、父さんの転勤が突然決まって、君は卒業旅行に行ってたし、俺はスマホとか持ってなかったし」

「でも、手紙くらい出せたでしょう?」

「手紙って書いたことなかったから」

ちょっと苦しい言い訳。

彼女との関係は小学校時代マスタースレーブだった。ジャイアンとのび太に近い。

正直、そんな関係を解消できて少しホットしたのだが。

「昔の家に戻ってきたの?」

「そうさ、去年ね」

「それも教えてくれないし!まあいいわ、放課後遊びに行っていいでしょう!」

「ええ、突然だね!え~と、ほらね・・・」

「何よ!!!やだっていうの!!」

「いや、そんなことは、ないよ」

「じゃあ、決まりね」

周りの男子からの視線が痛い。

この5分間に起こったことを見ていれば当然の反応なのだろう。

いや、そうじゃないからね。幼馴染の超絶美少女との再会からラブコメ展開。

そんな風には絶対ならないよ。

「違う!違うんだ聞いてくれ、こいつはみんなが想像しているような女じゃない」

と、クラスの中心で叫びたくなるのを必死に抑えた。


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