EP 8
「兄、ってか姉のレイラとは、十歳離れているんだよ。二人兄弟でね。母は横浜に住んでいて、父はイギリスのロンドン。お互いに時々、行き来しているよ」
「離れて住んでいるんですね。お母さん、寂しくないでしょうか」
「うん。母はそんなことはないのかもしれないけど、俺らは常に父が側に居なかったから、寂しかったかな。だから、俺は愛情たっぷりでいつも愛する人が一緒の、暖かい家庭を築きたいと思ってる」
「そうなんですね」
壱花の顔色が曇る。それを見て、ジェインは慌てて言った。
「ああでも気にしないで。レイラも俺を可愛がってくれたし、母も愛情を注いでくれた。だから、自分が不幸だと思ったことは一度もない。こうして、壱花ちゃんにも出会えたし、俺の人生最高だよ!」
「ジェインさん……」
ちゅと唇を合わせていって、軽くキスをした。
「さあ、まだまだ到着には時間がかかる。少し眠るといいよ」
おでこにもキス。壱花の頭を肩に寄りかからせて、そっと頬を撫でた。
その時、ピンポンと鳴り、食事を告げる機内アナウンスが流れた。
壱花が飛び起きて、「ごはんですか!」と、待ってました! といったように、声を上げた。
くくくと笑いを噛みしめる。
「お肉と魚とどちらにしようか迷ってたんですけど、機内食なんて滅多に食べられないので、大好きなお肉にしようと思います」
すると、ジェインはまったく壱花は食いしん坊だ、しょうがないなあというように肩をすくめたあと、「大丈夫。どっちも食べられるように、食事だけはファーストクラスのものを手配してあるよ!」
壱花はきょとんとした顔で言った。
「そんなことできるんですね。ファーストクラスはお高いんですよね」
「まあね。席もファーストクラスでも良かったんだけど……」
そして、タブレットをスイスイっと手繰り、壱花に見せてくる。
「見てよこれ。ファーストクラスって、個室になってるんだよ」
「ええっ! これはもはや家ですよ! ベッドにもなるんですね。すごいです!」
「でもこれじゃ、壱花とくっつけないし、いちゃいちゃできないだろ? だから、ビジネスクラスにしたんだよ」
そう言って不敵に笑った。
✳︎
「ちょ……ちょっとですね……待って……くださ、い」
壱花はこれでもかというほど、眉間に皺を寄せた。
眼前にどどーんと現れたのは、誰でもその名を知っているような最上級ホテル。そのホテルのレストランを貸し切り、くだんのパーティーは開催されていた。
「ホームパーティーって……言ってませんでした?」




